ニッコリ笑って人を斬る。33
新庄市は、山形県の北東部にある市だ。
最上地域の中心都市であり、新庄市を中核に最上生活圏を形成している。人口は三万一千人ほど。
山形新幹線の終着駅でもある。
新幹線を降りると、駅には沢山の団体客がいた。
どうやら隣の秋田県、大曲で開催される花火大会に向かう人たちらしい。
「あーあ、ボクも花火大会行きたかったな」
「花火、好きだったのか?」
「うーん。何となく」
「まあ、仕事が優先だな」
「しょうがないね」
新幹線の改札口を出ると、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている新庄まつりで使われた山車が飾られていた。
人間国宝○○作――。
そんな説明書きまである。
あんまり興味のないボクでも、何となく凄いものだということは分かった。
駅の右側には、お土産屋がある。
その前は簡単なホールのようになっていて、正面にはステージ。
大きなテーブルが十数台並び、市民や観光客が弁当を食べたりしながら、のんびりくつろいでいる。
「みっちゃん。喉が渇いた」
「そうだな。なんか飲むか」
「あれ、あれがいい!」
ボクはお土産屋に並んでいた、薄紫色のご当地サイダーを指さした。
地元出身の漫画家がデザインしたキャラクターが描かれていて、アジサイをイメージしたサイダーらしい。
アジサイの味は……しなかった。
でも、すっきりしていて、乾いた喉には美味しかった。
「まこと、トイレ行ってくる」
「いっトイレ~」
みっちゃんを見送ったボクは、ベンチに座って辺りを眺めていた。
すると、ホールの一角から大きな笑い声が聞こえてきた。
高校生くらいの、ガタイのいい三人組。
Tシャツにハーフパンツ。
見るからに不良だ。
周囲の迷惑なんてお構いなし。
彫刻に登ったり、観葉植物の上にゴミを置いたりしている。
「うっさいなー」
思わず、ぼそっと口に出してしまった。
一人がこちらを振り向いた。
目が合う。
でも、一瞥しただけで、そのまま仲間のところへ戻っていった。
「どうしたんだ?」
戻ってきたみっちゃんが、不機嫌そうなボクを見て声をかける。
「べつに」
「べつにって……ずいぶん不機嫌そうだな」
「いいよ。おなかもすいたし、宿に行こう」
「そうか……」
ボクらは駅を出て、正面の大通りを西へ向かった。
先週、祭りが終わったばかりの新庄の街。
天気もあまりよくないせいか、人通りはほとんどない。
中野川を越えたところで左に曲がり、路地へ入る。
その時だった。
「おい!」
後ろから声がした。
振り返る。
さっきの不良たちだった。
「さっき俺たちに『うっさい』って言ったな」
一人が睨みつける。
「って、親父付きかよ」
みっちゃんを見る。
「だから、なに?」
ボクは面倒くさそうに答えた。
「ボクら、忙しいんだけど」
「ワビを入れろ」
「あっ、ゴメンゴメン」
ボクは軽く頭を下げた。
「じゃあね」
「ふざけやがって!」
不良たちが一斉に殴りかかってくる。
ボクは、みっちゃんを見る。
「みっちゃん、手出さないでね」
みっちゃんは、やれやれといった顔で肩をすくめた。




