子どもを売る悪い奴。8
「準備はできているか?」
ちょうど七時。みっちゃんが迎えに来た。
「よく寝たよ」
「じゃあ、行こうか」
ボクたちは車に乗った。
朝、化石を採取した河原に車を停める。
大きな岩の影だ。
ここのいいところは、取付道路があって入りやすく、比較的人も来ないこと。
大きな岩もあり、身を隠すこともできる。
ボクらは黒い戦闘服に着替えてから、ファームへ近づいていった。
みっちゃんがドローンを用意する。
日中使ったものより、若干大きめだ。
夜なら目立ちにくいし、赤外線の暗視カメラ仕様になっているらしい。
夜なので比較的近くまで行けるとはいえ、フェンスの中までは入れない。
だから、ドローンで偵察する。
しかも、今度はじっくり探ろうというわけだ。
ドローンで監視を続けていると、夜十時を過ぎた頃、一台のピックアップトラックが囲いの中に入ってきた。
中央の建物の入り口付近に車を停め、降りてきたのは……柏ノ葉だ。
柏ノ葉はピックアップトラックの荷台から、特大のスーツケースを下ろすと、小屋の中へ入っていく。
ドローンで小屋の中を確認する。
犬の寝床が用意されているだけだ。
他に部屋はなさそうだ。
でも、柏ノ葉はその部屋から出てこない。
ということは、どこかに隠し扉があるはずだ。
「どこだろうね」
「こればっかりは、入ってみないと分からんな」
柏ノ葉は、きっかり二時間後に出てきた。
「今日はここまでだね」
「ああ」
「じゃあ、帰ろ」
「待ってくれ。やることがある」
みっちゃんはリュックを担ぎ、フェンスに近づいていく。
「ワワワワン!」
大きな鳴き声を上げて、ドーベルマンたちが駆け寄ってくる。
敵意むき出しだ。
「なにするの?」
「これさ」
みっちゃんはリュックから、束になった魚肉ソーセージを取り出した。
「えっ?」
みっちゃんは魚肉ソーセージの皮を剥くと、一度舐めてから犬たちに食べさせていった。
八頭のドーベルマンに、次々と魚肉ソーセージを与えていく。
最初はうるさかったドーベルマンたちも、ソーセージを食べ終わる頃には大人しくなっていた。
「よし、引き揚げよう」
そう言うと、みっちゃんとボクは車に向かった。
「ねえ、みっちゃん。犬をソーセージで手なずけるのは分かるけど、なんで舐めてから与えたの?」
「小学校の時の先生がな。新聞配達をしていた時、一軒だけ猛犬がいる家があって、唾を舐めさせたら犬が言うことを聞くようになったって話をしていたんだ。それを思い出して、舐めた魚肉ソーセージを与えてみたら、大人しく言うことを聞くようになったってわけだ」
「へぇ、そうなんだ」
そんなことを話しながら、ボクたちは車を走らせた。
その頃、柏ノ葉本邸の一室では……。
「犬たちが騒がしいな。イノシシでも出たか……」
柏ノ葉は、そうつぶやいていた。




