↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まことはニッコリ笑って人を斬る。  作者: ほりーⅯ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/39

ニッコリ笑って人を斬る。25

そして次の火曜日。

 ボクは任されていた仕込みの仕事を急いで終わらせる。

 共用部分の合鍵をポケットに忍ばせ、六階に向かった。

 昼下がりのビルは静まり返っている。

 古い建物なので、防犯カメラや電子ロックのような気の利いた設備はない。

 人の出入りも少なく、階段を上る足音だけがやけに大きく響いた。

 ジョーカーは、いつものように事務所を出て行った。

 ここ数週間観察してきた行動パターンに間違いはない。

 今なら入れる。

「意外と簡単だ……」

 そう呟きながら、ボクは鍵穴に合鍵を差し込んだ。

 カチリ。

 拍子抜けするほどあっさりと鍵が開く。

 周囲を確認してから、素早く中へ滑り込んだ。

 部屋の中は、ごく普通の事務所だった。

 机が並び、棚にはファイルがぎっしり詰まっている。

 しかし、どの机にもパソコンが見当たらない。

 違和感があった。

 ボクは書類を手に取って目を通す。

 契約書らしきものやメモはあるが、特に怪しい内容は見当たらない。

 暗号のようなものもなければ、機密情報らしいものもない。

「ハズレ……?」

 いや、そんなはずはない。

 部屋を見回していると、事務所の左奥に一枚のドアを見つけた。

「あそこか」

 静かにドアノブを回す。

 鍵は掛かっていなかった。

 扉を開けた瞬間、思わず口元が緩む。

「ビンゴ!」

 そこは仮眠室のような部屋だった。

 ベッドがあり、小さな冷蔵庫があり、テーブルとソファーが置かれている。

 長時間滞在するための部屋なのだろう。

 そしてテーブルの上には、スコッチの空き瓶とノートパソコンが置かれていた。

 しかも、電源が入ったままだ。

 ボクは素早く周囲を確認し、大容量のUSBメモリを差し込んだ。

 コピー開始。

 進行バーがゆっくりと伸びていく。

 このデータをニックのところへ持っていけば、専門家が解析してくれるはずだ。

 当然、ボクが見ても中身は分からない。

 でも、ジョーカーの秘密が入っている可能性は高い。

 時間がやけに長く感じる。

 ようやくコピーが終わった。

「これで完了……」

 ボクはUSBメモリを抜いた。

 その瞬間だった。

「テメェ、何してやがる」

 低い声が部屋に響いた。

 全身が凍りつく。

 振り返ると、そこにはジョーカーが立っていた。

 ヤバい。

 いつもより一時間も早い。

 完全に計算外だった。

 ジョーカーの目が鋭く細められる。

 逃げ道を塞ぐように、一歩、また一歩と近づいてくる。

「チッ……」

 ボクは反射的に距離を取った。

 そして無言のまま、腰のアルマーシーアを抜く。

 刃が鈍く光った。

「やる気か!」

 ジョーカーが怒鳴る。

 その顔には余裕ではなく、明確な敵意が浮かんでいた。

 前回の失敗が脳裏をよぎる。

 でも、あの時のボクとは違う。

 ニックに教わったことを思い出せ。

 正面に立つな。

 止まるな。

 死角へ入れ。

 ボクはテーブルやソファーを間に挟みながら位置を変え、ジョーカーとの距離を保つ。

 静かに呼吸を整えながら、ボクは戦闘の準備に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。