ニッコリ笑って人を斬る。22
一方、みっちゃんの方は、アラブ首長国連邦(UAE)の首都、アブダビへ向かった。
そこを拠点に置く民間軍事会社で、傭兵としての実戦訓練を行うことになったみたい。
同じUAEの中でも、ドバイほどの華やかさはない。
でも、アブダビは政治や行政の中心で、まさに国家の中枢といった雰囲気の街だ。
石油関連産業も多く、海に面していてホルムズ海峡にも近い。
みっちゃんが派遣されたのは、Gulf Shield Security。
日本語に直すと「湾岸の盾」。
ホルムズ海峡で起こったトラブルを専門に解決している民間軍事会社で、特に今は、イランによる海上封鎖で足止めされた船舶の救出などが主なシゴトになっているようだ。
みっちゃんが空港に着くと、ガイドらしい男に案内された。
そして、たどり着いたのは、少し古びた十階建てのビル。
その三階にあるオフィスで待っていたのは、ガルフ・シールドの実行部隊の面々だった。
全部で七名。
その中でも一番目立っていたのが、実行部隊の隊長ジェイド。
みっちゃんより十歳ほど年上だったみたい。
「お前が、み、みっ、みっつ……面倒だ。お前は今日からミッキーだ」
「ミッキー?」
ミッキーだって。
どちらかというと、プーさんの方が似合っていると思うんだけどね。
「ミッキー、日本の組織からの要請で、お前を受け入れることになった」
「はい。よろしくお願いします」
「まず三か月間、基礎訓練をしてから実戦に向かう。いいな?」
「はい」
「アイリーン、こいつの面倒を見てくれ」
「えー、めんどくさい」
そう言ったのは、ガルフ・シールドで一番若い隊員、アイリーン・カーター。
十八歳。
見た目はボクとは全く違う。
だけど、なんとなくボクに似た雰囲気があったんだって。
ホントかな?
「アイリーン、ようやく後輩ができたんだ。面倒見てやれよ」
「そうだぜ、そうだぜ。先輩!」
隊員たちがアイリーンを冷やかす。
「アンタたちは、うっさいんだよ!」
そう言いながらも、まんざらでもない様子だったらしい。
「行くよ、オールドルーキー!」
「はい、先輩」
まず連れていかれたのは、地下の射撃訓練場。
ガルフ・シールドでは、SIG SauerP320という拳銃を標準採用している。
「おい、新入り。銃の使い方も知らないのか?」
「はい。初めてです」
「しょうがない奴だなー」
そう言って、アイリーンは一から銃の扱いを教えてくれた。
今まで一番下っ端だったので、後輩ができたのがよほどうれしかったらしい。
「ほら、肘が下がっている。そんなんじゃ当たらないよ」
「はい、先輩」
「さあ、拳銃が終わったら自動小銃!」
そう言うと、今度はHK416の射撃訓練に入った。
最初の一か月は銃の訓練。
残り二か月は、実戦形式の訓練だった。
実戦訓練場は地下三階にある。
ペイント弾を使って、当たり判定をする。
「おい、ミッキー! 頭隠して尻隠さずだ!」
パンッ!
みっちゃんの尻に、ペイント弾が命中する。
「しっかり障害物に体を隠せ! 次、当たったらケツを蹴り飛ばしてやる!」
「はい、先輩!」
みっちゃんもタジタジだったみたい。
ぷっ。
目に浮かぶ。
こうして、みっちゃんは三か月間、基礎訓練でみっちり鍛えられた。
そして……いよいよ実戦投入された。




