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22.薬指


 

左手を上げると、隣のアルシエルがビクリと肩を揺らす。


「なんで……何故わかったんです!?

それは人の目には見えないのに、まさか異種族の知り合いでも!?」


動揺したアルシエルの声色に、ハハハと乾いた笑いを浮かべる。


「そのまさかだよ、この指のせいで人間だと思ってたら異種族だった。なんて10年経ってから判明した知

り合いもいるんだから……。まぁ、だからと言って奴との付き合いは何もかわらないんだけどさ……」


 流石に相手が悪魔とは口が裂けても言えない。そして、フェイルの件も火種になりそうだから言わない方が得策だろう。面倒ごとはゴメンだ。


「この印を外してほしいんだけ「嫌です」」


 食い気味に断られ、なんだとぉー?と、アルシエルの顔を見れば、向こうも真剣な面持ちでこちらを見つめている。断固とした意志を感じる金色の目


「「………………。」」


 1分ほど無言で見つめ合うが、私が視線を外して盛大な溜息を吐きながら両手で顔を覆って両肘を膝に付くように俯く、ダメだ……人魚の綺麗すぎる顔は、人の姿でも引き込まれるように魅入ってしまう。あっぶねぇー。そう思っていると、隣から小さく「残念……」と呟くような声がした。


 コイツ!! わかってて!! と文句の一つでも言ってやろうとアルシエルの顔を見れば、それはそれは大変綺麗な笑顔でこちらを見つめており、思わず声が詰まる。


「ルイゼが何と言おうと僕はその印を消すつもりはありません。」


「私の意志関係なし!?」


「だって、そうしないとルイゼが他の奴らに掠め取られちゃうかもしれないじゃないですか、ルイゼはこんなにも可愛らしいのだから」


「私に向かって可愛いなんて奇特な事を言うのは君くらいなもんだよ……。」


 いや、もう一人いたな……。異種族は可愛いの概念が人間と違うのかもしれない。

今はそんな事はどうでもよい!


「だいたい私が少年に手を出すわけないでしょう。

スラム育ちの私でも一応、一般常識は持ち合わせてますから!それに君は良いところのお坊ちゃんでしょ?

こんな女と結婚だなんて、口走っただけでも家族が泣くよ?」


「そう言うルイゼも良いところのご家庭ご出身なのでは?」


「……どこをどう見たらそうなるのさ……」


「名前、もそうですけれど、気づいてませんか?最初は僕の事をアンタと呼んでいたのに、僕と話しているうちに君と呼ぶようになり、言葉遣いも徐々に丁寧になっている。

言葉の端々にも教養が窺える。教育とは無縁のスラム育ちの方とは到底思えません。」


本を読むのが好きだから、と言いかけたがそれもスラム育ちとは言い難いか……。出てきた言葉は


「会話が引っ張られただけだろ…気のせいだ…。

こんなのが良いとこのお嬢さんなわけないだろ。

名前もたまたまだよ、分不相応な名前だからルイゼと名乗ってる」


 何が教養があるだ。教養のある人間だったらもっと理路整然と旨い言い訳をするに決まってる。そう思いながら再び頭を抱える。話せば話すほど、墓穴を掘る気がする……。


「……そう言う事にしておきましょう。女性の過去を聞くのは失礼でしたね。

僕はどうにも、ルイゼの前では子供になってしまう……」


「いや、私からすれば十分まだ子供だから。」


そう言ってジト目を向ければ、アルシエルがムスッとした顔をする。


「ほら! そういうところ!」


 思わず吹き出して笑えば、アルシエルがこちらを愛おしそうに見つめてくる。子供と思っていたと思ったら、そうとは思えぬ妖艶な微笑みをする。その振り幅に思わず笑いが止まる。


「ルイゼの笑った顔、やっと見れました。」


 何でそんな心底嬉しそうな顔するんだよ、愛だのなんだのの話がなければ可愛い弟みたいな感じで仲良く友人として付き合って行けただろうに……。再びはぁーっとため息が漏れる。すると


「実は僕も聞きたいことが有るんです。」


 先程の和やかな声色からは想像できないほど急に冷淡な声がアルシエルから発せられて、思わず動きが止まる。先程までとはまるで別人と言わんばかりの冷たい目が私の右手を見つめている。


「なっ……何かな…?」



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