4.救出作戦開始
海のようなほの暗い髪色に美しく光る金色の目がこちらを見つめていた。思わず食い入るようにその姿を見つめてしまう。
「人魚……」
思わずポツリと言葉が漏れる。昔から人魚の美しさに人間は引き寄せられてはその海に引き込まれて命を落としてきたと言う。迷信とばかり思っていたけれど納得だ。今私が船の上に居たら、まず間違いなく海の中に落ちていただろう。
カタンという音に我に返る。いかんいかん!!頭を振って己のやるべきことを思い出す。しかし自分の目線はやはり人魚に引き付けられてしまう。よくよく見れば少年人魚、それも人間の10歳かそこらの子供くらいの大きさだ。ガラスの水槽に入れられて両手と下半身には太い鎖が巻かれ、南京錠までされている。上も出れないようにご丁寧に鉄格子の蓋つきだ。これは目玉商品だろうな……。
水中で少年人魚の深い紺色の髪がゆらゆら揺れている。助けを求めるでもなく、感情がまるで読めない表情でただ此方を見つめているばかり、名残惜しいようなそんな気持ちになりながらも視線を気合で外して目的の妖精を探していると、またもカタンと音が響く。その音の方向を見れば、木箱が2段重なった上の方に不規則に左右に揺れるカンテラが目に入る。
間違いないアレだ!!!ひらりと木箱に飛び乗りカンテラの前に立てば、驚いたようにカンテラがピタリと動きを止める。
「やっと見つけたー。あんたがフェイルで間違いない?」
カンテラを覗き込めば、茶色の髪の妖精がコクリと頷いた。妖精と言うのは皆このように性別不明レベルの中性的な美しさを持つのだろうか。息子と聞いていたから男と知っているが、パッと見女の子にしか見えない。驚きに目を見開いたままの妖精が、逃げるようにカンテラに背中を押し付けている。
「あぁー心配しないで。貴方の両親に君を助けて欲しいと頼まれたんだ。要は依頼されて救出しに来たってわけ、今から君をここから出すから、カンテラみたいな狭い場所じゃない方が良いでしょ?運ばれる方が楽ならこのままでいくけど、どうする?」
そう問えば、少し考えるように俯くと此方にゆっくりと歩み寄り扉を指さす。
「分かった」
そう答えると、カンテラについていた閂を抜いて扉を開く、正直開けた瞬間何処か逃げ出すんじゃないかと思ったけど、静かに扉から出てくると伸びをするように羽を思い切り広げ、私の肩にヒラヒラとやってくると腰を降ろした。
「あっ、はい……運ばせて頂きます……」
妖精が肩に乗っている喜びと、いや結局私が運ぶんかい!という相反する気持ちのせめぎあいを抱きつつ木箱から飛び降りると、倉庫の外から人の気配が複数迫ってくる。どうやら侵入がばれたと見える。しかし出口は気配のする方の一方のみ、突破するにしても肩には大事なお客様が乗っておられる……。ふむ?と考えて、未だに突き刺さる視線を背後に感じつつそちらを振り返れば、相変わらず私を見つめる人魚の少年
「まぁ、これも何かの縁ってやつかな?」
そう独り言を漏らせば、フェイルが首を傾げる気配がした。




