子どもを売る悪い奴。11
ガタ、ガタッ。
もう一つ奥の部屋から、音が聞こえた。
「まこと!」
みっちゃんが、行けと合図をする。
「分かった」
ボクが奥へ行こうとすると、
「行くなー!」
柏ノ葉の怒号が聞こえた。
ボクはドアを蹴破った。
「お前の相手はこっちだ」
みっちゃんが柏ノ葉に向かって言う。
二人とも、お互いの服を掴んで組み合う。
柏ノ葉が内股から大外刈りを仕掛けると、みっちゃんは大外刈りから体落としへ。
お互いに技を繰り出し合う。
まるで学生の頃みたいに。
でも、柔道では若干みっちゃんが押され気味だ。
防戦一方と思われた。
しかし、柏ノ葉が支えつり込み足から、再び内股に入ろうとしたそのとき。
みっちゃんは右足を引き、相手が跳ね上げようとした右足をすかす。
そして、内ももを掴んだと思うと、相手の勢いを利用してすくい投げた。
ドーン!
大きな音とともに、柏ノ葉の背中が床に叩きつけられる。
柏ノ葉は、一瞬息ができなくなった様子だった。
しかし、すぐに腹ばいになり、亀のように身を丸めて防御する。
でも、柔道ならそれでいい。
これは殺し合いだ。
みっちゃんは容赦なく、柏ノ葉の後頭部を殴打する。
たまらず柏ノ葉が後頭部を隠そうと両手で覆う。
その瞬間、脇ががら空きになった。
みっちゃんは右脇の下から後頭部へ腕を通し、首を固める。
さらに腕を取って手錠をかける。
拘束の完成だ。
さて。
ドアを蹴破ったボクが部屋に入ると、鉄臭い血の臭いが充満していた。
その真ん中に椅子があり、小さな女の子が傷だらけで座らされている。
生きているのか……動かない。
その脇には、もう一人の女の子が息絶えて倒れている。
その傍らには、ナイフを持った痩せ細った若い男が、うつろな目で立っていた。
なんとなく、柏ノ葉に似ている。
どうやら、少女を切り裂いて殺していたのは、この男なのか?
ボクはナイフを構え、闘いを挑もうとする。
「あっ……ああああ……」
男の顔が恐怖に染まる。
こいつ……。
「お前、自分が狩られる側になるとは思ってなかったんだな」
この状態になっては、もうまともに動けないだろう。
それでも、ボクはナイフを持っている利き手と、両足の腱を斬った。
「ぎゃっ!」
男は、その場にうずくまる。
「みっちゃん!」
ボクはみっちゃんを呼んだ。
みっちゃんが部屋に入ると、男を引きずり出し、柏ノ葉のところまで連れてきた。
「勇樹、勇樹! 助けてくれ! 息子だけは助けてくれ!」
柏ノ葉が懇願する。
尋問したところ、この若い男は柏ノ葉の次男、勇樹だった。
出来のいい兄に疎まれ、いじめられているうちに心が壊れてしまった。
そして、自分より弱いものを虐げることでしか、自分を保つことができなくなったらしい。
一歩間違ったら、ボクもこいつみたいになっていたのかも。
柏ノ葉は、そんな不憫な息子のために、数人の子どもを買ってきて与えていた……。
同情はする。
でも、依頼は依頼だ。
ボクは柏ノ葉の首を切った。
鮮血が飛び散る。
次は、真犯人、息子の勇樹。
こっちは殺す前に小便を漏らして気絶していた。
何も分からないうちに死ぬのだから、かえって苦しまなくていいのかもしれない。
ボクは止めを刺した。




