ニッコリ笑って人を斬る。14
そんなボクの一部始終を見ていた人がいた。
「あーら、先を越されたじゃない。ミッション・インコンプリートよ」
あきなママだ。
「でも、いいもの見せてもらったわ。アンタ、高校生?」
ボクの頭に、ママの言葉は入ってこない。
「何があったかは知らないけど、人殺しはよくないわ。まあ、殺し屋の私が言うことではないんだけどね」
ボクが反応しないので、あきなママはお手上げのポーズをとる。
「まあ、アナタ気に入ったわ。とりあえず、ここに長居してはダメよ。私と一緒にいらっしゃい」
悪意がないことだけは分かったので、ボクはついていった。
ついていった先は、新宿二丁目のニューハーフバー「SuiteKissⅡ」だった。
少し落ち着いたボクは、いきさつを話した。
「アナタには選択肢が二つあるわ。一つは自首して罪を償うこと。そして、もう一つは私たちの仲間になること」
ママによると、一つ目の選択肢を選ぶと、人を殺したことが公になる。
未成年だから罪は重くはないが、家族もろとも指を指されることになる。
そうなれば、母親や妹は今のところに住むこともできない。
二つ目の選択肢は、全てをなかったことにする。
親にも妹にも何も影響がない。
家族は今まで通りの生活ができる。
その代償として、同じ組織に入る。
「アナタ、人殺しを楽しんでいたわ。本当の自分でない自分に酔いしれていたわ」
その言葉を聞いても、ボクは何も答えなかった。
ただ、あの男を殺した瞬間のことだけが、頭から離れなかった。
怖かったはずなのに。
憎かったはずなのに。
あの瞬間だけは、ボクは自分ではない誰かになれた。
こうしてボクは、殺し屋になった。
………自分ではない自分になるために。




