子どもを売る悪い奴。2
あきなママは、まず男の写真を指でトントンと叩く。
ママの癖だ。
「この男は柏ノ葉大樹。栃木で農業生産法人を経営しているわ」
写真に写っているのは、いかにも成金風の太った大男。
どうやらこの男、チーズやケーキ、アイスクリームなどで大儲けして、金が有り余っているらしい。
そして、その金で子どもを買う。
虐待して、最後には殺す。
「こいつが人身売買の顧客?」
「そうよ。金で小さな子どもを買って、虐待して、殺して捨てる。まあ、最低な奴ね」
ママが、本当に嫌そうな顔をしている。
「おい、まさか……こいつ、首都農大の柏ノ葉じゃないか」
「みっちゃん、知り合いなの?」
「ああ」
みっちゃんは、しばらく写真を見つめてから語り始めた。
「あいつを初めて知ったのは、俺が全東京体育大学の一年生の頃だ。柔道の強い奴がいるということで、出稽古に行った時だった」
みっちゃんによると、そこで目撃した光景は凄まじかったらしい。
「奴はその時、すでに首都農大では敵なしだった。弱い部員には殴る、蹴るの暴行。先輩たちも手が出せない状況だった」
「そんなに?」
「ああ。出稽古の練習試合で、俺たちに負けた部員は、その場で暴行された。中には小便やクソを漏らした奴もいた」
「どうして学校は何もしなかったのさ」
みっちゃんは苦い顔をした。
どうやら学校は事態を把握していた。
それでも、オリンピックの候補になるかもしれない選手を、簡単に辞めさせるわけにはいかなかったらしい。
「当時の柔道の階級で、俺も柏ノ葉も九十五キロ級だった。都大会では必ずこいつに当たった。ついに柔道で一度も勝つことはできなかった」
「みっちゃんが都大会三位どまりだったっていうのは……」
「そう。必ずこいつと準決勝か準々決勝で当たっていたからだ」
「強かったんだね」
「ああ。相性も最悪だった。今のルールでは許されないが、ちょっと実力のある相手には、技のかけ逃げや返し技ばかり狙って、まともに組まなかったんだ」
ホント、性格悪い奴。
「しかし、昔からサディスティックな面はあったが……少女を虐待して殺していたなんてな」
みっちゃんは、写真の中の柏ノ葉を見つめた。
その顔には、昔の柔道場で見た男への嫌悪感が浮かんでいた。




