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Youなるもの  作者: あなた
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2/18

気になる彼は普通の人

彼は今日も、どこか気恥ずかしそうに窓の外を眺めては、控えめにはに噛んで私に笑いかける。

時刻はちょうど夕方頃。人のいない部室で、私たち2人は机を挟みながら向い合うように座っている。

この状況を軽く説明すると、休み時間の間に私が友人へ頼み込み、彼と私がこの部室で二人きりになるよう仕向けた結果だ。

こうでもしなければ、彼はさっさと家に帰ってしまうため、無理言って強引に頼み込んでしまった。

かなり無茶なお願いだったけれど、変に思われたりしてないだろうか?

……いや、考えても仕方がない。

今は少しでも彼のことを知るため、積極的に話をしよう。


私は一つ深呼吸すると、意を決して彼の顔を見た。

彼はそんな私の内情を知ってか知らずか、いつものように気恥ずかしそうに頬をかく。


「……静かでいいでしょう?

部室として使ってる空き部屋なんですけど、今の時期は試験で人が少ないから気楽に過ごせるんです。

今日も昼休みとかで仲間たちと使ってました」


「うん。そうだね。ここは外界の音が小さくて落ち着ける。

でもいいの?貸し切りにしちゃって。

休みとはいえ、僕がここに来て部員のみんなからクレーム来ない?」


「別に問題ないですよ。元々そんなに真剣に活動しているところではないですから。

部外者が入っても、特に咎められたりはしません。

今日だって、よその部活の子とかが昼休みに利用していたくらいですから」


「そうなんだ。僕は部活に入ってないからよく判らないんだけど、色々あるんだね。

普段はどんな感じで練習してるの?」


「いつもはあの辺りで集まって、それぞれの楽器を持って練習してます。

みんな技術なんか気にせず好きなように演奏してるから、新宮君が思っている程ちゃんとしてませんよ。

聞いたら驚いちゃうかもしれません」


「……へぇ」


「新宮君もどうです?三年だから今から入ることは出来ませんけど、体験入学(仮入部)という形でなら一緒に演奏出来ますよ?」


「いや、いいよっ。そういうの肌に合わないんだ」


「どうしてです?別に休んではいけないとかそんな面倒くさい決まりごとはないですよ?クラブと言っても同好会のようななんちゃってクラブですから」


「……あぁ、違うんだ。僕はあんまり、そういう……団体競技とかって苦手なんだ。

昔からその手の気遣いが苦手で、足を引っ張って迷惑とかかけてきたから……ちょっとね。

気にするなって言われても、気にしてしまう」


「‥‥‥そうですか。ちょっと残念です」


「だけど、功刀さんも大変だね」


「え?何がです?」


「三年で……もうじき夏が来るだろ?

進路とかあるだろうに、こうして部活とも両立させてるんだから」


「ああ、そのことですか。

心配要りませんよ。さっきも言ったようにお気楽な部ですから。

好きな時に来て、休みたい時に自由にさぼったりして、適度に気分を発散させてます。

大変なのは部長の方ですよ。私は新宮君が思ってるほど真面目でもないんです。

でも、よく私が進学するって知ってましたね?」


「んん?いや、確信があったわけじゃないんだ。

功刀さんって真面目で頭も良さそうだし、きっと進学なんだろうなって」


「私ってそういうイメージあります?」


「うん。なんか事務とか得意そうで、頼れる感じ」


言って新宮は「ハハハ」と笑う。


「そういう新宮君は、専門学校ですか?」


「ん……?まあ……ね」


どこか澱みのある返事に私は首をかしげる。


「あれ、違いました?もしかして私と同じで進学組だったり……?」


「正直言うと、まだあんまり決まってなかったりする。

就職っていうとなんか固定されてどうかと思うし、勉強するにしても特に何かを学びたいって思えるものがないんだよね……。

欲を言えば、アルバイトでもしながら将来見つめていきたいなってとこなんだけどさ」


「やりたいことはないんですか?」


「うん……。2年間考えてみたけど、どれも柄じゃないみたいだ。

分かりやすい夢の一つでもあればよかったんだけど、あいにく僕はこんなだから。

どれも中途半端で長く続いたことがない」


そう自嘲的に笑って、彼は肩をすくめる。


「勉強するしかないのかなぁ……やっぱり……」


一年浪人することを覚悟した上での進学。

意思がはっきりしたのはいいけど、将来のことを考えて彼は途端に暗くなる。

きっと思うところがあるのだろう。

私は安易な言葉で励ますことをせず、じっと彼の言葉を待つ。


「まあ、この夏を期にいろいろ考えてみるよ。

やりたいことも見つかるかもしれないし。バイトとかしながらね?」


「そうですね。それもいいと思います」


そうして話を切り上げたことで場に沈黙が訪れ、私たちは互いを意識したように俯いた。


なんか、湿っぽい空気になってしまったな。

当初の思惑とは大分かけ離れてしまったけど、彼の本心を聞けたのでこれはこれでありか。

彼の進路を知っているのはこの学校で私だけだろうし、

これをきっかけにすれば、もっと仲を深めることだってできる。

大きな進歩だろう。

……問題は時間か……。


季節はもうすぐ夏……。

夏になれば長期の連休が重なり彼と会う機会が大きく減ってしまう。

次に話せるのが連休明けの九月になれば、私は地獄のような長い連休を耐えなければならなくなる。


―――やはり、決めるならこの七月中だろう。



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