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結衣と月夜と不思議な四つの世界  作者: 氷華 桜梨
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朝とキュイと夢のたべもの

『結衣。月夜。ご飯ができたわよ。』

『わぁい。今日は何?』

『僕、コップ並べるよ。いい匂いだね』

『今日は――よ』

『やったぁ!ゆいそれ大好き!』

『ごちそうだね』

『今日は結衣の誕生日だからな。お父さんも手伝ってごちそうにしたぞ』

『そうよ。お父さんはこのお肉を切ってくれたんだから。』

『ありがとう!ゆい、うれしい!』

『あ、ゆい。僕、ゆいにプレゼントがあるんだ。』

『ほんと?おにいちゃん。何かなぁ』

『はい。開けてみて』

『うん…わあ!かわいい!ありがとう!おにいちゃん』


満面の笑みのゆい。一緒に笑ってる母さんと父さん。僕も笑ってる。

なんて幸せな…幸せすぎて、涙が出そうだ。

目覚ましが鳴る。



「めずらしい夢…」


こんなに昔の事を夢で見るなんて。

あの時は楽しかったな。母さんもいたし。みんな元気かな。


「おい。月夜!寝坊すんなよ!今日月夜の番だろ!」


うーん朝ご飯。確かに今日は僕の番。目覚ましが鳴ったのは、さっき、な気がするけど。寝坊ということはまた寝てしまったのだろう。ぼーっとした頭で聞く。


「え うそ。いま何時?」「8時だボケ!今日は飯なしか…」「ええ!作るよまって!8時半にでるんでしょ?」「そうだけど。まだ俺着替えてねぇし。」「急ぐ!まってて!」


慌ててベットから降り、キッチンに向かう。パンは…ある。ハムは…ある。バターが…ないけどジャムはある。

…とりあえず全部出すか。

パンを軽く焼き直し、真ん中を割ってハムをはさんだ。冷蔵庫にちょこっと残っていたきゅうりもパンのおさらに載せておく。もう一個パンを置いて、ジャムの瓶と一緒にダイニングテーブルに出した。着替えたカイルが席に着く。


「…手抜き感はんばねぇ」

「ごめん。卵焼いてる時間はなかった。」

「いいよ。食えるだけで。…いただきます」


カイルがものすごい速さでパンを食べていく。コップに水を入れて出し、自分のパンを焼く。焼けたところでカイルが食べ終わった。


「ごちそーさん。じゃあな。」

「いってらっしゃーい」


カイルがあわただしく出ていく。なんだか申し訳ないな。夜ご飯はカイルの好きなスペアリブにしよう。となると、市場に行かなきゃだな。今日はかぐやさんのところに行っている暇はなさそうだ。

もそもそとご飯を食べる。


キュイにはブルーベリーを食べさせておいた。このはりねずみは闇の世界産だからかなんでもよく食べる。一回食べれるのか気になってわさびを食べさせてみたら、部屋の隅っこから動かなくなってしまったけど。あの時は大変だった。何を言ってもこっちに来てくれないし、触ろうとしたら渾身の針攻撃を受けた。針も小さいからそんなには痛くないけど無理強いしてはいけないと思い、ブルーベリーをそばに置いてそっとしておいたら20分後ぐらいに食べてこっちに来てくれた。


そういうわけで、キュイはブルーベリーが好きだと思う。たまに果物屋さんにいくとブルーベリーの前でアピールしてくる。

はりねずみの、アピール。なんだそれは、という感じだが、みればねだられているのがよくわかる。

ゆらゆらするのだ。こっちを見ながら。ついつい買ってあげてしまうのは僕だけではないはずだ。

食べ終わった僕とキュイは、食器を下げて洗う。僕が洗って、その上にキュイが乗ったやつだけもう一回洗うのだ。最初は邪魔だなと思っていたが、キュイが乗っていたのにケチャップが残っているのを見てから、二人で一緒に洗うようにしている。見やすいように広げておいたお皿の間をキュイが歩き回る。今日は全部綺麗だったみたいだ。


本当にはりねずみだよな。こいつ。ちょっと怪しくないか?


お皿が片付いたら市場に行くために着替える。そのへんのズボンとTシャツをきて、パーカーを羽織った。

戸締りを確認したら、市場に向かう。今日も市場はにぎわっているようだった。

色とりどりの果物、魚、お菓子が並ぶ中を歩いていく。お目当ての肉屋は相変わらず人が少なかった。


「お兄さん。スペアリブをください」

「…てめぇか。どれぐらいだ」

「男二人分」

「かわらんな。むさい暮らしだ」

「しょうがないですよ、二人暮らしだし」

「…誤解を生むぞ、その言い方は。そら、金払え」

「言われずとも…はい、これでいいですか?」

「ああ…またこい」


太い牙の覗いた口を少し笑みの形にして、言う。店をやるにしては愛想がなさ過ぎてここにはあまり人が来ない。僕は人を避けてここに通っていたら覚えられてしまったから、いつもちょっと話をしながら肉を買っていく。

重い肉を持って、肉の付け合わせになるものを買っていく。またライチを買おうと果物屋さんによったら、キュイが肩からとびおりて赤色の木の実の前でゆらゆらし始めた。うるうるの目をこちらに向けている。…しょうがない。


「お姉さん。ライチとこの木の実ください」

「あいよ。かわいいペットだね。はりねずみかい?」

「たぶんそうです。拾ったんで、よくはわかりません」

「そうかい…はいこれね」

「これで足りますか?」

「ああ。計算が早いね。まいど。はりねずみの子が気にしてたもう一つの木の実もおまけで入れといたからね」

「ありがとうございます」


肌が黒く、黒い目が吊り上がったおば…お姉さんが笑って手を振ってくれた。いい悪魔ひとなんだろうけど、笑うと怖いなと思いながら小さく振りかえし、家に向かう。

キュイが肩のところで満足げに鼻をすんすんしているのがわかった。

…今日の夢に出てきた――も、また今度作ろうかな


氷華です

キュイって何なんでしょうね

次は別視点です

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