子どもを売る悪い奴。9
三日間、つぶさに観察したが、柏ノ葉の行動はあまり変わらなかった。
ただ、一日目のスーツケースの搬入を除いてだが。
多分、次の犠牲者なんだろう。
だけど、ボクたちに助けるという選択肢はない。
ボクたちは警察ではないし、助けるように依頼されたわけでもない。
ただ、ターゲットを斃すだけ。
前のボクだったら、助けようと思っただろう。
いや、ボクだけではなく、みっちゃんもそうだろう。
でも、今のボクたちは、駆け出しだけどプロだ。
それとこれは、別問題だ。
「やっぱり地下室?」
「そうだな。建物の右側に換気扇がある。時折、湯気が上がるということは、お湯も使っているということだ」
「監視カメラは一つ。他には何もないね。ドーベルマンたちは、みっちゃんが手懐けたしね」
「軍用犬なら絶対無理だったろうな」
みっちゃんが言うには、軍用犬なら、絶対に他人から与えられたものは食べないよう訓練されているとのこと。
当然だけどね。
それでも、
「まさか、唾付きの魚肉ソーセージで釣れるとはね」
さすが人生経験が違う。
「さっ、これではっきりした。明日決行だな」
「そうだね」
ボクたちは明日のために、早めに寝ることにした。
……けど、ボクはモバイルでゲームを朝までしていた。
結局、起きたのは午後四時。
まあ、ちょうどいい時間。
シャワーを浴びて、ラフな恰好で午後五時には車に乗った。
コンビニで軽く軽食を買い、例の河原に車を停めた。
車中でおにぎりを食べる。
ここで十九時。
そして着替え。
ボクはレザースーツとレザーパンツにブーツと、いつもの恰好。
得物は、いつもの通りアルマーのシーア。
みっちゃんは、黒の戦闘服上下に黒のブーツ。
腰にはシグザウアーP320とマガジンが二つ、それにサバイバルナイフ。
バックパックを背負っている。
それに、特徴的な暗視ゴーグル。
みっちゃんの頭には――
「黒のバンダナって、海賊?」
「かっこいいだろ」
「微妙」
残念そうな顔。
すぐに表情に出る。
そんな軽口を叩いていると、午後十時。
作戦開始の時間だ。
「さあ、作戦開始」
まずは東側から金網に近づく。
ドーベルマンたちが近づいてくる。
みっちゃんは、いつものようにソーセージを与える。
それも、いつもより多く。
眠り薬を入れて。
即効性の眠り薬は、八頭のドーベルマンをすぐに寝かしつけた。
五メートルほどある金網をよじ登り、囲いの中に入る。
入り口の監視カメラは、みっちゃんが電源を切る。
その間に、ボクはドアの鍵を開錠する。
鍵穴を二本のピンでかき回すようにすると、カチャッと音がした。
開錠はボクの方が上手い。
どんなもんだい、みっちゃん。
と、心の中でつぶやいた。
さあ、突入だ。




