ニッコリ笑って人を斬る。31
ボクは次の日、バイトを辞めた。
「正職員になれたから」
そう言って店長に伝えると、店長は残念がっていたけど、オーナーは喜んでくれた。
騙すのは、ちょっと心が痛んだ。
人を殺すのは何とも思わないのにね。
自分でも変だと思う。
そして、SuiteKissⅡに向かった。
「よくやったわね」
あきなママが、珍しく褒めてくれる。
「でも、今回の任務は難しかったよ」
「そうでしょうね。訓練を受けつつ内偵なんてね」
「もう、こりごり」
実はボクは、ニックとジョーカーの二人がダブルスパイだということを知っていた。
その上で、ボクは潜入した。
今思えば、かなり危ない任務だった。
そんな話をしていると、店のドアが開いた。
「みっちゃん……」
「まこと!」
みっちゃんが戻ってきた。
半年ぶりに見るみっちゃんは、以前とは少し違っていた。
「みっちゃん……なんか黒くなった」
「お前も少し雰囲気が変わったな」
「そう?」
「ああ。なんていうか……目つきが違う」
「みっちゃんもだよ」
二人で顔を見合わせる。
お互い、同じことを思っているのかもしれない。
戦場に行く前と、帰ってきた今。
たった六か月。
でも、その六か月はボクたちを変えてしまった。
「みっちゃん、お帰りなさい。二、三日休むといいわ」
あきなママが言った。
「えっ。たった二、三日だけ?」
「ええ。その後は今川の後始末よ」
「今川? 見つかったの?」
みっちゃんとボクは顔を見合わせた。
僕らのやり直したシゴト。
今川にリベンジだ。
SuiteKissⅡからの帰り。
「みっちゃん。ご飯食べようよ」
「いいな」
ボクたちは個室居酒屋に入った。
隣の音は、ほとんど聞こえない。
久しぶりに二人きりになって、今までのことをお互いに話した。
「へ~っ。それで、アイリーンって子は可愛かったの?」
「可愛かったが、生徒みたいな感じだったぞ。先輩だけどな……」
「ふーん」
みっちゃんが少し照れながら話す。
ボクはその顔を見ながら、六か月の間にできた仲間のことを聞いていた。
「みっちゃん、楽しそうだね」
「そうか?」
「うん。戦場の話をしてるのに、嬉しそう」
「……まあな。いい仲間だったよ」
その言葉に、ボクは少しだけ羨ましくなった。
ボクにもニックがいた。
でも……。
もう、いない。
二時間制の席では、とても話しきれなかった。
ボクたちは、そのままアジトへ向かった。
ボクはドアを開けて、一歩先に玄関へ入る。
そして、振り返った。
「おかえり、みっちゃん」
ボクは、言いたかった言葉を伝えた。
「ああ。ただいま」
みっちゃんも、照れくさそうに答えてくれる。
その一言だけで、なんだか嬉しかった。
六か月間、離れていた。
でも、帰ってくる場所は同じだった。
みっちゃんが部屋の中へ入る。
そして……。
「なんじゃこりゃー!」
あまりの部屋の汚さに、みっちゃんは驚いた。
「えっ?」
ボクは首を傾げる。
「何って、部屋だよ」
「普通じゃない?」
「普通じゃねーよ!」
六か月ぶりの再会。
感動の余韻は、一瞬で吹き飛んだ。




