第十五話
「ほら、出ておいで~」
ニナを何とかロッカーから出していると喜多村が頭をかきながらいう。
「こうなったら、しゃあねえ。
サトルら、明日予定とかあんの?」
「いや、ないけど?」
「明日、休みだからさ
俺らの町を案内がてら、遊びに行こうぜ?」
「そりゃいいな、どうせサトルだってギギの事で、手一杯だったんだろう?」
喜多村とサンペイが頷きあって、ギギに予定は無いのかと聞いていた。
「良いのか?」
当然、ギギも断る理由がない。むしろ喜んでいるように思えた。
「ねえ、ニナちゃんも行く?」
そんなサチ姉がニナにそう促していると、頷くのを見て喜多村は言った。
「よし決まり、じゃあ、サトルんちに集合だ」
「俺んちで!!」
そして、断る男がここにいた。
「なんだよ、そんな嫌そうに?」
「いや、俺んちは不味い!!」
そして、サチ姉も手の平を返したように。
「そ、そうそう、ちと、それは不味いって」
「ギギはお前んちに同居してんだろう。
そこでのギギがどんな生活してんのか気になるじゃないかよ。
それとも何だ、来たら不味い事でもあんのか?」
「不味い、とんでもなく不味い」
「なんだよ、気になるじゃないか」
「何でって…」
これから自分の言った事は、誰も信じなかったのは当然だろう。
「サトル…すまん…」
「いるって、言ったじゃん…」
「でも、信じられるか?」
「信じなかったのは、しょうがないよ…」
現状を知っている、サチ姉がげんなりとしており、友達二人が、奇異な目で自分を見ているのを少なくとも感じた。
「これはサトル君の友達ですか?」
無理もない、誰が自分ちの居間に『ハイ』とアメリカチックに答える、ナバト大統領がいると思えるだろうか。
「大統領、テレビに出て無い時は、ここに来るの止めてくれよ?」
「まあまあ、皆さんどこかに行くみたいですね?」
「町を案内してやるって、今日はギギと遊びに出ようって話になってんだよ」
人間、慣れというのは恐ろしいモノである、この数日間で大統領に、通訳越しであるが、ため口で対応出来ていた。
「で、あ、あのギギはどこなんだよ、サトル?」
だが喜多村達にとっては、この異空間は耐え難いモノだったらしく、自分にそう言って来た。
「ああ、外だよ」
視線の先は庭、そこにギギがいた。
しかし、喜多村にも、いつもと様子がおかしいのが見て取れたらしい。
「何やってんだ、あのヘルメット?」
「ああ、あの下にマンホールがあってさ。
あそこが地底と繋がっているのは前に、話したかな?
だけど、地下一階がギギの部屋にもなってるんだ」
「あれが地底の…」
「ギギ部屋か…」
男二人が各々の想像を張り巡らせるが、やはり気がついた事を喜多村が言った。
「でもよ、大変だよな。
せっかく地上に来ても、あれから出る事は、駄目なんだろ?」
同い年であんなに狭い空間に閉じ込められたらと思えば、ここにいる誰もが良い顔が出来なかった。
「まあ、サチ姉にも言ったけどさ、あの状態の時、天井が開いてるんだ。
でも、覗くとか、やめてやろうと思うんだ」
「そりゃ、当然だ」
サンペイもその意見には賛成した。
その光景を、ナバトはどう見ていたのだろうか、ふと目があった。
だが、ワザとらしく視線がそれてしまう。
するとギギの方から、タイミング良く音がした。
ウィィィン…。
地下から何かが競りあがってくる音が聞こえる。
ガシャン!!
ギギ、曰く、それは運転スペースとヘルメットが合体した音だと、そして、出力が上がり…。
上の天井の窓が閉まり、目が輝き、字幕が流れた。
「おっ、やっぱり来てたんだな」
このヘルメットの電源の入り方を見れば、日本人のほとんどはこう思うだろう。
「キンチョール!!」
喜多村が堪え切れない一言に、思わず噴出した。
自分はナバトが笑っているのを見て、少し目を細めていた。
「あらあら、騒がしいですわね?」
垣根からアリアが覗き込んでいた。
「……」
その脇には二ナの姿もあった。




