ニッコリ笑って人を斬る。38
ボクは裏の階段を登り、非常ドアから侵入を試みた。
ドアのカギを壊して中へ侵入する。
だが……。
「クソ。バレてたか」
ここにも手下がいた。
仕方ない。
二人の男がドスを抜き、ボクに襲い掛かってくる。
ドスで切りかかってくる時点で、喧嘩慣れはしていない。
ドスは刺すものだよね。
なんて思えるだけ、まだ余裕がある。
男たちの動きが、止まって見えた。
ボクは一人目の男が振り下ろした腕を躱し、そのまま顔を一文字に切る。
「ぎゃっ!」
相手の両眼を潰した。
男は顔を押さえながら、その場に転がる。
次の男がドスで刺してきた。
ボクは相手の左へ躱し、そのまま背後へ回り込む。
そして、ナイフを首へ走らせた。
男の身体から力が抜け、その場に崩れ落ちる。
殺すつもりはなかった。
でも、顔を見られた以上、仕方がない。
ボクは倒れている最初の男にも止めを刺した。
そして、何事もなかったかのように事務所へ向かった。
そのころ、みっちゃんは十人中八人を倒していた。
ある者は足を折られ、ある者は後頭部を強打されている。
当たり所の悪かった者は、すでに絶命しているかもしれない。
だが、みっちゃんにも余裕はなくなっていた。
「アイヤー!」
叫びながら、トンファーを振り抜く。
側頭部を強烈に殴りつけられた男が、その場に倒れて動かなくなった。
残るは、段と呼ばれる今川の右腕だけだ。
段は小太刀を持っていた。
刀なら長すぎる。
ドスなら短すぎる。
長さ六十センチほどの小太刀は、建物の中で戦うにはちょうどいい長さだった。
みっちゃんも、相手は今までの連中とは違う手練れだと感じたのだろう。
一度、距離を取る。
段が踏み込んできた。
剣道。
鋭い突きが迫る。
みっちゃんはトンファーで、かろうじてその一撃を弾いた。
「ほう。これを躱すか」
段が感心したように呟く。
剣道三倍段……。
剣道をしている者が真剣を持ったら、柔道や空手は三倍の段を持っていないと相手にならない、という例えだ。
もちろん、本当に三倍の段位が必要という意味ではない。
それほど武器を持った剣道経験者は怖い、ということだ。
段は中段の構えで小太刀を構える。
一方、みっちゃんは右手でトンファーの短いグリップをしっかり握った。
長い棒の部分を前腕に沿わせ、身体を半身にする。
さっきまでのふざけた中国語を使っていた人物とは、まるで別人だった。
目つきが変わった。
そして、空いている左手の手のひらを上に向ける。
指をクイクイッと曲げる。
来い。
言葉にしなくても、それだけで分かる。
その仕草は、言葉以上に挑発的だった。
「くそがー!」
段が踏み込んでくる。
小太刀が突き出された。
みっちゃんは右手のトンファーで払い、すぐにローキックを放つ。
段は一度下がる。
みっちゃんも追わない。
また突き。
払う。
ローキック。
大技は使わない。
「そんなんじゃ、俺には勝てないぜ」
段も挑発し、深追いさせようとする。
しかし、みっちゃんは無言で左右のローキックを繰り返す。
一発一発は決定打ではない。
だが、確実に段の足へダメージを蓄積させていく。
段も業を煮やした様子で、大きく踏み込んできた。
「おおおっ!」
飛び込みながら突きを放つ。
みっちゃんは右へ躱した。
段の右足が床につく。
その瞬間を、みっちゃんは見逃さなかった。
利き足の左で、ちょうど膝上へローキックを叩き込む。
「うっ……!」
ダメージが蓄積された足が、ついに限界を越えた。
段の身体が崩れ、膝をつく。
そして、みっちゃんは腰を切り返した。
右足で後頭部へローキックを叩き込む。
段の身体が床へ崩れ落ちた。
粘り勝ち。
みっちゃんは、ついに段をねじ伏せた。




