ニッコリ笑って人を斬る。36
「てめーら、そのなりは何だ!」
如何にもやくざ風の男が、三人組を問い詰める。
その前にいるのは、昨日、ボクに喧嘩を売ってきた三人組だった。
「はあっ? 誰にやられたって?」
「チビで生意気な、中学生くらいの男で……す」
「中坊だって! しかも一人だぁ⁉」
やくざ風の男は、ますます怒りを露わにする。
「でっ、でも、普通じゃないんです」
「段さん、ホントなんです」
「そっ、そうです。ナイフを出したら、急に人が変わったようになって……」
三人の表情は真剣だった。
嘘を言っているようには見えない。
だが、段と呼ばれた男は、どうにも信じられないといった顔をしていた。
「お前ら三人が、ガキ一人にやられたってのか?」
三人は黙って頷く。
そんなところへ、
「おめーら、何騒いでるんだ」
低い声が響いた。
「今川の兄貴!」
そこに入ってきたのは今川。
今川武志。
ボクたちのターゲットだ。
「こいつら、昨日、よそもんのガキ一人にやられたってんですよ」
段が呆れたように説明する。
「こいつらだって、ここいらじゃあ、それなりにやるんじゃないのか?」
今川は三人を見ながら言った。
「それが……」
三人は顔を見合わせる。
そして、昨日の出来事を今川に説明した。
話を聞いていた今川の表情が、少しずつ変わっていく。
「今、チビのガキと筋肉おやじって言ったな」
「はっ、はい」
一人が答える。
今川は、しばらく黙っていた。
そして――。
「違いない。奴らだ……」
「誰ですって?」
段が聞き返す。
今川は三人を見たまま、口元をわずかに歪めた。
「俺がここに飛ばされた理由……」
一瞬、遠くを見るような目をする。
「半年前に復讐を誓った相手だ」
そして、もう一度三人を見る。
「そうか……奴らが来たのか…こちらから出向く手間が省けた」
今川はニヤッと笑った。
その笑顔には、先ほどまでの苛立ちはなかった。
代わりに、何かを待ち望んでいたような、不気味な笑みが浮かんでいる。
そして、一呼吸置く。
「おい。全員集めろ」
低い声で、段に伝えた。
「はっ、はい!」
段は慌ててスマホを取り出す。
そして、立て続けに数件の電話をかけた。
ほどなくして、廃ビルの中に十数人の男たちが集まってきた。
今川は集まった男たちを前にして、淡々と指示を与えていく。
逃げ道。
見張り。
そして、待ち伏せする場所。
誰も、その指示に口を挟まない。
今川の目的は一つだった。
半年前、自分を追い詰めた二人を、この場所で始末すること。
今川は、最後に男たちを見回した。
「絶対に逃がすな」
低い声が、廃ビルの中に響いた。
ボクたちは知らなかった。
ボクたちを殺すための指示を……。
今川は、すでに出していた。




