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結衣と月夜と不思議な四つの世界  作者: 氷華 桜梨
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おいしいスープ

「…というわけなんだけど。かぐやさん、理由わかる?」

「うーん。そうだね…」


かぐやさんが腕を組んで考え始めた。目の前には件の青黒いスープ。


「これつくるとき、何考えてた?」

「特に…あ、カイルが作ったんだっけ?」


カイルが自分が作ったことにすると言っていたのを思い出し、カイルのせいにする。かぐやさんは困惑気味だ。


「え、どっちが作ったの?」


腕を組んだカイルが一言。


「月夜だ。」


さっきの約束の意味は…裏切者め。


「そう。」


かぐやさんがまた考え始める。

おのれカイル。明日はカイルの嫌いなカエルのソテーを食べさせてやる。


「つきやさんって、魔力何色?」

「えっと、見たことないけど…何色?見える?」


かぐやさんに見えるように少しかがむと、かぐやさんが僕の肩に手を置いて目をよく見ようと近づいてきた。…近い。金色の瞳が間近できらめき、少し開いた口は艶やかに光っている。ちょっとこれは、いろいろと我慢が…


耳が赤くなるのを感じながら、少し、かぐやさんをせかすように聞く。


「見えた?」

「ん…うすーく。たぶん青紫だと思うけど…もとは灰色だよね?どっちも前より薄くなってる気がする」


至近距離のまま話すかぐやさん。…カイル笑うな、あとで覚えてろよ。

かぐやさんからただようふんわりと甘い香りが僕の鼻をくすぐる。くらくらしそうだ。


「そう?…あの、かぐやさん。そろそろ離れたほうがいいんじゃない?いや、このままがいいならいいけど」

「え」


かぐやさんが目を丸くする。言われて気づいたのか、僕との顔の近さに慌てて離れた。黒く光る髪が揺れる…ちょっともったいないことしたかな。


僕が少し後悔してるうちにかぐやさんは真っ赤になってしゃがみこんでしまっていた。にやにやしたカイルが立たせてあげろよと言いたげに縮こまっているかぐやさんを指差す。…ほんとに覚えてろよ。

優しい声を意識して話しかける。


「かぐやさん。ごめん。立てる?スープの理由、わかった?」


手を差し伸べて聞くと、真っ赤な顔で睨まれた。かわいい。僕はかぐやさんを抱きしめてしまいたいのを抑えつつ、おずおずと手を取ってくれたかぐやさんを立ち上がらせる。かぐやさんは顔を赤くしたままこちらを見てくれない。


「たぶん、つきやさんの、魔力が入ったんだと、思う。」


そっぽを向いたままかぐやさんが言う。


「きっと、魔力の事、考えてた。つきやさん、気にしてたし。それで、呼ばれたと思った魔力が、スープに入っていった。これ食べたら、きっと魔力、回復する。寝れば、もどると思うけど、こっちのが、早い。」


なんだか片言になってしまったかぐやさんに、そうなっていることを指摘したほうがいいのか悪いのか考えつつ、質問する。


「それは僕じゃないと回復しないの?それともカイルとかが食べても大丈夫なのかな。」

「たぶん、大丈夫。人から、離れてしまったら、ただの色付き魔力。誰でも、回復できる。」

「だから青黒かったのか。元からもってた灰色のと、こっちきて作られるようになった青紫が混ざったんだな。よかったな、月夜。魔力入りスープならきっと食べても大丈夫だぞ。」

「え、僕灰色の魔力も持ってたの?」

「誰でも少しはもってるだろ?最初っから。それが目の色を決めてるって学校で習わなかったか?」

「ごめん。僕学校行けてないから。貧乏すぎて」

「…悪かった。」

「いや、気にしないで。」


そんなやり取りをしてるうちに立ち直ったらしいかぐやさんが置いてあったお椀にスープをつぎ始めた。青黒いものがお椀いっぱいになったところでかぐやさんが僕に手渡してくれる。


「つきやさん。これ飲まないと魔力が少なくなりすぎて倒れるよ。どうぞ。」

「え、ありがとう。かぐやさん。」


ちょっとどきどきしながらお椀を受け取る。かぐやさんと結婚したら、毎日こうやってご飯よそってくれるのかな…

そんな妄想をしながら、スープを飲む。


「あ、普通の味。カイルも飲む?」

「お前の魔力だろ?それだけで足りるのか?」

「元が少なかったから、少ないのに慣れてるんだよ。かぐやさん、お昼はまだ?一緒に食べない?」

「え いいの?」

「僕の魔力入りでよければ、どうぞ。あ、パンとサラダとチーズもあるよ」

「ありがとう…じゃあ、ご相伴にあずかります」

「うん」


カイルがまたにやにやしている…わかってるよ。そのうち告白もするから、口挟まないでくれ。僕とカイルが向かい合って座り、かぐやさんは僕の隣の椅子に座る。

隣に座ってくれた。うれしくなって、あまりじろじろ見ないようにしながらもかぐやさんのほうに注意を向けていたら、かぐやさんの小さな声が聞こえてきた。


「つきやさんの、まりょく」


小さくつぶやいて、かぐやさんがゆっくりとスープを飲んだ…隣にいる僕が、ぎりぎり聞こえるか聞こえないかの大きさ。


ばっちり聞いてしまった。これは脈ありだろうか。いやでも図書館で会うといつも冷たいし…ああ、もういろいろたまんない。唾が溜まってきて、スープに紛らわせてごくんと嚥下した。

そんな僕には気づかず、かぐやさんは楽しそうにカイルと話している。好きな本の話題なのか、とても生き生きとして話すかぐやさん。…僕だけを見てくれればいいのに


当分叶いそうにない…下手したら一生叶わないこの想いを抱えながら僕は二人の会話に入っていった。


氷華です。

みんなで楽しくお昼を食べました。

次のはちょっとだけ長めです。シルヴィさん出てきます。

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