子どもを売る悪い奴3
「次はこの女。マリア、三十歳くらい」
ママが説明を始める。
「日本人と中国系アメリカ人のハーフ。見た目は純粋な日本人と変わらない。この女が、日本での児童人身売買の元締めよ」
「ちょっと聞きたいんだけど、人身売買って臓器とか?」
気になって、思わず聞いてしまう。
「日本で子どもの臓器売買のために誘拐するケースは、あまりないわ。そもそも移植をやっている病院は少ないし、そんなことをすればすぐに分かってしまうもの。他のアジアの国のほうが、そういうことは簡単にできるわ」
「じゃあ、何のために子どもを売るの?」
「それより、どちらかと言えば性の対象にするために売るほうが圧倒的に多いのよ」
確かに、日本で違法な臓器移植をやっている病院は少ないんだろう。
「じゃあ、柏ノ葉のような奴に売るのが多いんだな」
みっちゃんが続ける。
「でも、日本で売られるのは、そんなに多くないわ。海外で日本人を好んでいる愛好家に売るほうが多いの。柏ノ葉は、めったにないレアなケース。だから……」
「だから、足がついた」
ボクは思わず、続きを言ってしまった。
「その通りよ。組織も、こんなに早く殺してしまうとは思ってもみなかったんじゃない?」
「そんなバレバレだったら、すぐに警察が動くじゃん」
「まこと、それはないぞ。あっても、身代わりの犯人をでっち上げて終わりだ」
「どういうこと?」
ママと言い、みっちゃんと言い、不思議なことを言う。
ボクには疑問なことばかりだ。
「そうよ。みっちゃんの言う通り。警察内部の大きな派閥で、柔道経験者の集まりがあるわ。OBには政治家も複数いる。柏ノ葉は、その有力な資金提供者ってわけ」
「正義って何なんだ!」
ボクは思わず大きな声を出した。
殺し屋のボクが言うことでもないんだけど……。
「もちろん、ほとんどの警察官は善良よ。でも、権力の中枢って、みんなこんなものよ」
「何となく分かってきたよ。だから、世の中が変になってきちゃうんだね」
「今回の被害者、あさみちゃんのおじいさまは、犯人が柏ノ葉というところまではたどり着いた。でも、警察内部の事情を知って、私たちに仕事を依頼してきたのよ」
そういうことに鈍いボクでも、ようやく全貌が見えてきた。
子どもを売る奴。
それを買う奴。
そして、その裏側で守る奴。
いろんな人間が絡んで、事件は簡単には表に出てこない。
「じゃあ、今回の仕事は柏ノ葉を殺してから、マリアを殺すほうがいいようだな」
「みっちゃん、どうして?」
「柏ノ葉は、今回の件以外でも恨みを買っているはずだ。だから、柏ノ葉が殺されても、マリアのほうはそれほど警戒しないだろうと思う。逆だと、柏ノ葉は警戒して外に出てこなくなるだろう。全て推測だがな」
「なるほど……」
みっちゃんらしい考え方だ。
まずは、逃げられにくいほうから。
「それじゃあ、まず柏ノ葉からだね」
「ああ」
ボクらは、柏ノ葉を最初のターゲットとして、作戦を考えることにした。




