子どもを売る悪い奴。13
東京に戻る途中。
「なんで、柏ノ葉を拳銃で撃たなかったの?」
ボクは女の子を看病しながら、みっちゃんに聞いた。
「なんか、柔道で負けっぱなしだったから、何となく勝ちたかった」
一呼吸おいて、
「俺もプロ失格だな」
「お互い様だね」
そんな話をしているうちに、午前八時半。
東京に着いた。
ママへの報告の前に、東新宿のヤブ医者のところへ向かう。
表向きはメンズクリニック。
EDやAGAの治療をしている、普通のクリニックだ。
もちろん、裏口から入る。
そこには、みっちゃんと同じくらいの年齢の医者がいた。
「よう、みつ。今日はレビトラか? それともミノキシジルか?」
ふざけた調子で聞いてくる。
「それどころじゃないよ!」
ボクが割って入る。
ドクターは女の子を見ると、
「こりゃあ大変だ」
と表情を変えた。
そして、表のスタッフを呼び、
「来た患者には適当に薬を出しておいてくれ」
と指示する。
ボクたちは女の子を小さな手術室へ運んだ。
まず傷口を縫合し、抗菌剤の点滴をする。
一時間後。
ドクターが手術室から出てきた。
「後は、敗血症にならないことを祈るだけだな」
大きな病院には行けない。
「今は鎮静剤と睡眠薬を投与して眠らせている。でも、ここには長時間置いておけない。ママに報告に行くんだろ? 夕方には迎えに来い」
しばらくドクターに女の子を預け、ボクたちはママのもとへ向かうことにした。
SuiteKissⅡに行くと、ママが腕を組んで待っていた。
まるで……鬼。
「電話では聞いたけど、アンタたち、本当にプロになり切れないわね。そんなことを続けていたら、いずれ死ぬわよ!」
かなり怒っている。
報告が終わった後も、きっかり一時間、説教された。
そして、その後。
ママはタブレットを持ってきた。
「これは、あの組織の商品台帳。子どもたちのカタログよ。ここに、その子は載っている?」
どこで入手したのかは分からない。
ママは、インターネット上にあったサイトをダウンロードしたカタログを見せてくれた。
あえてダウンロードしてオフラインで見せてくれたのは、オンラインで閲覧すると、誰がアクセスしているのか分かってしまうからだろう。
ボクがスクロールしていく。
すると……。
「あっ……」
あの女の子が出てきた。
そこには「Sold out」と表示されている。
名前は、Su Su。
九歳。
ミャンマー人の戦争孤児。
家族はいない。
タイ経由で日本に連れてこられ、数日前に売られたことになっている。
「ミャンマーは内戦中。返しても、生きていけるかは分からないな」
みっちゃんがつぶやく。
「ボクたちが面倒見ようよ」
「おいおい、学校とかどうするんだ?」
「行かなくたって、みっちゃんが勉強を教えたらいいじゃん」
「本当にアンタたち、覚悟はあるの?」
ママが真剣な面持ちで聞く。
「ある。ねえ、みっちゃん」
「ああ。ある程度、あの子が自分で判断できるようになるまで、少しの間、面倒を見ようか」
「ねえ。いいでしょ、ママ」
「仕方ないわね。どうせこの世にいないことになっている子どもなんだから、アンタたちが面倒見なさい。仕事中はアリサに任せればいいわ」
「ママ、ありがと」
ボクはそう言うと、病院へ向かった。
……そういえば、何か忘れている。
「あっ!」
次のターゲットのことを聞くのを忘れていた。
まあ、残ったみっちゃんに任せよう。
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