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第27話 家族コラボってことぉ?!

「な、何で大崎さんがここに……!?」

 

 テーブルの上に置かれたペットボトルのお茶を取ろうとして、その奥の存在が気になってゆっくりと目を向けた先にはこの場にいるはずのない人が立っていた。

 

「葵くんどうしたの?」


 思わず出てしまった大声に部屋の端で座っていた渋谷先輩が声を上げていた。

 

 「そりゃあ、ゲー友としてアオバの中身を一目見たくなったんだよ」


 大崎さんはいつものように不適な笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。

 いつも見る時は下着姿が多いが、今日は黒を基調としたオフショルダーのシャツにジーンズのズボン姿。

 ……まあ、それが普通なんだけど。


 「葵さんどうしたんですか?」


 俺が相当驚いた顔をしていたからか、心配そうに声をかけてきた。


 「え、あ……こ、こちらの方は?」


 ドラマでビジネスマンが人を紹介するように指を揃え、手のひらを大崎さんに見えるように向ける。


 「こちらはyui-yuiさんといってアオバさんとリオさんのイラストレーターさんです、今回の水着衣装を担当してくださったんですよ」

 「い、いらすとれーたー……?」

 「はい! Vtuberでの言い方をすればママですね」


 Vtuber界では配信者の見た目、大雑把に言えばキャラクターデザインを担当したイラストレーターのことをママと呼ぶ風習がある。

 理由としてはキャラクターを産み出したからだとか……。

 ちなみに3Dを担当した人はパパと呼んでいる。


 自分というかアオバもだが、リオさんも初配信でママとパパも紹介しているものの、実際に会うのは初めてだ。

 

 「あ、せっかくなのでyui-yu-さん自己紹介して頂いてもいいですか?」


 マネージャーは大崎さんを見る。

 突然のことで、大崎さんは一瞬戸惑っていたが、「わかりました」と告げた。


 「蒼海蒼葉と碧南璃碧のキャラクターデザイン、で、今回の水着デザインを担当いたしましたyui-yuiこと大崎優衣奈おおさきゆいなです」


 大崎さんは真剣な表情で俺や先輩を見ると、自己紹介を始めた。

 会う時は不適に笑っていたり、気だるそうな表情が多かったため、真剣な表情の大崎さんは別人に見えてしまっていた。


 「ありがとうございます、それじゃ葵さんと悠香さんも自己紹介しておきましょうか!」

 

 マネージャーは大崎さんに礼を言った後、こちらにも自己紹介をするように促す。

 

 「えっと……蒼海蒼葉の中身の大塚葵です」


 本名を言おうか悩んだが、大崎さんも本名を言っていたし、さっきからマネージャーが本名で呼んでいるので伝えることにした。

 うちの事務所に関わるイラストレーターや3Dデザイナーにはここであったことを口外しないことを約束する用紙に記入しているからだろう。

 自分も事務所へ所属するときに書いたし。

 

 「そ、それじゃ次は悠香さん……ってどうしたんですか?」


 マネージャーの言葉につられ、先輩を見る。


 「せ、先輩……な、泣いているんですか!?」


 先輩は大量の涙を流しつつ口元を両手で押さえながら大崎さんを見ていた。


 「は、悠香さん、どうしたんですか……!」


 その光景を見てマネージャーも慌てていた。


 「わ、わたし……!」


 先輩は声をあげると同時に大崎さんの方へ近づいていく。

 そして、両手で大崎さんの手をガッチリと掴んでいた。


 「ずっとファンでした!!」


 大声でそう叫ぶ先輩を俺とマネージャーは驚きで何もできなかった。

 言われた本人はどうしたらいいのかわからない……といった顔で俺をみていた。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「画集とかも持ってました! イラストを担当したラノベは全て買いました!」


 あれから先輩のトークは止まることなく大崎さんが関わったであろうイラストやマンガなどについて話し続けていた。

 当の本人は恥ずかしさから若干、照れくさそうな表情を浮かべながら先輩の話を聞き続けている。


 「先輩、大崎さんが困ってますよ……」


 照れから困惑へと変わっていく大崎さんを見て、先輩に声をかけると、「はっ」と声を上げながら俺を見ていた。


 「yui-yui先生の愛が重すぎて……」


 そう言って先輩は大崎さんの前で頭を下げていた。


 「そ、そうなんですか?」

 「うん! 女の子を描かせたらすごく可愛いんだよ! それにすごいのがきょぬーの下着姿のイラストって普通はえちちだと思うんだけどそれが綺麗を通り過ぎて美麗になるんだよ!」


 先輩は打ち出されるマシンガンの弾のように次から次へと大崎さんのイラストについて語り出していく。

 ゲームでもイラストは重要視されているが、自分はそこまでこだわっていなかったので、先輩の話は新鮮なことに聞こえてくる。

 だが、オタク特有の早口言葉すぎて全てを理解するのは無理だったけど。


 「一番びっくりしたのは先生が女性だったってことかな、イラストの感じから男性だと思ってたし」

 「あー……それはよく言われるな、胸のでかい女ばかり描いてたから」


 大崎さんが話していた。

 ラノベの挿絵を描くにあたり、出版社に行った時は大概、編集の人に驚かれるようだ。


 「でも、女の子以外にもショタキャラも描くじゃないですか! 先生のショタキャラも好きですよ!」

 「さすが悠香さん! 私、yui-yui先生の絵を見てアオバさんのイラストレーターに推しましたし!」


 ずっと話を聞いていたマネージャーが先輩の話に賛同し、いつぞやの女子会トークが始まっていた。


 「そうだ! 今度のコラボ相手なんだけどyui-yui先生どうかな?」


 大崎さんは突然名前を呼ばれて目を大きく開けていた。


 「もちろん、アオバきゅんも一緒に! 先生がアオバきゅんのママなら私はおねーちゃんだし! いっそのこと家族ラジオとしてやるのはどうかな!」

「それ面白そうですね! 私からも馬場さんに掛け合ってみますね!」


 俺と大崎さんが置いてけぼりのまま、次のコラボの話が飛び交っていく。


 ——数日後、このコラボにGOサインがだされたことは言うまでもない。

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