ニッコリ笑って人を斬る。41
「みっちゃん。せっかく山形に来たんだから、温泉いこーよ」
「温泉ってなー。お金はどうする?」
「ボク知ってるよ。経費が余っているの」
「何故それを……」
「ママから二十万円預かったの、知っているもんね」
「くっ、貯金に回そうとしたのに……」
「ここから三十分くらいのところに温泉があるから、いこーよ」
「仕方ないな」
次の日、ボクらはレンタカーを使って、隣の真室川町に向かった。
車でちょうど三十分程度。
川を渡り、小高い丘を登ったところにある温泉旅館に着いた。
ここは、もともと山城があったらしい。
旅館に着くと、見晴らしの良い和室に通された。
「いい部屋だね」
「ああ」
旅館では、親子として登録している。
「じゃあ、ボク温泉に入ってくる」
「ああ、行ってこい」
大浴場からの眺めも最高だった。
泉質は塩泉。
ちょっとしょっぱい。
大昔は海だったみたい。
「あれ、男の子だったと思ったら、女の子だったのかい?」
同じ時間にチェックインしたおばあさんに声をかけられた。
「えへへ」
なんだか照れくさい。
おばあさんは、ご当地の民謡、真室川音頭を歌っていた。
暖かいお湯が心地よかった。
一時間くらい入っていただろうか。
部屋に戻ると、みっちゃんも温泉に入ってきたらしい。
「おお、出てきたか。晩飯は部屋に運んでくれるらしい」
午後六時。
待ちに待った晩御飯。
茶碗蒸しにお刺身など、十数種類の料理。
アユの塩焼きに、メインの鍋。
「どれも美味しそう」
と……。
みっちゃんのお膳だけ、お酒がついている。
しかも、幻の名酒、十四代。
「みっちゃん、ずるい!」
ボクだって、お酒飲みたい。
「いや、まだ飲めないだろ」
「もう成人しているし!」
「お酒は二十歳から」
「あと半年もしたら二十歳だい」
「だーめ」
「みっちゃんの意地悪」
殺しだって合法じゃないのにね。
お酒はダメだって。
変なの。
食事を半分ほど食べたころ、みっちゃんがトイレに行く。
今だ!
ボクは日本酒を飲んだ。
なんて豊潤な香りに、フルーティーな味わい。
こんなに美味しいお酒は、飲んだことがない。
あっという間に、全部飲んでしまった。
みっちゃんが帰ってくる。
「ま、まこと……」
「飲んじゃった~」
みっちゃんは、もう怒りはしなかったけど……呆れていた。
その夜。
ゴーゴゴ。ゴーゴゴ。
雷か?
みっちゃんのいびきで、眠れない夜だった。
もう二度と、みっちゃんと同じ部屋で寝るもんか!
朝。
朝風呂を終えると、
「まこと、朝風呂か?」
みっちゃんは、今起きたらしい。
「眠れなかったからね」
「そうか。今回は色々あったからな」
って、違う!
アンタのせいだろ。
ボクは心の中で、ひとりごちた。
* * *
東京。
「今回は、何とか上手くやったようね」
ボクたちはSuiteKissⅡで、あきなママに報告をした。
「あいつらはどうなったの?」
「強制労働かしらね?」
何となく、はぐらかされたような気がする。
「これからは、今までの分、もっと仕事をしてもらうわよ」
「はーい」
「もう、緊張感のない子ね」
あきなママが呆れたように言う。
「次の仕事はね……」
第一話は今回で終わりです。
次からは新しいお話になります。これからもよろしくお願いします。




