ニッコリ笑って人を斬る。35
次の日から、今川の捜索を始めた。
「みっちゃん。なんていうか、カメラがほとんど無くて……」
「おい、気を抜くなよ。カメラはなくても、外から来た人間への目はあるからな」
「どういうこと?」
「東京の人間は人に無関心だが、地方の人間は外から来た人間に強い関心を持つ」
「あまり目立つなってことだね」
「そういうこと」
今川の居場所は、意外なほど早く分かった。
駅の西側にある廃ビル。
三階建てで、それほど高くはないが、横に長い建物だ。
一階はクラブ。
二階はスナックなどの飲み屋。
三階は、かつてホテルとして営業していたらしい。
入口に貼られた張り紙を見ると、今年の三月に閉店したようだ。
みっちゃんがスマホを取り出す。
「何見てるの?」
「店舗の賃貸情報」
「借りるの?」
「まさか」
画面には建物の平面図が表示されていた。
「ていうか、みっちゃん。傭兵の訓練に行って、スマホを使いこなせるようになったんだね」
「現場で作戦変更とかは、全部スマホだったよ。もう馬鹿にできんぞ」
「ちっ」
一つ、みっちゃんをいじるネタが減ってしまった。
図面を確認する。
一階フロアは、ほぼ半分を占めるクラブを中心に、奥に五店舗のスナック。
二階には十軒のスナック。
三階は事務所と、客室が二十室あるホテルになっている。
今となっては廃ビルだが、昔はかなり栄えていたのだろう。
建物の造りを見る限り、今川たちは三階を拠点にしている可能性が高い。
入口脇にはエレベーター。
建物の奥には階段。
中へ入るなら、この二つが主な経路になりそうだ。
「建物の構造は大まかに分かった。でも、あとは相手の戦力だな」
「そんなにいない気がするけどね」
「油断は禁物だ。手練れがいるかもしれない」
「任せといて」
ボクは自信に満ちていた。
ニックに勝った。
あのニックより強い奴なんて、そうはいない。
そう思っていた。
みっちゃんは、何か言いたそうだった。
でも、何も言わなかった。




