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結衣と月夜と不思議な四つの世界  作者: 氷華 桜梨
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お買い物

 数分後、私は大きな駅の前にいた。電車という存在は私がいた世界でも少なかったがあったがここまで綺麗な電車を見たのは人生の中で初めてだった。電車には車輪がなく、磁気力?というものを使って数ミリ浮かび走るようだ。

 アクアちゃんは色々と電車の仕組みについて教えてくれたが、初めて聞く単語が多すぎてほとんど理解できなかった。でも、アクアちゃんが嬉しそうに説明してくれたのでなかなか止めることができず、相槌を打って聞いてるアピールをした。電車の外見は薄い水色で、傷が一つも見当たらなかった。


 私のいた世界では傷がそこら中についとったのにな…

 しばらくこうして眺めていたかったが、アクアちゃんにもうすぐで出発なのと急かされ電車の中へと入った。


「うわぁ…」


 中に入ってみると、床には赤いモフモフのマットが敷かれていて、車内には色々なところに椅子が散らばっていて、座られていない椅子は一塊にされていた。

 フィオラさんによるとそれらの椅子は背もたれについている薄くて黒い機械に切符というものをかざすとその車内限定の個人の椅子として登録されるらしい。私も早速この緑色の切符をかざしてみた。すると、椅子は自力で私の後を追うように動き出した。


 うへへへ…面白い


「お姉ちゃん、こっちなの!」


 アクアちゃんに大声で言われ、他の乗客にとても不思議な顔をされた。そりゃそうだよね…顔、全然違うのにお姉ちゃんだなんて…ある人はとても可哀そうにと思われているのか優しく微笑まれた。

 もしかして、この人私が孤児だと思っているのかな?確かにアクアちゃんの服は私の体には少し小さくて裾があがっているけど…恥ずかしさを隠すため、俯いて早足でフィオラさんのところに行った。椅子!とおもって慌てて後ろを見ると、しっかりと私の後をついてきていてこの世界はやっぱりすごいと思った。


「結衣ちゃん、お腹すいているんじゃない?サンドウィッチがあるんだけどもしよかったら食べる?」


 お腹はすいていたけど、もうすぐ昼かなと思ったので我慢しようって思った。でも、お腹は正直で鳴ってしまったのでアクアちゃんに食べるの…と言われ、サンドウィッチを口にした。


「…おいしい!」


 そうでしょというようにアクアちゃんはうんうん頷いていた。


「ビクアニアモール駅…ビクアニアモール駅…」


 不思議な名前やな…うちの世界とは違う。あと、さっきから思っとったけど若干なまっとる。いや、こっちが標準なんやろうか。


「お姉ちゃん、この駅で降りるの」


 椅子を片付け、私とアクアちゃんとフィオラさんはこの場を後にした。


 電車を降りると、目の前には大きな建物が建っていて、思わず立ち止まってしまった。

 建物は43階まであるらしく、とてもすらっとしていた。それでいて、壁がまだ塗りたてのように傷一つとなく、大きくイルカの絵が描いてあった。


 イルカか、うちの好きな動物。お母さん、よくイルカが描かれた絵本、読んでくれてたっけ。懐かしいなぁ。本物は見たことがあらへんから見てみたいわ。


「お姉ちゃん…イルカ好きなの?」


 アクアちゃんは私の顔を覗いて言った。私がうん、そうなのと言うと、笑顔になると、今度見せてあげるのと言って、フィオラさんに今度行く約束を取り付けていた。フィオラさんはいいわよと言ったらしく、大はしゃぎしていた。


「じゃあ、行きますか!」


 フィオラさんを先頭に私とアクアちゃんは大きな建物の中に入っていった。

 外も明るかったが、中も大きな窓がたくさんあり、外の日の光が明るく照らしていた。日の光は、とても暖かく、私を優しく包み込んでくれるような感じがした。

 建物の中にはたくさんの色々なお店がいくつも並んでいて、私がきょろきょろと見まわしていると、突然床に影がおちた。なんだろうと思い、上を見上げるとクジラが宙を泳いでいた。私は、驚きのあまり、あんぐりと口を開けて通り過ぎていくのを目で追った。


 まさか、こんなところでクジラを見ることができるなんて…思ってもおらんかった。それにしても、大きかったな。絵本で見たんと同じやぁ。でも、クジラって海を泳ぐんやなかったっけ?パパ、クジラ好きやったよな…見せたかったな。


「あれは、クジラ号よ。この建物奥行きもあるから、ああやって乗客を端から端まで運んでるのよ」


 フィオラさんは私が乗りたそうにしているのを見て、帰るときに乗るから大丈夫よとウィンクした。私は見破られて、少し恥ずかしくなり、俯いた。


 アクアちゃんは、私とお買い物ということではしゃいでいて、私の手を引っ張り、色々なお店に案内してくれた。その中で私が気に入った服は、全体的に緑で白い花と深緑の草が刺繍されている可愛らしいワンピースだった。

 こじゃれたエプロンもついていて、その生地は光沢がある肌触りの良いものだった。丈は、膝がちょうど隠れるぐらいのもので、袖は七分袖で、ふわっとした感じだった。靴に選んだのは、濃い緑で、若干ヒールのついた服と対になる刺繍が施されているものだ。


「もう一着ぐらいは買っておかないとね…結衣ちゃん、私が選んでもいいかしら?」


 えっ、もう一着…

 今まで、一着で過ごしてきた私にとって二着目を買うとはとても驚くことだった。フィオラさんが私の服を選ぶことには特に何とも思わなかったので、連れて行かれるままに行った。そして、ようやく服が決まったというときにとても透る声が聞こえた。


「…あれ、お前んとこのお袋さんじゃねぇか?」


 ん?そういいながら近づいてくる二つの影の一人には見覚えがあった。

 コハクさん!?なんでここにおるん?


「あら、ハンク君じゃない!」


 フィオラさんはコハクさんの隣にいた男の子を見るとそう声をあげた。そして、ハンク君と呼ばれた男の子は小さく会釈した。


「コハク、ここに来るんだったら私たちを誘ったらよかったのに…結衣ちゃんもいることだし」

「お母様それより、自己紹介が必要なのでは」


 ハンク君は私をじろじろと奇妙なものを見るように驚いた眼をしていた。


「初めまして、麻井結衣です!よろしくお願いします!」


 見られて恥ずかしかったので、勢いよく頭を下げた。すると、上から降ってきたのは動揺した声だった。


「…か、可愛い」


 私は驚いて顔をあげると、そこには顔を真っ赤に染めたハンク君がいた。

 暑いのかなと思い、みんなを見回すと、特に暑そうな様子もなく、ただひたすらににやにやとしていた。


「…ハンク、お前早すぎ」

「なっ、ちげぇってば!す、す、すいません結衣さん、別にそういうことではなくてですね…」


 話についていけず、ただハンク君が真っ赤になっているのが熱中症ではないかと心配していた。


「結衣さん、こいつはもとからこんなのですので心配はいりませんよ」

「お…お前」


 私は熱中症じゃなくてよかったと思いながら、横でいつにも増して真剣に考えているフィオラさんの方を見た。


「……よし、決めた!結衣ちゃん、学校行ってみない?」


 学校…名前は知っとるけど行ったことないな。でも、パパ、学校はお金持ちしか行けないって言っとったよな。ただでさえ、服買うてもろうたのに。これ以上迷惑はかけてられん。


「…これ以上迷惑はかけたくないので遠慮しておきます」


 私はフィオラさんに丁寧にお断りすると、フィオラさんはにこっと笑って私の肩に手をかけた。


「お金のことだったら大丈夫よ、蓄えはあるんだから。それと、この世界では学校行くのにお金がかからないの」


 えっ、そうなん…お金がかからんて…

 アクアちゃんは私の腕をちょっと引っ張って私の方を覗いていた。その大きな藍色の目を輝かせて、私に学校へ行って欲しいと訴えていた。


「だから、お金のこととかは全然大丈夫よ!せっかくだから、行ってみたら」


 私は二人に言われ、拒否できずに学校へ行くことになってしまった。

 申し訳ないと思うと同時に、学校とはどんなところだろうかと期待を膨らませ、学校へ行くのが楽しみになってきていた。


「じゃあ、制服を新調しないとね。確か、ここの30階にあったはず」

「では、お母様ここで失礼します」

「えぇ…行っちゃうの?せっかくだからついてこれば?ハンク君もついていきたそうにしているじゃない」


 フィオラさんに言われたハンク君は、コハクさんに睨まれて、体を小さくしていた。コハクさんはフィオラさんに向き合うと、分かりましたと一言言ってみんなで30階に行くことになった。

 30階に向かう途中のエレベーターという乗り物の中で私は上機嫌になっていた。今までこんなに高いところに行ったことがなかったので、とても新鮮だった。でも、段々と高くなってくるにつれ、もしこのエレベーターが落ちたらと考え怖くなってきた。


 キチンッ


「さぁ、着いたわよ」


 そう、フィオラさんに言われた時にはもうへとへとになっていた。ただ乗るだけだったのに、変な怖い想像をしてしまったせいだと後々後悔した。途中から、さりげなくコハクさんが私の手の上に重ねてくれたおかげでほんの少しは気持ちが和らいだが。


「結衣ちゃん、お店に着いたわよ」


 上を見ると、看板があり、そこにはヴェルエール学園制服屋と書かれてあった。フィオラさんに続いてお店に入ると、可愛い女の人とかっこいい男の人がいた。可愛い女の人は私たちの方によってきてお辞儀をした。


「ご来店ありがとうございます。今日はどういったご用件で?」

「今日は、この子の制服を新調したいの。お願いできるかしら?」

「まぁ、なんて可愛らしい女の子ですこと。制服は何色がいいですか?」


 私に突然話を振られ、戸惑っていると、コハクさんが説明してくれた。


「結衣さん、紺青、鉄色、葡萄色、似紫があります。紺青とは紺色を少し暗くしたようなもので、鉄色は濃い緑って感じですね。葡萄色は赤色に黒を混ぜたようなとても濃い赤です。似紫は同じく紫を濃くしたものですね」


 四色か…何色が似合うかな。やっぱり、一番似合いそうな鉄色かな…名前は微妙だけど。


「鉄色でお願いします」

「結衣ちゃん、緑似合うもんね」


 フィオラさんは私に微笑むと、私を女の人に預けた。女の人は私を小さな個室に連れて行くと、腰についているかくしから、紐を取り出すと私の腕、身長、胴回りなどを測り始めた。私は女の人の言われるままに腕を上げ下げした。測り終えると私はフィオラさんの方に返した。

 そして数分たつと、女の人は私たちの方に駆け寄り言った。


「……できました。どうでしょうか?」


 フィオラさんは出来立ての制服を手で触ってみて、はいと返事をするとそれは、奇麗な包装紙にくるまれ、箱の中に入れられた。頑張って、制服を見ようとしたが、すぐに箱の中に入れられてしまったので、見る暇もなかった。


 てか、できるのはやっ!私も裁縫は得意やけど、ここまで早くはできん。

 その後、オプションでいろいろな色の胸元に着けるリボンなどの飾りを勧められたが、浅緑のリボンのみを買って、会計となった。


「全部で48000ミルノンとなります」


 …高いのか分からん。私の世界ではエンクやったし…


「あら、意外と安いのね。アクアの時はもっとかかったのに」


 フィオラさんはふふっと笑ってアクアちゃんの方を向いた。アクアちゃんはそっぽを向き聞いていなかったオーラを出していた。

 お店を後にするとき、私は可愛い女の人の名前が気になって、名札を見てみた。そこにはソイレと書かれていた。

 ソイレさんか、可愛い人やったな。


「フィオラさん、ありがとうございます」

「そんなっ、どういたしまして!いいわね、ありがとうって言われるの」

「アクア?結衣ちゃんを見習いましょうね」


 フィオラさんはアクアちゃんに目が笑っていない笑顔で言った。アクアちゃんは震えあがり、こ、今度からと言うと私の腕にしがみついた。

 アクアちゃん…しっかりしないと。

 完全に怯えているアクアちゃんを見て、ハンク君は頭を撫でて、そうだな、今度からな!と言った。

 …ハンク君、お父さんみたい。妹か弟でもいるんかな?めっちゃ扱いに慣れとる。

桜梨です!

学校に行くことになりました♪

次回は結衣とカピ目線です。

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