子どもを売る悪い奴。12
すべてを燃やし、証拠を隠滅する準備をしていた、そのときだった。
「えっ?」
突然、女の子の叫び声が聞こえた。
「ワーッ!」
もう一度、女の子が叫ぶ。
手足を拘束されているため、椅子を揺さぶりながら必死に暴れている。
ボクは急いで拘束を解き、ボクより一回り小さいその女の子を抱きしめた。
女の子は、しばらく泣きながら暴れていた。
でも、ボクが危害を加えないと分かったのか、やがて大人しくなった。
「みっちゃん、いい?」
みっちゃんは無言で頷いた。
ボクたちは、この少女を助けることにした。
ボクは事務所にあった毛布で、裸の彼女をくるんだ。
みっちゃんは、証拠隠滅の準備を進める。
息絶えていた、もう一人の少女には悪いが、その子を殺した息子に悲観して、柏ノ葉が無理心中したという構図にする。
石油ストーブにつながっている灯油タンクから、ホースを引く。
そして、一時間後に火がつくように細工した。
柏ノ葉が息子の首を斬り、その後、自分の首を切ったように見せかける。
みっちゃんが少女の体をロープで自分にくくりつけ、ボクが荷物を背負う。
幸い、外には音が聞こえていないようだ。
ドーベルマンたちも眠っている。
ボクたちは急いで車に戻った。
女の子は泣き疲れたのか、いつの間にか眠ってしまっていた。
「ねえ、みっちゃん。ボク、プロとしては失格だね」
「まあな」
「でも、間違ったことはしていないよね」
「ああ。それだけは間違いない」
「……あきなママに怒られるね」
「俺も……一緒に怒られるよ」
少しの間、沈黙が続いた。
その間に、ホテルへ到着した。
深夜零時。
もうフロントには誰もいない。
カードキーでドアを開け、部屋に戻る。
このホテルはいわゆる連れ込みのできるホテルだ。
セキュリティーは甘い。
一人客が増えても、何も言われない。
ボクは女の子をベッドに寝かせ、みっちゃんと二人で、できる限りの傷の治療をした。
「できることはしたけど……」
少し深い傷は、ボクらでは治療できない。
「朝一で、ヤブ医者のところに行こう」
みっちゃんが言った。
ナイフによる傷は、一般の病院では通報される可能性がある。
ボクらアウトロー御用達の、モグリの医者だ。
朝一番で、そこで診てもらうことにした。
夜中はボクがこの子を見ることになった。
みっちゃんは寝て、明日の運転を担当する。
深夜二時。
女の子の息遣いが荒くなった。
熱が上がってきたみたいだ。
傷には抗生物質を塗ったが、少し遅かったみたいだ。
朝五時。
フロントが開くと同時に、チェックアウトする。
地下の駐車場へ直通するエレベーターを使い、荷物に紛れさせるようにして女の子を車へ運ぶ。
そして、一路、東京へ向かった。
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