表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
366/369

366:戦いの果てに

次回はエンディングを予定しております。

ここまでお付き合い出来たことを、嬉しく感じております。


追記:出来れば感想を……。最後で構いませんので(笑)

エンディングの後は、後日談を1~2話くらい書く予定です。

それがなくなったら、本当の終わりです。

 『聖王都』前の変異は一段落した。

結果だけ見れば、『聖王国』兵の半壊。各所に兵と食人鬼グールむくろが転がっていた。

第三者による襲撃とも言えるこの事態に、『聖王国』側だけが被害を被っていた。

嬉々として最前線に向かうフレア、その後をリュージが追った。


「おい、おっさん。何か言いたい事があるんじゃないか?」

「し、知らん。コロナという女性など知らん!」

「あの、フレアさん。その辺で……」

「あ゛あん? 誰だよ、お前!」


 目当ての男を確保したフレアは、襟首えりくびを掴んで物理的に吊るし上げている。

そんなフレアを止めたのはペインだった。隣にはベルグとラフィーナが控えていて、出来れば手を止めて欲しいようだった。

ゆっくり追いついたリュージが、背後からフレアの頭に向かってチョップをお見舞いする。

ギロリと振り返ったフレアはニヤリと笑っていても、はらわたが煮えくりかえっているようだ。


「とりあえず、その人を下ろそうよ」

「リュージ、邪魔をするのか?」

「ここは他国。そして、フレアは冒険者」

「リュージさん。今更捕まえたりは出来ませんよ」


 ペインが振り返った先には、国のトップであるジェイルディックが捕縛されていた。

この場の責任者はペインが代行するようで、「民を見捨てた国は、国ではありません」と深々と頭を下げてきた。


「自分は国の代表ではないですよ」

「そうですね……。ただここで、マザーを呼びつけるようなことは出来ません」

「少しは考えてんだな。で、このおっさん貰っても良いか?」

「現在は残務処理で忙しいので、私闘まで国は関与しません」

「そんな、ペインさま!」

「もし隠していることがあるなら、早めに話すことをお勧めします」


 元留学生達三人は、深々と頭を下げて処理を進めていく。

最後まで口を割らなかった男については、後でペインが責任を持って追求することでフレアは納得した。

王国から来た全員は、一度リュージが作った温室に戻り帰り方を検討する。

そこで注目されたのは、やはりエルフの長老だった。


 リュージの問いかけに、ゲートの魔法が使えることがあっさり分かった。

ただゲートを使うのは最初で最後にしたいようで、この魔法を使えることは秘密にするらしい。

アキラはローランドの義理の親戚筋に当たるが、エルフの長老が使えることは問題になるからだ。

マザーが責任を持って王家に約束させると言うと、全員がGR農場に帰還し、そのすぐ後に温室が消滅した。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ロメロの腕に支えられているメルナールが、ある一点を指差した。

それは真っ黒い球体。それが縦方面に伸びると、ムニーっと人が鋳型に嵌ったように、ある人物を模して出てきた。


「アキラ……くん?」

「レイルドぉ!」

「はい、ロメロさま」

「私は大丈夫です。ミーシャさんを守ってあげて」


 レイルドに続いてロメロは立ち上がり、肩を並べて遅れて剣を抜き放つ。

訓練の時は二人が前線に出るだけで、作戦は失敗だと言われていた。

しかし残るのはメルナールとミーシャしかいない。ここで立ち上がらなければ、男ではなかった。


「おもしれぇ。アキラ、一対一で勝負だ!」

「ロメロさま、お先に失礼します」

「なっ、待てよ!」


 レイルドはまだ距離が遠い真っ黒なアキラに向かって、跳躍で距離を詰めて胴薙ぎに一閃する。

あまりのあっけなさに駆け抜けた後、つい背後を確認してしまった。

チャポンっと音が聞こえたと思ったら、すぐに黒アキラが振り向いてニタリと笑ったように見えた。

黒アキラは、自分の体と同色の剣を抜き放つ。それは粘度の高い、真っ黒い水で構成されているようだった。


「ミーシャ、アキラを頼んだぞ!」

「ロメロくん!」


 黒アキラは、本物の劣化バージョンだった。

いつも本気を見せないアキラが、かろうじて届く位置にいると言っても良いだろう。

それがレイルドと二対一で戦えるのだ。当然、負ける訳にはいかなかった。

ただ、斬られても痛覚を感じないのはきつい。化け物なら弱点くらい準備しておくべきだと、男神を軽く睨んだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 王都の『謁見の間』では、粛々とノルド子爵の片付けが行われていた。それと同時に行われる戦況報告。

