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戦わない召喚士エレノアの異世界記録 ――名を受け取り、世界に触れる  作者: ぷにゅん


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第247話 流れの名残

朝。


水が――


音を持った。


小さく。


ほんのわずか。


だが。


確かに。


“流れている音”


リゼルが顔を上げる。


動かないはずの水路。


そこに。


細い流れ。


昨日よりもはっきりと。


繋がっている。


「……音が」


声が漏れる。


ネファルが言う。


(連続している)


ラグナが言う。


(切れてねぇな)


ヴェルナシアが囁く。


(通った)


エレノアは水を見る。


触れない。


押さない。


ただ。


“そこにある流れ”を見る。


「……維持されています」


短く。


だが。


確定。


水面が揺れる。


自発的に。


昨日とは違う。


呼ばなくても。


集まる。


形になる。


セレイア。


輪郭が崩れない。


透明なまま。


だが。


“存在が定まっている”


リゼルが息を呑む。


「……保っている」


ネファルが言う。


(流れに乗ったな)


ラグナが言う。


(自分で立ってる)


ヴェルナシアが囁く。


(まだ浅い)


エレノアは言う。


「……セレイア」


呼ぶ。


今度は。


すぐに。


「……うん」


止まらない。


自然に。


ラグナが笑う。


(おいおい)


ネファルが言う。


(変わったな)


ヴェルナシアが囁く。


(軽い)


エレノアは続ける。


「……分かりますか」


セレイアは水面を見下ろす。


自分を。


流れを。


そして。


言う。


「……少し」


昨日と同じ言葉。


だが。


“意味が違う”


ネファルが言う。


(理解が伴っている)


ラグナが言う。


(ただの繰り返しじゃねぇな)


ヴェルナシアが囁く。


(今)


その時。


水が強く揺れる。


一瞬。


古い流れが反応する。


歪む。


引き寄せられる。


リゼルが叫ぶ。


「やめろ!」


反射的に。


声が出る。


ネファルが言う。


(接触するぞ)


ラグナが言う。


(ぶつかる)


ヴェルナシアが囁く。


(裂ける)


だが。


エレノアは動かない。


止めない。


ただ。


言う。


「……そのまま」


短く。


セレイアが止まる。


揺れる。


古い流れ。


新しい流れ。


触れる寸前で。


止まる。


「……ちがう」


はっきりと。


セレイアの声。


途切れない。


ラグナが言う。


(おお)


ネファルが言う。


(選んだな)


ヴェルナシアが囁く。


(分けた)


セレイアは続ける。


「……そっちじゃない」


水が分かれる。


触れない。


混ざらない。


古い流れはそのまま。


歪んだまま。


新しい流れは。


細く。


だが。


まっすぐに通る。


リゼルが膝をつく。


力が抜ける。


「……できるのか」


信じられない。


目の前で起きている。


ネファルが言う。


(干渉していない)


ラグナが言う。


(でも選んでる)


ヴェルナシアが囁く。


(流れ)


エレノアは言う。


「……分かりましたね」


セレイアが頷く。


小さく。


だが。


はっきりと。


「……うん」


そして。


少しだけ。


笑う。


ほんの一瞬。


だが。


確かに。


“元の気配”


ラグナが言う。


(出たな)


ネファルが言う。


(回復ではない)


ヴェルナシアが囁く。


(戻らない)


エレノアは頷く。


「……はい」


短く。


「戻りません」


そのまま。


受け入れる。


セレイアが言う。


「……でも」


間。


水が流れる。


音がする。


小さく。


続く。


「……これでいい」


沈黙。


リゼルが顔を上げる。


目が揺れる。


「……それで」


言葉が続かない。


エレノアは言う。


「……在ります」


それだけ。


水が流れる。


止まらない。


弱い。


細い。


だが。


確かに。


続いている。


ネファルが言う。


(成立したな)


ラグナが言う。


(いい流れだ)


ヴェルナシアが囁く。


(遅い)


ノルヴァル水都。


止まっていた場所。


戻らない場所。


それでも。


今。


新しい流れが通っている。


セレイアは完全ではない。


名前も戻らない。


だが。


選んだ。


流れを。


その結果。


水は。


初めて。


“自分で流れ始めていた”

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