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8.作戦終了



「だぁー死ぬかと思った……」


 血まみれで汚水まみれになった体で宿の正面から入れるわけもなく、盗人のように自分の部屋のベランダから忍び込んでシャワーを浴び、倒れこむようにベッドにダイブした。しかしうかうかしてはいられない。明日の朝の列車で帰るなんて呑気なことはできるはずもない。フェイルもくたくたなのか、大の字でベッドに倒れこんでいる。


「悪いけどフェイル、直ぐに乗り物を調達してこの宿を出るよ。列車も船も奴らが待ち構えている。フェイルの両親が待っているのはレイドって街なんだ。そこまでバイクを飛ばしても8時間は掛かるから覚悟して」


 そう伝えると、小さな頭を持ち上げて話を聞いていたフェイルは脱力したようにベッドに沈んだ。ごめんて……。


 その後すぐに身支度をして、あらかじめパーズが話を通しておいてくれた修理工場で長距離ツーリング可能なバイクを調達し、軽い食糧をサイドバッグに詰め込んで、夜が明けきる前にレイドの街へとひた走り始めた。フェイルは大事な大事なお客様なのでバイクの荷台にクッションでも敷いて休んでもらおうと思っていたのに、かたくなに胸ポケットから出てこないため、しかたなくそのまま出発した。


 時折目線を下におろせば、フェイルは楽しげに顔を出して風をきっている。あの夫婦は良いとこのご出身、フェイルも良いところのお坊ちゃんということになるだろうから、こういうアクティブな事は初めてで面白いのかもしれない。というか最初で最後なのかもしれないなーと思い、フェイルの思うままにさせておくことにした。


 途中休憩をはさみフェイルにクッキーを差し出せば、巨大なクッキーを両手に持って嬉しそうに食べている姿は、今までの疲れが吹っ飛ぶくらいかわいらしかった。妖精……可愛い……ハーフだけど……。そんな癒やしを頂きつつ、やっとの思いでレイドの街にたどり着きフェイルも無事に両親の元へと帰れたのだが、帰り際にフェイルが私の耳元で何事かを話していた。妖精語らしく何を言ったのか聞き取れなかったが、様子を見る限りニコニコとしていたので「また会いましょう」とか「お礼」かと思い、ウンウンと此方もニコニコと頷いてフェイルを見送った。


妖精一家が帰って行った瞬間、パーズの店の床の間に大の字で倒れこんだ。


「超疲れた」


「超お疲れ」


 パーズがそう言いながら「傷の手当てしてやるからこっち来い」と言うので、もぞもぞと起き上がりヨタヨタと歩み寄る。


「しばらく仕事したくない……」


上着を脱いでキャミソール姿になると、パーズが奥から出してきた救急箱から消毒液を取り出す。


「まぁそれくらいの報酬は今回貰ったからな……。足を洗うなら、うちの店番やってくれん?」


「足を洗うなんて言ってない」


「潮時じゃねぇーの? 銃弾を受けるへまなんぞお前、今までしたことなかったろ。命あるうちに足を洗えるなら洗ったほうがいいぞ」


パーズは他人の命なんぞ商売道具の一つくらいにしか思っていないと思っていたのに、意外や意外……。


「おい……なんか言えや」


「イデデデデデデ!!! 考えてただけだって!!!」


消毒液の付いたガーゼを傷口にぐりぐりと押し当てられて、激痛で涙が出そうになる。


「考える頭あったんだな」


「うっせ! 馬鹿パーズ!」


悪態をつきながらも、店番の給料次第かなーと脳裏で考えるのだった。



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