ニッコリ笑って人を斬る。10
昨日はほとんど眠れなかった。
朝方になった今も、眠れそうにない。
昨日の失敗が頭に残って……。
初めて死を感じた夜。
ゲームと違い、撃たれれば死ぬ。
一瞬の恐怖。
何もできなかった……。
みっちゃんがいなかったら……死んでいた。
そんなことを考えていると、
ドンドンドン、とドアを叩く音。
「まこと、起きろ!」
みっちゃんが慌てた口調でボクを呼ぶ。
「寝てないから大丈夫。でも、まだ5時だよ」
「あきなママからの呼び出しだ。かなり急いでいるみたいだ」
とりあえず、近くにある服を着て部屋から出る。
「どうしたんだろうね」
「ああ、こんなことは初めてだ」
僕らは急いで事務所、「SuiteKissⅡ」に向かった。
夜のネオンの光がまぶしく、美しい新宿の繁華街。
一変して朝は、店から大量に出されたゴミ。
ドブネズミの死骸。
酔っ払いの嘔吐物をついばむ鳩。
はっきり言って、綺麗なもんじゃない。
そんな街を、二人で全速力で走る。
本気で走れば、5分とかからない。
息を切らして店に着くと、あきなママがカウンターの裏に来るよう合図する。
開口一番。
「アンタたち、失敗してくれたわね」
ママが言った。
「えっ?」
二人同時に声が出る。
「確かにキャリーケースに入れて、掃除屋に引き渡しましたが……」
みっちゃんが言う。
「アンタたち、相手が死んだの確認した?」
「いや、状況から死んだと思って……」
みっちゃんの額から冷や汗が流れる。
「でも、ケースに入れているときだって動かなかったし……」
ボクも言い訳ではないが、答える。
「そうよね。そうじゃなきゃ、倉庫でキャリーケースが空になっていて、掃除屋が二人とも殺されているなんてこと、ないわよね!」
あきなママが強い口調で言った。
「どうして?」
「なんだって?」
ボクとみっちゃんは、二人とも驚きのあまり頭の中が真っ白になる。
「まずは昨日のこと、正確に報告しなさい」
こうして僕とみっちゃんは、昨日の一部始終を報告した。




