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20.人魚再び


 もそもそと布団の隙間から手を伸ばして時計を見れば6時半をさしている。


「もう朝か……仕事行くのめんどぉー」大あくびをしてベッドからもぞもぞと起き上がる。部屋の床に積んである本にぶつからないよう猫のように避けながら扉へと向かう。本棚がいっぱいになってしまい床のそこかしこに平積みをしているのだが、隣の部屋にも本が進出し始めている。


 いい加減、何とかしなきゃ……。そう覚醒しきらない頭で考えつつ、顔を洗う頃には忘れて明日の朝、同じことを考えるのが日課になりつつあるなー。と一人ごちりながら、洗面所へと向かう。顔を洗っている最中に徐々に思い出してくる昨日の怒涛の出来事に、夢なら良いのにと思わずにはいられないが右手にはまった指輪が現実だとご丁寧に教えてくれる。


 そして、キッチンにはクロックが置いていった羊皮紙……。昨晩、色々と考えてみたがこれ使うともれなく何かを生贄として差し出さなければならないんだよなと思い当たる。それは私の魂か、はたまた私の血とか別の何かか……。悪魔に願いを叶えてもらって私は幸せになれました!なんて古今東西聞いたことがない。なによりも、アルシエルとフェイルが漏れなく殺されるのだ。さすがの私もそこまで薄情者ではない。


 やはり自力で何とかするしかないのだ……。それにしても、クロックの名前……クロッケンバハード……どっかで聞いたことある気がするんだよな……。でも、悪魔の事調べてるってばれたら、それだけで警察にしょっ引かれるからな……。大体この羊皮紙も持っているのがばれたら、一発死刑間違いなし!深いため息をついて、冷蔵庫を開けた。




 薬屋の朝は早いが店じまいも早い。朝の8時から開店し、15時半くらいには閉店の準備をぼちぼちし始める。今日はそこそこ人が多かったなー、そんな事を考えながら仕入れのリストを確認しているとパーズが身支度をし始める。


「あれ?どっか行くの?」


パーズの顔を見れば、心底めんどくさそうな顔をしているパーズ。


「これから商店街の会合だよ、この辺にも観光客を呼び込みたいんだとさっ、裏通りはスラムだってのに何考えてんだかなー?

ってことで、閉店作業はよろしく頼むわー」


 そう言うと小上がりから降りいそいそと靴を履くと、店の扉をくぐって出ていくパーズに手を振る。


「行ってらー」


 そう声をかけると同時に締まる扉、それを見届けると再びリストに間違いがないか確認作業に戻る。それと同時に、扉が開く音がする。


「なんか忘れ物?」


 リストを見つめながら問うが返事がない。なんで?と思って、顔を上げれば扉の前には忘れようにも忘れられない顔……


「なっ……なんでここにいるの…アルシエル……」



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