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第19話 夏の定番……?

「アオバきゅんの水着姿……!?」


 ディスプレイには上半身は水色と白を基調としたパーカーで、インナーは身につけておらず、下はハーフパンツを穿いている。

 背景に海が描かれているので、おそらくは海パンだろう。

 ……にもかかわらず、記念配信で作ったレトロゲーム向けコントローラーを持って正面を食い入るように見ている。

 十中八九ゲームをしているのだと思うが、いくら何でも海に来てまでゲームはしないかな……。


 ——そもそも海に行きたいって思うことがないけど。


 「ぐっ、落ち着け私! アオバきゅんをprprするのは家に帰ってから……!」

 

 アオバのイラストを見た瞬間、渋谷先輩が自身の右手を押さえつけながらブツブツと独り言を話していた。

 

 「はい! 夏といったら海! 海といったら水着ということでアオバさんの新衣装第1号は水着衣装になりました!」


 先輩に呼応するかのようにやや興奮気味に話すマネージャー。


 「……理解はしたんですけど、それなら女性の方がいいんじゃないですか?」


 Vtuberの配信をみているリスナーの大半は男性であると聞く。

 現に自分の配信を見に来てくれるリスナーの大半は男性だ。

 さっきマネージャーが話していた理屈をそのまま当てはめるなら女性vtuberの水着衣装を作った方がいいんじゃないかと思う。


 「ふっふっふ、それは違うんだよ葵クン」


 そんなことを考えていると隣に座る渋谷先輩が声をあげる。

 

 「私たちの配信を見にくるのは男性が多いのは確かだし、その人たちを喜ばせる女性の水着! しかも際どければ際どいほど喜ばれる!」


 腕を組みながら淡々と話す先輩とずっとうんうんと頷いているマネージャー。

 何、この状況。


 「でもその中には女性リスナーだっていることを忘れちゃあいけないよ葵クン!」


 何か推理物作品で犯人を特定するかのようにこちらに向けて人差し指を向けていた。

 そう言えばこの前、マーダーミステリーを配信でやっていたからその影響かもしれない。


 「女性を喜ばすにはイケメンで、ギリギリまで肌を露出させた方が喜ばれると思いがちだけど、実際は違うんだよねえ」


 先輩の言葉にずっと頷いているマネージャー。

 

 「実際は守ってあげたくなる可愛い男の子、俗に言う『ショタ』が喜ぶんだよね! 幼さを起こした顔、世間の厳しさを味わっていない純真無垢を表現するかのような白い肌! そんな子が海で元気に遊んでいる姿を想像するだけでいろんなところから欲望が溢れ出てきちゃう!」


 そう言って両手で自身の鼻を押さえる渋谷先輩。

 もしかして欲望って鼻血のことなんだろうか……。


 ——それにしてもこの感じもう一人のリオさんっぽく感じたけど、あれって配信中のみの設定なのでは?


 「さすがです悠香さん! ショタ好きの心を掴みまくってますね!」


 目を輝かせながら拍手までし始めたマネージャー。


 「……まさかとは思いますけど、マネージャーって——」

 「あれ、言ってなかったですか? ショタの男の子が大好きなんです! アオバさんがデビューを決まった時、マネージャーを立候補したんですよ!」

 「いえ、初めて聞いたんだけど……?」

 「たしかめぐちゃんがショタに目覚めたのってプニキュアの主人公の弟くんだっけ」

 「そうです! 覚えててくれてたんですか!」

 「もちろん!」

 

 突如始まった女子トークに俺が入る隙などまったくなかった。

 そもそも混ざろうなんて微塵にも思わないけど。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「悠香さんにも来ていただいているので、もちろんリオさんの新衣装もご用意しています!」


 しばらくの女子トークの後、話題が当初の会議の内容に戻っていった。

 マネージャーがマウスとクリックすると、ディスプレイにはリオさんのイラストが映し出された。

 さきほどのアオバと同じような青空と海の背景に緑を白を基調とした水着姿のリオさんが描かれていた。


 「可愛い! って随分と盛ってない?」


 喜んだ束の間、先輩はイラストの胸元を指さしていた。

 言われてみれば、いつも見る姿よりすこし大きく見えてような気がする。


 「イラストレーターさん曰く、せっかく水着姿なんだから少しぐらい盛った方が男は喜ぶって話してました」

 「たしかにそうなんだけど、リオは可愛らしいのが売りなのにセクシー路線にいくのはなんていうか違和感があるんだよね」

 「もちろんそこは伝えつつ、最終的には一夏の経験ってことで話がまとまった感じです。 今後は元のサイズにするようにはお願いしていますので」

 「……高校の時、水着に彼氏を喜ばせるのにパッド仕込んだってのは聞いたことあるけど、そんな感じなのかな」


 先輩は自身の顎に人差し指をあてて、イラストをじっくりと見ていた。


 「葵くんもやっぱ大きい方がいいの?」

 「え……!?」


 すぐに俺の方を向いてとんでもないことを問いかける先輩。

 何でそんなことを聞くんだよ!


 「こ、このぐらいなら、リオさんにはに、似合ってるとはおもいますよ!」


 背中に大量の汗が流れているのを感じつつ何とか返す。

 このぐらいの大きさならリオさんの魅力は損なわれないはず。


 「そっかぁ……葵くんがそういうなら大丈夫かな〜」


 俺の返答に先輩はなぜか上機嫌になっていた。


 「めぐちゃん、この水着衣装っていつ公開されるの?」

 「今、モデルを作っていまして、出来上がるのが来月頭になりそうです」


 そう伝えつつマネージャーはマウスをクリックしていくとディスプレイに写る画像が切り替わった。

 そこに映し出されていたのは……


 「アオバ&リオ 水着3D、お披露目配信……」


 その画像を見て、俺と先輩は互いに顔を向き合わせることに。


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