第30話 ママを知る
『個人的にはリオの胸はもっと盛りたかったんだよなあ……巨乳JKの水着姿ってたまんないだろ?』
さっきまでは本人なのか疑いたくなるような声で話していた大崎さんだったが……。
突如、いつも通りの彼女の声が聞こえてきたことに驚いてしまう。
:え? どうしたんすかyui-yui先生?!
:流れ変わったな。
:脳内にあのBGMが流れてきたぞ
:ど、どういうことだってばよ!?
驚いたのは自分だけではなくリスナーたちも同様のようだ。
先ほどまで落ち着いていたコメントが大量に下から上に流れ始めていた。
『ふぃ〜! やっぱ私には声色を変えるなんて無理だったな、この方が楽でいいな』
「えー、そうかなぁ……さっきまでの声も可愛くてよかったんだけど」
リオさんは動揺することなく大崎さんに話しかけている。
『っていうか、この配信はリオとアオバの絡みを楽しむものだろ。 それに百合に挟まれた男の結末は知ってるだろ?』
「……その理論だと結末を迎えるのはこっちなんですけど」
ため息混じりの返答に大崎さんは豪快に笑っていた。
:よかったぁyui-yui先生、素の状態でも女性だった。
:何ならこのちょっとしたハスキーな声、好きかもしらん
:なんか大人の女性って感じがする
:トゥンク……
:堕ちてるやつがいて草
『おいおい彼ぴ、リオの前でそんなこと言ったら浮気になるんじゃないか?』
:そうだぞ! 彼ぴはリオたんに忠誠を誓ったものに与えられる称号なんやぞ!
:でも相手がママなら結果的にリオたんに繋がってるわけでもあるし
:なるほど、リオたんとyui-yuiママの2人を同時に推せば浮気にはならないと
:何だそのトンデモ理論はw
:次の祭典ではリオゆいが流行る予感がしてきた!
コメント欄では話の内容がコロコロと変わりつつもずっと流れ続けている。
「夏の祭典かぁ……ツブヤキッターで見てたらリオとアオバきゅんの薄い本が大量に出てたから行きたかったんだよねー」
「リオさんが言ったらすぐにバレそうな気がしますけどね」
ちなみに事務所では夏と冬の祭典などのイベントに行くことは本人バレの危険性があることから禁止されている。
マネージャーに頼めば買ってきてもらえるみたいだけど。
『夏の祭典か、そういや何年も参加してないなぁ』
「そうなの? イラストレーターさんは毎回参加するものだと思ってた!」
『時間があれば参加したいけどな』
大崎さんはため息混じりに答えていた。
:yui-yui先生、売れっ子だから忙しそうだよなあ
:ずっと前にママさんの薄い本購入させていただいたものです! 色々お世話になりました。
:色々(意味深)
「って気がついたらこんな時間!」
コメントを眺めていると、リオさんが大声をあげていた。
彼女の言う通り、配信を開始してから1時間近く経っている。
予定では1時間半で終わる予定だけど、延びるかもしれない。
「ママに聞いてみたいことがあるから、今から質問投げるから答えていってね!」
『質問ってアレか? 男が好きな映像作品で、演者に聞くインタビュー的な』
「……え?」
自分も含め、リスナーも大崎さんが何を言ってるのか理解できずにいたが、しばらく経った後ようやく理解できた。
:いやいや何でそんなこと知っているすかママさんw
:ほ、ほらあんだけ江戸い絵を書くんだから参考にしたのかもしれないだろ(震え声)
:やっべ、今の発言でママさんが好きになったわ
「何かママの言ったことの意味がわからないけど、どう言うこと?」
どうやらこの配信場で大崎さんの言葉の意味を理解できてないのはリオさんだけらしい。
「リオさんは知らなくていいですから! それよりも早く質問投げかけてください!」
無理矢理にでも話を切り替えないと大崎さんのことだから説明しかねなかった。
絶対にディスプレイの奥でニヤついているんだろうなぁ……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それじゃyui-yui先生への質問! まずはお名前を教えてください!」
『yui-yui……あれ? もしかして本名も言った方がいいのか?』
「……大変なことになるから言わないでください」
そういえば彼女の苗字は知っているけど名前は聞いたことがないな。
かと言って改めて聞くことでもないけれど。
「次! 趣味を教えてください!」
『無難なところで絵を描くことだな、あとはベランダで一服、あとは妄想に耽ることか』
:ベランダで一服ってママさん喫煙者?
:もしかして画像がタバコなのもそれが理由?
:それよりも妄想に耽るってどういうことだ!?
:そりゃあイラストレーターだし、イラストのネタを考えるってことだろ(震え声)
「まだまだ行くよー! 好きな食べ物は!」
『焼き鳥とか、豚キムチとか、枝豆とかだな』
:挙げてるのが全部酒のツマミで草
:ママさん酒飲みでもあるのか
:まさかタバコ、酒ときたらやっぱ次は……
:どこのロックンローラーだよw
それからもリオさんは質問を投げかけ、大崎さんがそれに答えていく。
時たま出る際どい返答内容に俺がツッコむこともしばしば。
そんなこともあって質問コーナーを終えた時には更に1時間ほど経過していたのだった。
「うーん、もっとママのことを知りたかったけど、こんな時間になっちゃったよ」
「先生もそうだけど、リオさんも悪ノリで脱線してましたからねえ」
脱線理由はもちろん、ショタ関連の話。
途中でもう1人のリオさんが出てきてしまい、毎度のことだが鎮めるに一苦労した。
「なので、ママにはまた来てもらうので、楽しみにしててね!」
それから俺と大崎さんで軽く挨拶をして、最後にリオさんが締め、2時間を超える配信が終了した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……お、少年。さっきはお疲れ様」
配信終了後のルーティーンを行ってからベランダに出ると、大崎さんの姿が見えた。
毎度お馴染みの下着姿であることは言うまでもない。




