第十六話
さすがに海外の大組織、オンブレヌーボといえど…。
大統領が自分ちのリビングでくつろいでいるのは驚いていた。
あの後、サチ姉がやって来て、自分達は大統領に見送られ、さっさと外出をしたのは言うまでも無かった。
「なあ、ナオト、お前の息子のサトルは人付き合いが悪いと思いませんか?」
「は、はあ、よく言っておきます…」
通訳を通して大統領独特の威圧感、その矛先が、自分の父に向かっていた。
「最近、父が、小さく見えるんだ…」
「突然、何をおっしゃるの。
まあ、いや、わからないでもありませんが…」
「ところでよ、どうしてアリアまで来ているんだよ?」
喜多村がそんな事を言ってくる。
彼にとってアリアは少し苦手らしい。
「あなた方がギギ様をどこに連れて行くのか、興味がございますのよ。
私もこの町の事を知りたい事もあって、参加させてもらおうと思いましたの」
彼女にとっては普段着なのだろう。
女性の服だが、上質な生地で作られているのが自分でもわかる。
「サトル、そんなにじっと見てどうしましたの?」
髪を後ろでまとめ、頭身を隠す事無い、学校で見る事の無い服装に不覚にも見とれてしまうほどだった。
「別にあなた方に興味は、ございませんわ。
貴方達が、ギギ様を満足させられるか、楽しみですわ」
これがなければだが…。
ちょうどニナは、ギギに挨拶してるのだろうか相変わらず黙っていたが、ギギは触手を使って頭を撫でている。
「それにニナを、休日に連れ出してくれたのは礼を言いますわ」
「礼を言うなら、喜多村に言えよ。
俺は何もしてない」
「そうね、でも、最初に連れて行ったのは貴方でしょう。
普通なら生まれだけでも、毛嫌いする人も多いですのに」
「俺はただお前の兄さんから逃げるのに精一杯だったからな」
「中々出来ない事ですのよ?」
「そうかな、良くわからないけどさ、ところでアリア、兄さんは?」
「察しなさい、貴方達に着いて行くのが嫌なのよ」
はっきりと嫌と言われたので、よほど嫌われているのだろう。
そして、喜多村の一言で、
「それじゃ、行くか…」
この町内の案内をする事になったのだが。
「しかし、サトルよ…。
俺、気付いた事、言って良いか?」
そして、サンペイが気付いた。
「何も言わない方がいいと思うよ」
「…お前、気付いていたな?」
「まあ、な…」
この違和感は商店街を歩く事で、浮き上がって来たのだろう。
だが、サンペイがすまなさそうにしただけだった。
無理も無い。
アリアは先ほど言ったように華やかな服装、その妹のニナはゴスロリ、ギギはヘルメット、そして、サチ姉は相変わらず明るく、ギギの上に乗っているのだから。
この仮装行列は注目の的だった…。
「何か、こんな町を探索する番組を見た事あるな」
「サトル、ギギ様を案内させるのではなくて?」
そんな中、先頭を切っているのはさすがというか、アリアがそんな事を言って来るので、サンペイと目を合わせながら、キョロキョロしているギギのエスコートが始まったのである。
「んで、惣菜屋 松、ここのかき揚げは安くて美味いのが評判なんだ」
そして、町をぶらり探索していると、ギギはこの店にヘルメットを光らせていた。
「松…」
「どうしたんだよ?」
「いや、サトルの家で食べていると、時折、この名称が映るからな」
「映る?」
「食べる前の話だが、一応、解析が入るようになっててな」
「まるでレジで『ピッ』てやってる感じだね?」
見下ろすサチ姉に、ギギは言った。
「例えば、今、サチ姉が最も近距離で映ってるワケだが、その服装の値段とか、今、軽く表示されてるんだ。
3500円の…」
「やめい、女の服の値段調べんな!!」
乗っかってる、サチ姉が踵をギギの目に直撃させる。
だが効くわけもない。
「アリアのと比べモノにならないな」
「ホント、やめて、へこむから…」
「サチ姉、このヘルメットには良く言っておく」
とりあえずギギを音を立てて叩いて、男三人は、この店の前に立った。
「まあ、美味いから、ウチの母さんとか買ってくる事もあるけどさ。
フライドポテトとかの軽食とかも出来るから、良く俺たちが買い食いをしている場所でもあるんだ」
喜多村が、そう評価して、店を覗き込んでいたが、正直、不安であった。
「かき揚げって、何?」
「まあ、出てみればわかるって」
アリアとのやり取りの中、正直、この三連星が作り出している異空間に、ここの店長は出て来ないのではと思っていたからだ。
「へい、いらっしゃい」
だが意外にも笑顔で、対応していた。
「かき揚げと、ポテトがほしいんだけど、量が少ないのどっち?」
自分の問いかけに、疑問に思ったのかギギは聞いて来た。
「サトル、どうして、そんな事を聞くんだ?」
「やっぱり出来立てが美味いからね。
財布との相談もあるけど、店の迷惑に掛からないように聞かないとね」
そういうと、店主はこういう。
「じゃあ、今日は両方無いから、財布と相談するんだな」
「そうなんだ、じゃあ、全員でいい?」
一応、サンペイと喜多村、サチ姉に目を向けると頷いたので。
「おまたせ、ポテトの残りも追加しておいたから、それはサンペイ達の分だ」
そういって、安い包装紙に巻かれたかき揚げを、
「うまい…」
包装紙ごと頬張ったギギの字幕を見ていると、アリア達も同じ意見なのだろう、ここで気になった事が出来ていた。
「ところでさ、意外と騒ぎにはなってないんだな?」
注目を集めているとはいえ、人だかりは出来てなかったのだ。
「あれ、知らないの?
ギギが来た頃かな、町内で回覧板が回ってたんだ。
でも、結構な騒ぎになってたんだよ?」
サチ姉がそう答えて、自分も気付いた。
「そういえば、その頃、総理大臣と大統領の対応に追われていた」
「サトル、話だけ聞くと、身内が話す話じゃないよ…」




