15.後プロポーズ2度目!!
「……げっ……元気そうで何より……デス」
そう伝えるとフェイルが目を見開き、再び笑い出し、パーズなぞ腹を抱えて大笑いしている。どいつもこいつも人の気も知らないでぇぇぇ!! パーズに図られたのか!? フェイルから逃げるように、パーズのいるショーケースへ足早に歩み寄る。
持っていたコーヒー豆をショーケースにどさりとおいて、パーズをジト目で睨みつける。
「そう睨むなって、ガサツなお前も他人に気を遣う事があるんだな!」
「チッ……それで、フェイルは当時のお礼を言いにここに来たわけ?」
同じく笑い続けているフェイルを睨みつければ、笑い過ぎて出てきた涙をぬぐいながら「いえ」とこちらに向き直る。
「あの日の約束を果たそうと思ったのですが、その前に確かめたいことがあって……。ルイゼは私が両親と帰る直前に、貴方に何を話したか覚えていますか?」
フェイルに問われてその当時の事を思い返す。フェイルと話した記憶は一切ない。だって話せなかったような? ショーケースに寄りかかりながら首をかしげて考えていると、そう言えば耳元に来て何事か話していたそぶりをしていたが、全く聞き取れなかったのを思い出した。
「あぁ! 耳元に来て何か言ってたけど全然聞き取れなくて、でもニコニコしてたから、お礼か何か言われてるのかと思ってたけど、違ったの?」
「やはりあの時の言葉は通じてはいなかったんですね……。貴方が頷いていてくれたからてっきり……」
フェイルの口ぶりからすると、どうやらお礼とかではなかったらしい。では何だ?将来一緒にツーリングに行こうとか?
「あの時、貴方に言った言葉は『成人したら僕はあなたを迎えに行きます。その時、僕のお嫁さんになってくれますか?』と……」
少し照れたように笑うフェイルの言葉に思考が停止する。おっ……お嫁さん!? そんな事にホイホイ頷いていたのか私は!? あっ、でもほら子供のよくある約束だしね!
「あぁ……そうとは知らずに頷いて申し訳ない……。でもその、ね、昔の話だし……」
いや昔と言うほどでもない5年前か? まぁでも子供の話だし、若気の至りってやつでしょ、だから気にしないで! と続けようとしたのだが、フェイルが床に片膝をつく……。
まてまて! 本日二度目!!! そして私の右手を取ると
「改めて、ルイゼ……いえ、ルイーゼ、貴方に結婚を申し込ませてください。あの日、貴方と過ごした日々は私の中で忘れられないほど楽しい時間でした。あなたの笑顔がずっと忘れられなかった。どうか、私の妻になってください」
そう言うと右手の薬指に、エメラルド色の小さな石の嵌った銀色のリングがするりと通され、ピタリと指にはまる。
「へっ!?」
驚いて自分の手を見れば、薬指にエメラルドの石がキラキラと輝きを放っている。そしてフェイルの愛おしそうな目が、こちらに乞うように向けられている。
「えっ……えぇぇぇぇぇぇ!?」
「ワァー! ゴコンヤクオメデトウゴザイマス」
パチパチと乾いた拍手と、感情のこもっていないパーズの声が店に響く
「待って! 急すぎてそんなこと言われても! ってか!! 私、真当な生き方してきてないんで! フェイルは良いとこのお坊ちゃんでしょ!? 私みたいなのが受け入れられるわけないでしょ!」
フェイルの手から自分の右手を引き抜き、指輪を引き抜こうとするが……。
「え゛っ!? 外れない!!!?」




