12.再会
その学生の金色の目が驚きに目を見開く。別に人がいることにそんなに驚かなくとも、そう思いながら海の方に向き直り残りのカフェラテを飲み干す。するとパタパタと走り寄る気配に何事だよと再び後ろを振り向けば、先ほどの無表情とは打って変わって頬を高揚させ感動したような顔でこちらに走り寄ってくる。私の目の前でピタリと立ち止まり、潤んだ金色の瞳が私を見下ろす。
「何!? なんか用!?」
若干後ろに引きつつもそう問えば、
「やっと……やっと見つけました! もはや運命としか言えません! やはりあなたは僕の運命だったんだ!」
「いやいやいや人違い人違いお兄さん! 誰かと間違えてますよ! 初対面ですよね!」
なんなんだこのお坊ちゃん!!! 金持ち高校の制服を着た新手のロマンス詐欺かなんか!? だます相手選べよ!!! 学生の勢いにたまらず一歩下がれば、すぐさま一歩詰め寄る男子学生。
「僕の事、覚えてませんか……いや、そうですよね……。あの時とは姿かたちがまるで違いますし」
そうブツブツ言うと、コホンと咳払いをして学生が姿勢を正す。
「改めまして、僕の名前はアルシエル・クラッケンメールです。5年前、貴方に助けていただいた人魚です」
そう言って心底嬉しそうに微笑む学生……いま、人魚って……。
「え゛ぇぇぇぇぇぇぇ!? いやいやいや! サイズ! サイズ全然違うじゃん! 私よりも小さかったじゃん! 5年で!? いや、てか人魚なのに人間!? ファァッ!?」
思わず絶叫するというもの、なんせあの時の人魚少年がこんな美男子になって私の目の前に突然現れるんだから何の冗談だって話だ。信じられるか!!
「信じられないかもしれませんが、本当にあの時の人魚なんです。人魚は人と違って成長期は一気に体が大きくなるので。あと人の姿なのは人間になれる魔法薬があるんです。陸で学生をしているのは、人魚と人間の交流プログラムで数年前から交換留学が行われているからなんです。ところで、貴方のお名前を伺っても?」
アルシエルの前のめりな勢いに思わず仰け反りそうになりつつ、両手を前に出してドウドウと落ち着くように促しながらも
「あぁ……えぇ……ルイゼです。そっ、そっか……元気そうでよかった……よく私がわかったね」
タジタジになりながら更に一歩下がれば、再び詰め寄るアルシエル。
「ルイゼ! なんて愛らしい響き! やっとあなたの名前を聞けた! ずっと貴方を探していたんです! ルイゼと出会うまで僕の世界はずっと白黒の世界だった。何にも期待せずつまらない毎日、けれどあなたに出会ってすべてが変わったんです! 自分より体の大きな雄を次々と倒していくあなたの姿、人間は水中では呼吸ができないのに命がけで僕を助けてくれました。あの時、人の言葉を知らないせいであなたの名前すら聞くことのできなかった愚かな自分をどれ程呪ったことか!! だから決めていたんです! 陸でもしまたあなたに会えたその時は、まごうことなき僕の運命! 番になってくださいと申し込もうと心に決めていました!」
マシンガンのように話し続けるアルシエルの言葉の中に、突っ込みどころがいくつもあったが突っ込む間もなく話が終わる。
えっ……最後なんて?




