サラダ
リリリリ… ばしっ
「ふわぁ…眠い…あさ…あさ…」
抱き枕にしている布団にしがみついて頭をこすりつける。まだ、寝足りない。
アラームは鳴ったがまだ起きれない。少し頭を持ち上げてみるが、すぐに疲れてぼふんと枕に落っこちた。朝ご飯つくらなきゃいけないのになぁ…
そのままもぞもぞと五分くらいベットに張り付いていたが、さすがにカイルが怒りそうだったのでゆっくりと起き上がる。
ふらふらしながらスリッパをはき、眠たい顔のままリビングに出た。キッチンの冷蔵庫を開けて、そのままぼーっと中を見つめる。
何があるかなぁ…
とりあえず卵とウィンナーを出して、炒める。この二つを出しておけば、朝ご飯はよっぽど大丈夫だ。たまにカイルがフレンチトーストなんて洒落たものを出してくるが、僕に朝からそんなことをする気力はない。
レタスをちぎりながらカーテンのほうを見つめていると、いつの間にか出していた大きいボウルの中に、小さくちぎれたレタスが山盛りになっていた。横を見ると、丸々一玉あったレタスが芯だけ残してなくなっている。
「あ…。」
こんなに、食べれないかもしれない。
ボウルにいっぱいの緑。全部、ちぎられて細かくなってる。これはどうすればいいんだろう…
ボウルをもってどうしようかとぼーっと考えていると、バシッと頭をはたかれた。
「やりすぎだろ。どんだけ食うんだよ。」
カイルが心底呆れた顔をして突っ立っていた。僕と違って、制服に着替え済み。顔も洗って、髪型もばっちりだ。その髪の毛をわしゃわしゃして崩してやりたいと思いながらもつっけんどんないい口で反論する。
「…じゃあ、カイルが朝ご飯つくればいい。」
「それだと昼まで起きてこないだろ、月夜は。」
う。僕は夜遅くまで働いてはいるけど、朝は起きないと市場は閉まるし図書館に行く暇もなくなる。昼寝はしているから睡眠時間は足りているはずなのだ。
「そう、だけど…」
そこで会話は終わり、両手で持ったままのボウルを二人で眺める。ずっと見てると、最初に思ってたより少なく見えてきた。うん。なんか食べれる気がしてきた。食べようかな。
カイルをキッチンから追い出して朝ご飯づくりを再開させる。目も覚めてきた。
二つのプレートにウィンナーと卵を半分ずつよそって、片方にだけパンとちぎったレタスをバランスよくのせてオリーブオイルと塩をかけた。もう片方はそのままでさっきのボウルの中身に塩をかける。
プレート二つとボウルを食卓におくと、ほんとにお前それ食べんのかとカイルに笑われた。いいだろ別にと返し、食べ始める。カイルはいつも通りさっさと食べ終わり、じゃあなと言って出て行った。
もしゃもしゃもしゃ
サラダ。
ただひたすらにサラダ。
塩味にちょっと飽きて、途中からドレッシングをかけた。絶望的に多いレタスたちを半分くらい食べ終わって気づく。あれ、なんか、足りないような…
「なんだろう、わかる?キュイ?」
ぱっと振り向くとキュイが…いない。
そうだ。朝からキュイがいなかったんだ。足りないのはキュイだ。
気づくと急に心配になって、ボウルを机に置いたままキュイを探し始めた。テーブルの下、いない。カーテンの裏、いない。キッチンの棚のなか、いない。ごみ箱と壁の隙間、いない。洗面所の石鹸置きの上…いない。
キュイがよくいるところをまわってみても、見つからない。そもそもキュイは名前を呼んだら出てきてくれるはずだ。あいつは頭がいいから、僕がこんなに探してるのに気づかないはずが…
「じゃあ、家の中には、いない…のかな。」
そう思うと段々怖くなってきた。外に行ったらキュイなんて小さいはりねずみはカラス(みたいな悪魔)に、つつかれるかもしれない。もしかしたらどっかに連れてかれるかも。いや、ぷちっと殺されちゃったら…
血まみれになって針を抜かれてしまったキュイを想像して、やめた。ここの世界の人はそういうことを平気でやってのけるからこそ悪魔(闇の世界)だ。
キュイを見つけるため、僕は急いで着替えて靴を履き、外に飛び出した。
氷華です
キュイを探します
次はリラ目線です




