ニッコリ笑って人を斬る。15
みっちゃんの場合~
中学生の時、俺はいじめられっ子だった。
真面目なのはいけないことだろうか?
いじめは壮絶だった。
「おい、今日も優等生やってんのか?」
「……」
「なんか言えよ」
教師たちは助けてくれなかった。
何度も死のうと思った。
でも、死ぬ勇気もなかった。
そんな俺が変わったのは、高校生になった春だった。
体だけは人より大き目だった俺は、柔道部の二人の先輩に肩を組まれ、部室に連れていかれた。
「お前、柔道部入るよな?」
「えっ……いや、俺は……」
俺が答えるより早く、部長が一言。
「柔道部。入るよな」
「……はい」
断るすべはなかった。
でも、実は先輩たちは思いのほかいい人たちだった。
「お前、体がデカいんだから、もっと自信持てよ」
「俺なんかが強くなれるんですか?」
「なれるさ。やってみなきゃ分からんだろ」
その言葉をきっかけに、俺は柔道にのめり込んでいった。
柔道もメキメキと強くなり、すぐに黒帯になった。
ある日、黒帯で縛った柔道着を肩に担いで歩いていたときだった。
向こうから、中学の時のいじめっ子の集団がやってきた。
俺に気づいた奴らの視線が、肩に担いだ柔道着へと移る。
そして、その中の一人が小さく言った。
「……あいつ、柔道やってんのか?」
奴らは何も言わず、俺の前から道を開けた。
俺はその横を、何事もなかったように通り過ぎた。
その時、初めて思った。
……俺は、こいつらに勝った。
殴り返したわけでもない。
仕返しをしたわけでもない。
ただ、自分が強くなった。
それだけだった。
大学では柔道部に入ったが、興味のあったフルコンタクト空手の道場にも通った。
柔道では地区大会優勝。
空手では関東チャンピオンになった。
教員免許を取得し、俺は中学の体育教師になった。
教師になった俺は、真面目で面白くない人間かもしれない。
それでも、一つだけ決めていた。
困っている生徒には、誠実でいよう。
自分が、誰にも手を差し伸べてもらえなかったからこそ、今度は俺が手を差し伸べる側になろう。
「先生……」
「どうした?」
「実は……いじめられてるんです」
「そうか」
俺は、その生徒の目を見た。
「よく話してくれたな。もう一人で抱えなくていい」
いじめられている生徒に、手を差し出せる存在に。
それが、教師になった俺の目標だった。
十数年たつと、俺は「みっちゃん先生」と呼ばれ、多くの生徒から相談を受けるようになった。
自分が担任している生徒以外も相談に来たので、他の先生からやっかみを受けることもあった。
「また、みっちゃん先生のところに相談に行ったらしいぞ」
「俺のクラスの生徒なんだけどな……」
そんな声が聞こえてくることもあった。
でも、そんなのは関係ない。
生徒が幸せになればいいのだから……。
そんな俺にも、唯一の弱点があった。
女性だった。
生徒なら全然気にならない。
だが、特に綺麗な女性とは、まともに話すことすらできなかった。
「……あの、先生?」
「は、はい!」
「顔、真っ赤ですよ?」
「いや、これは……その……暑いだけです」




