ニッコリ笑って人を斬る。24
ボクは次の日から、居酒屋でバイトすることになった。
店主はすでに引退していて、今は雇われ店長が店を切り盛りしている。
ところが、なにせ人がいない。
ホールも厨房もギリギリの人数で回しているらしく、忙しい時間帯になると店長も厨房から出てきて注文を取り始める。
そんな店だった。
でも、意外なことに、ボクはこの仕事に向いているのかもしれない。
「おい、兄ちゃん。ビール三つと枝豆、焼き鳥セット!」
「は~い!」
注文を聞くと、すぐに厨房へ伝える。
「兄ちゃん、ハイボールと芋焼酎!」
「は~い。芋焼酎は割りますか?」
「お湯割りで」
「かしこまりました!」
注文を取り、料理を運び、空いた皿を下げる。
次から次へと仕事がやってくるけれど、不思議と苦にならなかった。
むしろ、相手の動きを見て次に何をするのか考えるのが楽しかった。
「まこと、お前、要領がいいな」
「ありがとうございます」
「覚えるのも早いし、助かるよ」
そんな言葉をかけてもらえるようになった。
すっかり信用され、ひと月も経たないうちに、店の建物の鍵まで預けられるようになった。
もちろん、ボクには別の目的がある。
店長に見つからないように、ビルの共用部分の合鍵をこっそりと作った。
これで、かなりジョーカーに近づいた。
居酒屋で働きながら周囲を偵察していると、ジョーカーの活動は夜に多いことが分かってきた。
普段はコンビニに買い物に行く程度で、あまり外には出ない。
ただし、火曜日だけは違った。
午後の決まった時間になると、ジョーカーは事務所を開け、二時間ほど不在になる。
その二時間がチャンスだ。
ジョーカーが事務所にいる間に侵入するわけにはいかない。
事務所を離れたわずかな時間に入り込み、部屋の中から情報を集める。
それがボクの計画だった。
問題は部屋の鍵だ。
でも、こんなこともあろうかと、鍵開けの練習もしていた。
古い建物だから、鍵もそれほど複雑なものではないはずだ。
何度も頭の中で手順を確認する。
焦ってはいけない。
前回の失敗で、ボクは身をもって知った。
殺し屋に必要なのは、ただ殺す力だけじゃない。
観察して、考えて、確実に仕事をすること。
決行は、来週の火曜日。
ボクはそう心に決めた。




