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7.救出作戦4



 痛みも忘れ無心で走りだし、港から夜の海へと飛び込んだ。肩から血が抜けていくのが分かる。けどあの子をこのままでは死なせてしまう。いくら人魚でも尻尾まで鎖で巻かれたままでは相当な重さだ。泳ぐことなど不可能だ。しかし夜の海で人間の目では役立たずだ。そう思っていると、ぼんやりと下の方が光っているのが見える。


 まさか!? そのまま海の底へと向かって泳ぎ進めれば、フェイル自身を水から守る白く光る小さな球体の中から手を伸ばし、必死に人魚の少年の南京錠を持って上へと引き上げようと踏ん張っているように見える。人魚の少年も汚泥の海底へ落ちぬように、上へと泳ごうと必死だ。


 その姿に渾身の力を足に込めて泳ぎ進めれば、此方に気づいた二人が驚きに目を見開く、それにかまわず手に持っていた鍵で少年の南京錠の鍵穴に、何度か手を滑らせつつも差し込んで開錠する。少年の顔を見る間もなく、限界を超えつつある息を酸素へと変えるべく浮上しようとするが、思っていた以上に水面が遠い。


 息が……ジンジンと痛み続ける肩の激痛に酸欠、徐々に意識が遠のき始める。間に合わない……。ゴハッっと思い切り息を吐き出せば気泡が一気に水面へと上がっていく、それと引き換えに自分の体が沈みかけた瞬間、何かに抱き着かれ勢いよく自分の体が水面へと上昇していく、何で……思考もままならない。そう思っていると頭が水面を突破する。


「はぁ!! はぁっ!!」


肺に入りきらないのではないかと言うほど、勢いよく酸素を求めて呼吸を繰り返す。


「ゲホッゲホッ!!」


 涙目になり咽ながら自分を抱える正体を見れば、それは自分が助けようとしていた人魚の少年だった。不安げに揺れる金色の目が此方を見つめている。その頭の上にはフェイルの姿もある。


「ハハッ……ありがとね。助けようとしたのに、逆に助けられちゃったわ……ダッサイな私、クッ……」


 一息つく間もなく肩の激痛が戻ってくる。それに追い打ちをかけるように、警備の男達が駆け寄ってくる足音が響き始める。


「あんたは逃げな、私はもう大丈夫だから」


そう言って少年の手から離れようとすれば、少年の目が戸惑うように音のする方と私の顔を交互に見る。


「行け!」


 そう言って思い切り笑顔を見せてやれば、心配そうな目をしつつもゆっくりと私から離れて行く、少し離れたところで真っ暗な海の方を見つめて、もう一度私の方を振り返る。


「元気でやんな、人魚の少年! もう人間なんかに捕まるなよ!」


人魚の少年はこちらを数秒見つめた後、静かに水面の中に消えていった。


「っつー、フェイルも悪いね……。もう少しだけ、水の中に潜れる?」


 そう聞けばコクリと頷き私の方にやってくる。フェイルには胸ポケットに入ってもらい、手早くハンカチで肩の傷を口を使って硬く縛り上げると、静かに水面に潜る。それと同時に水面がライトで照らし出され始める。それをかいくぐるように、港の排水出口まで泳ぎ進めた。



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