ノルド男爵領の領民と分かったのは、喋れる一匹の化け物の存在からだった。

思えば子爵領から男爵領への降格。領民の暮らしは改善されたのか? そもそも善政を敷いていた可能性もあった。


「どうした? ウォルフ」

「はっ! 防衛は大丈夫なのでしょうか?」

「ウォルフ。お前以外が、熱意を持っていないとでも思っているのか?」

「グレファス先輩……」

「体制が元に戻るまで、お前達は俺の護衛だ。そこを抜かれたら、俺は死ぬんだぞ」


 ローランドは再び玉座に座り、肘をついて拳を頬に当てる。

ジト目で見てくる二人の近衛は、『一人でも勝てただろ?』 という目で見てくる。

そして、フッと笑みをもらした。


いくさがもたらすものは、何も悲劇ばかりではないのだな」

「「ローランドさま!」」

「安心しろ、我が国が農業王国だ。これからは復興に力を入れるぞ」

「復興ですか……?」


 不思議そうにしているウォルフに、ローランドは明確に事態の深刻さを理解していた。

これから新しい時代がやってくる。それは闇がより濃くなり、民が苦境にさらされる時代だ。

だからこそ、新しい世代に期待する。それを率いていくのが、俺の使命だとローランドは感じていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 王都の噴水広場前。

メルナールはミーシャの元へ歩き、そっと声を掛けていた。


「どうですか? ミーシャさん」

「メルナールさま。僅かですが心臓も動いていて、まるで深い所で眠っているようです」

「そう、良かったわ。それなら私達は、私達のやることをやるだけね」

「浄化でしょうか?」


 ミーシャの問いかけに、メルナールは首を横に振る。祈りによって、神をめっすることは出来ない。

アキラのレポートによれば、神にはそもそも『善悪の概念・・・・・はないかもしれない』のだから。

あのレポートは、世間に公表されることはないだろう。だけど異なる神の存在をいざ目の前にすると、畏怖が勝ってしまう。


「ミーシャさんは、女神さまに祈るのです」

「……はい。分かりました」


 若い頃のマザーを思わせる意志の強さ。

きっとこの娘は、協会にとって大きな重責を担わせる存在になるはずだ。

恋に生きたマザー。そして恋に破れたミーシャ。

これから先、ミーシャがどんな未来を描くのか? メルナールはそれが楽しみで仕方がなかった。

叶うならば、この目でそれを見たかった……。


 ミーシャの祈りの声が、静かに流れ出す。

メルナールの祈りの言葉が、静かに流れ出す。

ミーシャの声は、次第に歌へと変化していった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ああ、女神さま 何故お姿を見せて頂けないのでしょうか?

私の涙に皆が微笑み 伸ばした手をそっと優しく包み込む

その心に触れながら その心に抱かれながら


 ああ、女神さま 何故お声を聞かせて頂けないのでしょうか?

両の脚で大地を踏みしめ これからの生き方をしっかり見据える

その心に触れながら その心に抱かれながら


 ああ、女神さま 何故お姿を見せて頂けないのでしょうか?

燃えるような恋の末 新たな命を喜んで希望を胸に抱く

その心に触れながら その心に抱かれながら


 ああ、女神さま 何故お声を聞かせて頂けないのでしょうか?

老いたこの魂は去っていく 後に続く若き者へ託すために

その心に触れながら その心に抱かれながら


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 その歌声の効果か、黒アキラの動きは明らかに鈍っていた。

ロメロもレイルドも、段々と体力勝負になっているところがある。

そこに起きたこの好機チャンス。二人はこれがトドメとばかりに、全力で黒アキラを攻略していった。


「平穏を司る男神さま!」


 歌声に被せるように、祈りを捧げたのはメルナールだった。

その声はとても小さく、ミーシャにさえ聞こえないものだったはずだ。

しかし気がついたとしても、ミーシャは祈りの歌を止めなかった。

最後にメルナールの祈りの言葉と共に黒アキラは弾け飛び、不定形の液体となった物はズルズルと噴水に吸い込まれていった。


「ミーシャさん、今です!」


 噴水周辺を囲むドーム内を、ミーシャの浄化の光が優しく包みだす。

その発動と威力はとても弱々しいもので、途中からロメロがミーシャの隣について優しく声を掛け、『増幅』の魔法で協力した。

すると壊れているはずの噴水が、静かに音を立て始めた。徐々に水量が大きくなり、男神像まですっぽりと隠してしまう。

この場所でやれる事はやれたので、急いでアキラを屋敷に運ぶことにした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ここは遠い遠い地、『聖王国』のどこか。

ティーナ一行は、コロナの救出に成功していた。


「みっしょん失敗」

「ごめんなさい。最後に罠に掛かってしまって」

「コロナさんと合流出来ただけでも、成功とも言えるわ」

「ラビ。あのスーって滑る罠、楽しかった!」


 ここは多分、屋敷の隠し部屋だろう。

その空間は思いのほか広かったので、野営と思えばいくらでも生活が出来る。

ただ、景観は正直良くはなかった。ゴツゴツした岩肌に先が見えない通路、そして色白でスレンダーな骸骨。

ティーナや他のメンバーの収納には、数ヶ月は困らない食料が納められていた。


 通路へ向かうには、鉄格子を何とかしないといけない。

これが頑丈すぎたので、ティーナ達は救出部隊を待つ決断をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