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第6話 波乱のコラボ配信

 『どうしよう! アオバきゅんとコラボしてるって考えただけでどうにかなっちゃいそう!』


 リオさんはこっちが会話に入るまもなく饒舌に話し続けていた。

 コメント欄に目を向けると、彼女の見守るものもあればザワついたり、中には自分を心配するものなど様々なコメントがひっきりなしに下から上へと流れていった。


 『普段はアオバきゅんのアクリルスタンドを舐め回すように見ているんだけど、今日はそれだけじゃ我慢できないかもしれない!』


 その直後、リオさんはうっとりした表情で上を向いていた。

 ちなみにアクリルスタンドはアオバのデビュー記念グッズとして販売されたものだ。

 マネージャー曰く、そこそこ売れたと話していたが、最近ホビー関連のリサイクルショップにてワンコインで売られていたのを見てしまっている。

 

 「えっと、彼ピのみなさん……リオさんはどうされたんでしょうか?」


 リオさんが恍惚とした表情のまま反応がなくなってしまったので、彼女のリスナーへ話しかけることに。

 

 :もしかしてアオバ、このリオたんを見るのは初めてか?

 :このリオたんはごく稀に出没するからな、知らなくても当然か


 「ど、どういうこと……!?」


 :説明しよう!

 :お、説明ニキ来てくれた!

 :ニキ、アオバが困ってるから助けてやってくれ!

 

 状況が理解できなくて困惑しているとコメント欄が騒がしくなっていた。


 :このリオたんは封じ込められし古の記憶のじゃな

 

 「い、古の記憶……?」


 な、なんかすごい話になりそうだけど、俺が聞いちゃってもいいのだろうか?


 :中学までの彼女はショタが好物のオタク女子だったそうだ、高校デビューすることでその記憶は封印されたのだが、よほどその記憶が強いのかショタに起因するワードを耳にしたり見たりすると一時的に蘇ってしまうのだ


 「ちょ……そんなこと話していいの!?」


 もしかしてこの話はメンバー限定、通称『メン限』で話していることなのでは?


 :安心しろアオバ、説明ニキが話したことは非公式Sitteriaにも載ってるぞ

 :もちろんリオたんも許可してるぜ


 「そ、そうなんだ……」


 まあ、普通の清楚系ではやっていくのは難しいからキャラにインパクトをつけるために、そういう設定をつけたのだろう。

 リオさんの中身である渋谷先輩を見てるとそんな過去があるとは思えないし。


 :清楚系のリオたんもいいけど、このリオたんもワイは好きやで!

 :ちくしょう! 俺もショタならリオたんにprprされたかもしれないのか!

 :俺、昔から童顔って言われるんだけどリオたんにprprされるかな?

 :妄想乙


 少し考え事をしているうちに再びコメントが大量に流れ出していた。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 『はっ! アオバきゅんのアクスタ眺めてただけなのに、気がついたら時間が過ぎてた!』


 暫くの間、リスナーと話しているとリオさんの声が聞こえてきた。

 よほど驚いたのか、見開くように大きく目をあけていた。


 :リオたんおかえりー

 :リオたんアオバが寂しがってたでー

 

 『アオバきゅん、寂しがってったって本当!? お詫びにぎゅーってしてあげるから許してー!』


 そう言ってリオさんは俺の方へと体を寄せていった。

 実際に抱きつかれてるわけではないのに、心臓がドクドクと音を立てていく。


 「やめてくださいリオさん! 彼ピのみなさんに怒られちゃいますから!」

 『大丈夫だよ、彼ピのみんなはそんなことじゃ怒らないから!』


 :そうだぞアオバ、別に怒ってなんかいないぞ ピキピキ

 :我々はリオたんが楽しそうにしている姿を見るのが楽しみだからな ドドド

 :べ、べつに羨ましくなんて思ってないんだからな!

 :安心して月のない夜を歩いてくれ


 「どうみても怒ってるようにしか見えないんだけど!」


 慌てふためく俺を見てコメント欄は『www』のテキストで溢れかえっていた。


 『これ以上アオバきゅんをprprしてると嫌われちゃいそうだからここまでにして、いっぱいきてる質問コーナーにいっちゃおうか!』


 ちなみに配信開始してから30分以上経っていた。

 事前に配信時間は2時間ぐらいだと聞いていたが、終わるのか心配になってきたのはここだけの話だ。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 『それじゃ最初の質問はこれかな?』


 早速始まった質問コーナー。

 自分でもやることはあるコーナーだが、質問内容は事前に確認している。

 中には誹謗中傷だったり卑猥な内容を送るリスナーもいるのでそれを省くためだ。

 ちなみに今回はリオさんが全て選んでくれたらしい。


 『クリハンでディザリオスの鱗を一撃で破壊してましたが、ハンマーの能力を教えて欲しいです』


 おそらくは先日の彼女の配信を見ていたリスナーだろうか。

  

 『アオバきゅんの質問を募集したら結構これ系が多かったんだよね!』

 「大した能力はついてないですよ、鱗破壊率50%が一個と——」


 :ちょ!? 大したことありすぎだろ!

 :結構な時間厳選しただろ!


 俺の発言にコメントが慌ただしく動き出していった。

 厳選というのは武器のスキル付与の選び直しのことだ。選び直すのにも素材が必要になるので相当な時間が必要になる。

 


 「5回ぐらいでいけましたよ」


 :ふぁー!!!!

 :まじかよ! 俺なんか三桁近い厳選やってるけど10%もつかないぞ!

 

 『ちなみにアオバきゅんのメイン武器はハンマーなの?』

 「メインは双剣ですね。 むかしから素早くてスタイリッシュな動きをする武器が好きなんで」


 :わかるー、空中で回転しながら攻撃したりするのってカッコいいよな!

 :ちなみに双剣のスキルはどうなっているんだ?


 「たしか、攻撃速度30%アップとクリティカル率40%と——」


 :いやそっちもすげーよ!?

 :クリティカル率20%も幻って言われてるのに40%だとぉ!?

 :も、もちろん相当な時間厳選に費やしたんだよな?


 「そうですね……たしか2日ぐらい家に籠ったかな」


 :ふ、2日で……

 :もしかしてアオバは神にでも選ばれてるのか!?

 :ひかえめに言って神!


 ずっとコメントが流れ続けているんだけどもしかして俺、変なこと言っちゃったか?


 

 『それじゃ次の質問はアオバきゅんの好きなタイプは? だって!』


 コーナーが始まってからクリハンの質問ばかりだったが、系統が違う質問がやってきた。


 「好みのタイプかぁ……あまり考えたことな——」

 『もちろん、リオおねーちゃんだよね!!』


 俺の話を遮るようにリオさんが大声を上げた。

 そして一瞬にして再度俺の方へと体を寄せていた。


 「ちょ、リオさん! 近すぎですって!」

 『アオバきゅんのタイプはリオおねーちゃんって相場がきまっているんだよ!』

 「いやいやどんな相場ですか! ってか言っている意味がわからないですって!」

 

 :今日のリオたんが楽しそうでなによりやな

 :ショタが困ってる姿だけでご飯3杯はいけそうや

 :アオバが羨ましいなんて、これっぽっちも思ってないからな!

 :さっきからツンデレが湧いてて草


 助けを求めようとコメントに目を向けるが、そこには俺の味方がいない現実を知ってしまう。


 ちなみに配信終了するまでリオさんの暴走が止まることはなかったのだった。

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