5.救出作戦2
「まぁ、これも何かの縁ってやつかな?」
そう独り言を漏らせば、フェイルが首を傾げる気配がした。人魚の少年の水槽に歩み寄る。
「本来はただ働きはしない主義なんだけど、あんたは運が良いよ人魚君」
そう言いながら水槽の下についている車輪のストッパーをはずす。なだらかに坂になっているため、水槽がゆっくりと動き始める。勢いをつけるためにその水槽を渾身の力で押すが、如何せんか弱い女一人の力ではたかが知れている。
「おぉーもぉーいぃー!!」
たいして動かない水槽に焦りを覚えている合間に、ドタドタと複数人の足音が倉庫内へと響き渡る。
「いたぞ!!」
「貴様! 何をしている!!」
チラリと視界に入った警備の人数は5人、警備とは名ばかりでどこぞの雇われマフィアの下っ端だろう。銃を此方に向けるが、リーダー格と思われる男に
「商品に当たったらどうする!! 銃を使うな!」
と止められている。ラッキー! と思いつつ、肩のフェイルに声をかける。
「フェイル、この水槽の上に一時避難しといて、私はちと前方のゴミ掃除をしてくるんで」
そう言うと一瞬ためらったように見えたが、フェイルは直ぐに水槽の上へと飛び上がってくれた。大変物分かりの良い妖精さんで素晴らしい! 此方も銃を使うのは容易いが、跳弾しては厄介だ。仕方ないのでそのまま警備の奴らに突っ込んで行く
「クソガキが! 大人しくすれば痛い目見ないで済むぞ!」
そう叫んだ男の顔面に膝蹴りを入れる。
「誰がガキだ! 私は今年で19歳だっ!!」
鼻血を流しながら後ろへ倒れこむ男と入れ替わるように、筋肉自慢そうな男が私の顔面に向かって右ストレートを振りかぶってくるのを、ひらりと交わしてしゃがみ込み、鉄板の入った編み上げブーツのつま先で思い切り男の脛を蹴り飛ばせば、声にならない悲鳴を上げた男がバランスを崩して倒れこんでくる。それと同時にこちらが立ち上がるように右ストレートをその顎に叩き込めば、白目をむいて仰向けに転がる筋肉自慢男。
「タダの嬢ちゃんじゃなさそうだ。裏家業の人間だな」
リーダーと思われる男が、めんどくさそうに言い放つ。
「だったら何さ?」
挑戦的にニヤリと笑ってやれば、あからさまに男は不快感をあらわにする。
「おい人数を集めろ。このガキ、場慣れしてやがる」
此方を侮らない冷静な判断、できる男は困るなーと脳裏で考えつつ、男の腰にジャラジャラと鍵がぶら下がっているのが目に入る。もしや水槽の鍵も……などと思っていると、私の背後に回り込んでいた警備の一人から「グハッ!!」と間抜けな声が上がり、振り返れば水槽が勢いよく迫ってくる。




