変なスープ
カイルは困惑していた。なぜなら彼の同居人…月夜が、こんな失敗をするなんて初めてだったから。
「月夜…どうした」「それ僕が聞きたい」
沈黙が場を支配する。もう一度俺は口を開いた。
「これ、スープだよな」「それも僕が一番聞きたい」
目の前の鍋には青黒い『何か』。どうやっても今日の献立であったはずのさかなスープには見えない。
「なんかいつもと同じように作ったらこうなっ「なるわけないだろ」うん。だよね」
使った魚は確かに黒かった。だが青はどこから来た。確かに魚の鱗と皮は黒だったが、身は白かったはずだ。こんな色になるはずがない。
「とりあえず食べてみ「これ食えるのか?」知らないけど」
めんどくさそうに月夜が続ける。
「いやでも食べてみないとわかんないだろ?僕は毒は入れてないし、いつもと違うこともしてない。きっと色が違うだけでおいしいよ」
「…それはお前が試してみればいいんじゃないのか?」
「やだなぁカイル。僕は人間だよ?変なもの食べたらおなか壊すかもしれない。カイルはほとんど悪魔なんだから大丈夫。最近魔力も増えたみたいだし。いけるよ。」
けらけらと笑う月夜。
「魔力増えたのはお前もだろ。この世界のもの食べて俺の魔力に常に当たってたらその辺の悪魔と同じくらいになったって…」
「カイルは姫様…なんて言ったっけ、セリアナ様?の護衛隊長なんでしょ?確実に僕より強いじゃん。」
まあ、確かに俺のが強い。…俺が食べなきゃいけないのか。
カイルは魔力が強ければ胃腸が強いとは限らないという単純なことに気づかない。
「…せめてこれがなんなのかわかんないのか?」
「作った僕にわからなくて、誰かわかる人いるの?まず、僕知り合いとかあんまりいないんだけど。」
むう、と考えて、図書館のカウンターで一人本を読む彼女を思い出した。
「…かぐやは。」
その名前を出した瞬間。月夜がうろたえ始める。…かぐやの前ではちゃんとしてるんだよな?こいつ。好きなんだろ?
彼女が好きだと月夜が話してくれたのはつい最近の事だ。俺も信頼されてきたんだなとうれしくなったが、ただ単に彼女に手を出すなという牽制でしかないと言われてしまった。曰く、「シルヴィさんとは別れちゃったみたいだからね。かぐやさんのかわいさに惹かれちゃわないように言っとかなきゃでしょ?」だそうだ。シルヴィの名前なんて言ったっけな…
月夜がよくわからない言い訳を並べ始める。
「かぐやさんは…こんなことで呼ぶのは気が引けるというか…その、ちょっと緊張するというか…あの、とりあえずカイル食べてみない?」
とりあえず俺に押し付けたい月夜。
「てめぇの恋心なんざどうでもいいんだよ。気持ちわりぃ。あいつは本たくさん読んでるんだからいろんなこと知ってるだろ?わかるかもしれねぇじゃん。このグロい色したスープの理由も」
「それじゃかっこつかないだろ!?僕が作ったんだけどなんて言えないからな!」
「じゃあ俺が作ったことにしておいてやるから」
「それならいいよ」「早いな」
それじゃあ呼んできて、いや、やっぱり僕が呼びに行くといって月夜が部屋に戻る。どうせ着替えるんだろう。かっこつけたがりが。
「はあ。なんでこんなことになるんだ」
でも、いやじゃない。こんなバカみたいな会話も、楽しい。
シルヴィがいなくなって寂しかった心が埋まっていく。あとは新しい恋人でもつくれば…
それでもカイルの魔力は、元の燃え上がる炎ような赤色には戻ってくれそうになかった。
氷華です。
ただ月夜とカイルが会話してるだけの回
もう一回、かぐや入りで続きます




