嘘つき…
私は人目もはばからず、目を見張る。
理由は、なんとなく察した。
この一ヶ月の間に―――彼に、彼女が出来たのだ。
見てれば分かる。彼のこの落ち着きよう……、あからさまに女慣れしてるんだから……!
「新宮君。なんかしばらく見ないうちに……ずいぶん頼もしくなったね?」
皮肉っぽくそんな言葉をかけると、彼はにこりとして笑みを返す。
「ああ、みんなにもさっき言われた。
それで今日はずっとからかわれてるよ。
少し日焼けしたぐらいで大げさだよね」
あははは、とさわやかに笑みを零す彼。
そんな彼の言動に逐一胸をえぐられながら、私は自分の気持ちを押し込め、冷静に話を続ける。
「そうだね。肌がちょっと黒く焼けて、前より男らしいよ」
自分でも驚くほどに冷めたような空返事だった。
それだけショックがデカかったのだろう。
だというのに、この男はそんな私の気も知らず―――
「そうかなぁ?
前から女の子みたいだって言われてきたから、これで少しはカッコよくなれたかなぁ?」などと、
のんきに自分のことを喜んで喋っている。
ふざけんなってのっ!なに勝手に休みの間に大人の階段上ってるのよ!?
誰よっ!こんな愛想なしの心を射止めた泥棒猫は!?
私はふつふつと湧き上がる怒りを隠しながら、ほほほほと乾いた笑いでお茶を濁す。
こんなことで私の恋は終わりを告げるというの……?
あまりに酷過ぎる。
この男は私の気持ちを知ってるくせに、どうしてそんな風に無神経に笑っていられるのだろうか。
淡白にも程がある。
私は新学期早々すっかり意気消沈し、挨拶も程々に早々に席へと引き上げ、げんなりとした面持ちで机に顔を伏せた。
どうかこれが、夢でありますようにと祈るように。
――――けど、現実はいつも残酷で。
夢と思いたいことほど、唐突に現実の光景として現れてしまう。
「………あ…………」
思わず情けない言葉を漏らし、窓から校門の様子を見下ろす。
後ろ姿からでも分かる彼と、その隣にいる見慣れない女。
金髪でいかにも大人の女性って感じの、ふざけたボディラインをしているキャリアウーマン。
一目見て逢引きしてるのは理解できた。
「新宮君も酷いよねぇ……。ミサの気持ち知ってるくせに、他の女の人学校に連れて来るなんてさ」
「でもすっごい美人さんだよねぇ……。あんな見事な金髪見たこと無いよ」
ガヤガヤと私の周りの娘たちが囁き合うのを無視し、私はジッと外の彼らを見下ろす。
「……………………………」
不思議なもので、さっきまであった怒りはだんだんと薄れていった。
「まあ、あんな外人さんと比べられたら仕方ないよ。今回は運がなかったということで」
周りは好き勝手何か言ってるが、無論聞いてはいない。てかそんなこと寧ろどうだっていい。
私は校門の外にいる彼女をジックリと伺うように見下ろす。
視線や手振りから彼女の奥底を見透かすように。
「……………………………」
女はいたって普通で、そんな周りの野次馬の視線も意に解さず、彼を引き連れて歩き去っていった。
「……………うそつき」
ふと愚痴が零れる。
それもそのはずだ。私は彼に完全に騙されていたのだから。
「どこが普通よ……。
やっぱりあんた特別じゃない………」
それは何に対して放たれた言葉なのか。
私は無感情に窓縁から離れ、教室を出る。
心はさっきまでとは違う意味で怒っていた。




