可愛いあの子
「今日もいこうか、キュイ」
目指すはかぐやさんのいる図書館。一回知らずに休館日の火曜日に行ってしまってから、ちゃんと火曜日以外の日にいっている。今日は水曜日。前行ったのが土曜日だから、4日ぶりだ。
見つけづらい小さな道を行き、しっかりしたつくりの扉を開ける。
「おはよう。かぐやさん」
「あ、つきやさん。おはよう」
首飾りをいじりながら本を読んでいたかぐやさんが顔をあげて微笑む。うん。今日もかわいい。
「何読んでるの?」
「これはね…」
かぐやさんは嬉しそうに今読んでいる本の内容を話してくれる。一生懸命見どころ(読みどころ?)を語ってくれているが、僕はかぐやさんの顔ばっかり眺めてしまう。
かぐやさんはカウンターに座っていて、僕はその前に立っているから少し上目遣いで、楽しそうに本を抱えて話してくれている。たまに月夜さんって僕の事を呼ぶのが本当にかわいい。
でもかぐやさんはたまにすごくわざとらしい笑顔をする時がある。最初は全然気が付かなかったけど、最近ちょっと違いが分かるようになってきて、その顔をされるとちょっと悲しい。まだ僕に気を許してくれていない証拠を突き付けられてるみたいで、先は長いと嘆息する。
そうしてるうちにかぐやさんは話し終わったみたいで、満足げにふぅっと息をついた。
でも何かに気づいたように悲しそうな顔で下を向いた。
「そんな感じの本。面白いよ」
…そんな顔で言わないでよ。楽しそうなかぐやさんを見に、図書館まで来ているのに。
「そっか」
ちょっと違和感のある笑顔。なにか隠してるのかな。僕には…言ってくれないか。
さっきまでうれしそうだったのに話し終わったかぐやさんの顔は暗い。本人はきっと笑顔でいるつもりなんだろうけど、最近やわらかくなってきたかぐやさんの表情はさみしさを少し漂わせている。白い十字路で聞いたかぐやさんの声を思い出した。
…僕はこの子がたくさん笑えるように、この大好きな女の子が幸せを感じられるように、したい。呪いの言葉なんか忘れちゃうようにしたい。
ふっと手が伸びる。かぐやさんの本を抱えたままの小さな手に触れた。さらさらしてて、気持ちいい。
「えっと、どう、したの?」
かぐやさんがちょっと驚きながら僕を見る。頬が少し桃色に色づいて、見つめていた金色の視線が恥ずかしそうに少しはずれて、僕の手に移る。
…なんてかわいいんだ。抱きしめてしまいたい。でもさすがにそんなことしたら嫌われちゃいそうだから、我慢。
ああそっか、理由、ね。なんでだろう。
「ん…触ってみたくなった」
理由が特に思いつかなくて、そう呟いてみる。かぐやさんの耳が少し赤い。
何か言いたげに開いた唇は、何も言わずにつぐんでしまう。
「その本、借りていい?読み終わった?」
かぐやさんの好きなものを読みたくて、聞いてみると
「いい、よ。読むのもう二回目だから」
そういって僕の手から逃げるように貸出手続きを始める。…いやだったかな
「ごめんね」
言葉を落とすと
「なんで?」
と、問い返される。あんまり怒ってないみたい。
「いや、怒ってないならいいよ」
「そう」
そっけなく返されたが、つながる会話がうれしい。
手渡された本をキュイのバックに入れて、キュイは肩に乗せる。そのまま頭までのぼったキュイに行こうか、と声をかけ、かぐやさんにじゃあと言いつつ、扉を閉める。
歩きながら頭のてっぺんに乗ったキュイを撫でる。あ キュイが乗ったままあいさつしちゃったけど、ちょっとまぬけだったかな。
はりねずみを頭にのせて、よう。とあいさつするカイルを想像する…だめだ、すごいダサい。
失敗したなぁ、外に出てからバックから出せばよかった。次から気をつけよ。
途中にある果物屋さんでライチを一袋買った。カイルが好きだから僕も食べてみたらはまってしまい、最近よく買うのだ。ひとつ剥いて口に放り込む。甘い。
「かぐやさんライチ好きかなぁ」
種をぷっと出しながら思う。
もうすぐ2時だ。僕はいつもこのくらいの時間から寝る。バーの仕事は夜だから、昼寝ないと寝る時がないのだ。
考えていると眠くなってきた。ふわぁっと大きなあくびをしつつ、家を目指して歩いていく。
家まで来るとさっさとかぎを開けて、一直線にベットに向かう。ぽふんと寝転がるとキュイがサイドテーブルにある自分専用の小箱ベットにもそもそと歩いていくのが見えた。ふかふかの専用タオルの上にキュイがたどり着いたのを確認して目を閉じる。
枕元にある目覚ましに起こされるまで、あと3時間。
氷華です。
かぐやさんのかわいさを語る回でした。
次は桜梨の番です




