ニッコリ笑って人を斬る。12
アジトに戻ってきたボクとみっちゃん。
二人でリビングのソファーにどっかりと座る。
僕らは二人とも、なぜ殺し屋になったのかを思い出す。
まことの場合~
ボクは子どものころから、自分ではない自分になりたかった。
特に、男の子になりたかった。
別に、女ということが嫌だというわけではない。
男の子を好きになることもあったし……。
とにかく、自分以外の誰かになりたかった。
その衝動で、女である自分の対極にある男になりたかったのかもしれない。
だから中学の頃、偶然始めたオンラインゲーム「キルクエスト」。
ボクは、ボクでない自分、TinyDeathを作り上げ、それにハマっていった。
日増しに、自分以外の誰かになりたい気持ちが強くなった。
そんな時、高校進学の説明会で見つけた、大手芸能プロダクションが出資している学校のパンフレット。
そのパンフレットにあった演劇科に、すっかり心を奪われた。
「お母さん。演劇科に行きたいんだけど……」
「うちにそんな余裕あるわけないでしょ。妹もいるのよ」
学費も高かったし、母子家庭で裕福ではない環境。
親は反対した。
でも、生徒指導の体育の先生、みっちゃん先生が相談に乗ってくれた。
「まことは演劇をやりたいんだろう」
「うん」
「俺は、やりたいことはやった方がいいと思うぞ」
「でも、お金が……」
「だったら一緒に方法を探してみよう」
みっちゃん先生が、学校独自の特別な奨学金があることを見つけてくれた。
入学試験の時、ボクの演技はかなり上手かったみたいだ。
ボクは特待生で入学できた。
自分でない自分を演じることができる。
ボクは、翼を得た鳥にでもなった気持ちでいた。
演技もメキメキと上達した。
そしてある日、ものすごく暑い日のことだった。




