23.これが修羅場
「なっ……何かな…?」
絶対に指輪の事だぁぁぁぁ!!と、確信を持っているが言い出せない圧がある。本当に私より年下!?先ほどまでの可愛い少年はいずこ!?
「その右手の指輪……妖精の契りの指輪では?何故薬指に?何の契約を?誰としたんですか?」
金色の目が一気に殺気を帯びた目に変わる。異種族の殺気に嫌な汗が背中を流れる。えっ!?まさか私、殺される!?そう頭をよぎると、ふと、扉の外に何者かの気配を感じた次の瞬間「バンッ!!!」と壊れたかと思うほどの勢いで開いた扉に、アルシエルの殺気も一瞬で消える。
開いた扉からは低い出入り口をくぐるように、一人のエルフ……じゃない。フェイルが入ってくるとこちらを見てにっこり微笑む。昨日の格好とは一変して、フォーマルなこぎれいなジャケットとズボン姿、ドレスコードのある店でも笑顔で通してもらえるであろう格好、そんな姿に呆気に取られている間にフェイルが店内の中央まで来たところで、ひとりでに扉が閉まるとガチャリと鍵の閉まる音が静まり返った店に響き渡る。
マズイ、マズイ、マズイ!!!!修羅場!!これこそ修羅場!!!?別に私、浮気とかしてないし!!!何も悪くないのに!!!何でこんなに焦らなきゃならないんだ!!!今か!?今なのか!?クロック今呼んだ方がいい!?頭の中でぐるぐると状況打破を考えるも、睨みあう妖精と人魚を前に、魔力のない人間なぞ無力も無力、魔力で吹っ飛ばされる未来しか見えない。
「5年ぶりですね人魚君。
ずいぶんとお元気そうで何よりです。
元気なのは大変結構ですが、私の大切な婚約者に殺気を向けるとはどういう事でしょう?」
フェイルの冷たい声が店内に響き渡る。そして、足元が何やらヒヤリとする。フェイルも滅茶苦茶怒ってる!!!
「あぁ…、まさかあの時の妖精ですか?
これはこれは、驚きましたよ。そちらも随分とお元気そうで…。
この指輪、貴方でしたか……勝手に婚約者などと名乗るのはやめていただけますか?
ルイゼは僕の婚約者です。即刻、この下品な指輪をルイゼから外してください。」
「おやおや、下品な指輪とは失礼ですね。
女性の許しを得ず勝手に所有印を残す野蛮な種族だけには言われたくありません」
そう言ってニコニコと微笑んでいるフェイルだが、その目は一ミリも笑っておらず店内の気温がどんどん下がっていく。白い息が出始めたところで
「ちょっ!二人ともストップ!フェイル力抑えて!」
そう叫んだところで二人がハッ!と気づいたようにこちらを振り返る。あまりの寒さに自身の両腕をさすってなんとか暖を取る。
「申し訳ありませんルイゼ、あぁ…僕はまた力を……」
悔しげな顔をし、嘆くようにフェイルが呟くと足早に私の元まで来ると、着ていた夏用の薄手のジャケットを脱ぎ手早く私の肩にかける。
「どこか痛いところは?身体は大丈夫ですか?」
目線を合わせるようにかがんで心配そうな顔でこちらをのぞき込むフェイルから、大きく一歩離れる。
「大丈夫だからっ!!」
近すぎるんだよ!!!顔の良い男は皆距離感がバグっているのか!?ジャケットから、そして目の前の本人からも香、香水なのか何なのかともかく良い匂いにクラリとなりそうになりながら距離を取れば、フェイルが悲しそうな顔をする。
「ハンッ!自業自得ですね。
ルイゼから距離を取られるのも当然でしょ、自分の力をコントロールできない危険な妖精なんて人の身のルイゼには危険すぎる。
身の程をわきまえて指輪を外して去ってはどうです?」
アルシエルの怒涛の嫌味にフェイルの眉がピクリと痙攣するのを見て、再び繰り返しかねない状況に慌ててフェイルの後ろにいるアルシエルを睨みつけた。




