ニッコリ笑って人を斬る。19
ソファーに並んで座り、二人でこれからのことを考えていた。
けれど、考えていることは同じだった。
「ボクたち、もう普通には戻れないね」
「……そうだな」
「後悔してる?」
「毎日してる」
「ボクはしてないよ」
「そうか……」
みっちゃんは少し寂しそうに笑った。
「でも、一人だったら生きていけない」
「俺も同じだ」
「じゃあ、相棒だね」
「ああ」
その夜、ボクたち二人はSuiteKissⅡに向かった。
店に入ると、あきなママが待っていた。
「来たってことは、どうするか決めたのね」
「このままシゴトを続けます」
「ボ、ボクも」
ボクが答えると、ママはしばらくボクたち二人を見つめた。
そして、一呼吸置いてから口を開いた。
「覚悟は決まったようね」
ママが言うと、ボクたちは二人とも頷いた。
「アナタたち、前回失敗したでしょ。このままでは失敗を繰り返すわ」
その言葉に、ボクたちは何も言えなかった。
「あなたたちには、それぞれ修行をしてもらうわ」
「えっ?」
「まことは、殺しの師匠のところ。みっちゃんには傭兵になってもらうわ」
「なんで、みっちゃんまで?」
ボクは納得がいかなかった。
「俺が傭兵ですか?」
みっちゃんも困惑した表情を浮かべる。
「アナタたちは、足りないものが違うの。だから別々に、半年間みっちり鍛えてくるのよ」
こうして、ボクたち二人は半年間、別々の場所で修行することになった。
その前日。
ボクの好きなカキを食べに、二人でオイスターバーに行った。
「今日は宮城県産だって。美味しそう」
ボクはカキにレモンを絞る。
「旨そうだな」
みっちゃんは生ガキに塩をかけ、スコッチを垂らして、美味しそうに食べた。
「それ、美味しい?」
「なかなかいけるぞ。地元がカキとウイスキーの産地でな。そこの道の駅で、この食べ方を知ったんだ」
「ボクもそれしたい」
「大人になったらな」
最後になるかもしれない夜なのに、みっちゃんはお酒を許してくれなかった。
まあ、どうせママのお金だ。
せっかくだからと、カニの足の刺身も頼んでみた。
「みっちゃん。とろけるみたいで美味しいよ!」
思わず顔がほころぶ。
「もう一本食べてもいいぞ」
みっちゃんは、自分の分をボクにくれようとする。
「ううん。美味しいものは、分かち合いたいじゃん」
そう言うと、みっちゃんも嬉しそうにカニを口に運んだ。
次の日。
みっちゃんは、中東のホルムズ海峡へ行くことになった。
ボクはというと……意外や意外。
荒川区の日暮里だった。




