第15話 アオバの記念配信・完結編
「そこはジャンプボタンを連打するとショートカットができるぞ!」
「は、はい!」
エング先輩が入ってからすぐにストランカーのプレイ再開されてからそれなりの時間が経っていた。
配信が開始されてから2時間は超えているが、見ているリスナーの数が減る様子はなかった。
:そういやそんなショートカット方法あったな
:ほえー、ストランカーリアル世代だけど知らなかったわ
:TAS動画だと必須だよな、このショートカット
「よし! ここでもショートカットするぞ、そこでダイナマイトを使って壁を破壊!」
「了解です!」
エング先輩の指示を受けるだけのラジコンのように着々と言われたことをこなしていく。
これでいいのかと思うこともあるが、コメントを見る限り、リスナーも楽しんでいるようだった。
:そ、そんなところ壁破壊できたのか
:にしてもなんでエングはそんなこと知っているんだ?
:そりゃあレトロゲームをやりこんでいるエング兄貴だからだろう
:さすがエング! 俺たちにできないことを平然とやってのける!
:痺れる!憧れるぅぅ!
おそらくはエング先輩のリスナーだろうか。
先輩には及ばずともいろんな意味で熱いリスナーがやってきたような気も……。
「いいぞいいぞ! もうすぐゴールが見えてくるが油断大敵だぞ!」
先輩の言葉にゴクリと音を立てて息を呑む。
先輩のおかげもあってか今のところ残機が減るどころか、点数によるエクステンドで増えている。
できることならこのまま進めたいところだけど……。
「あれ……何で!?」
慎重に操作していると突然ミス扱いになった。
あまりにも唐突すぎて思わず声を上げてしまう。
「ここは連続間欠泉エリアだ、プレイするたびに出たり出なかったりするんだ」
操作キャラの目の前には小さな山が連続で設置され、プシューと音を立てながらドットで描かれたガスが出ていた。
:あったなそんな仕様、たしか開発がバグだって最近になって呟きったーで言ってたな。
:道理でプレイする度に難易度が違うなと思ったけど、そういうことだったのか
:この状態の時に抜ける方法あるのか? この状態だと毎回ここでゲームオーバーになってたけど
一定の間隔でガスがでているので、出ない時を見計らって進めばいいのだが、距離がありすぎて途中でガスに接触してミスになってしまう。
しかもやり直しはこの間欠泉の入り口からという鬼畜とも言えるものだった。
「先輩、これどうすればいいんですか?」
「こんな時は……テケテケン! 連続だいなまいとぉ〜!」
エング先輩は突如、どこかで聞いたようなネズミ嫌いのキャラのような声を出し始めた。
:wwww
:でた、エングの全く似せる気のないモノマネ
:いい加減、中の人に謝れwwww
リスナーも言っているが、微塵と言っていいほど似てなかった。
「うるさいぞ! こういうのは演じようという努力が必要なんだぞ!」
:努力の方向性が違う気がするけどな
:ホントだ!
「いいかアオバ、少し後ろに下がってダイナマイトを連続でセットするんだ!」
「れ、連続で!?」
ダイナマイトはひび割れしている壁や敵を倒すことのできる強力なアイテムだが、距離を置かないとミス扱いになってしまう。
「そうだ、1個目が爆発する直前からひたすら前に進むんだ!」
声の圧と勢いに負け、言われた通りにしていく。
そして最初に設置したダイナマイトが爆発するタイミングに合わせて力強く十字キーを押していく。
バーンという音と共に画面が真っ白に点滅していく。
「あ、あれ?」
進んでいく合間に間欠泉からガスが吹き出していくが、当たってもミスになることはなかった。
その間に2個目のダイナマイトが爆発し、再度画面が点滅していく。
そして無事に連続間欠泉エリアを突破することができた。
「先輩、どうなっているんですか?」
「細かくは知らないけど、一説によると、この連続間欠泉の処理ってプログラムの処理が重いらしい、更にいうとダイナマイトの処理も重いみたいだ」
「え、えーっと……」
説明してくれたが、まったく理解できなかった。
:つまりは負荷をかけて処理を重くしてミスの処理をなかったことにするってことか?
:まあファリアコンの容量だってエロ画像の容量以下だから、起こる現象ってことだな。
コメントを見て、何となく理解できた。
「……先輩、これってバグ技ってやつですよね?」
俺の指摘に先輩は間髪をいれずに「そうだぞ」と答えていた。
「この連続間欠泉は開発陣が認めてるバグだからな、正攻法でいけないからこっちもバグで対抗するしかないだろ!」
先輩は自信誇らしげに最後にガハハと笑っていた。
「ここを抜けたらあとは突き進むのみだ! 後ろなど振り返らずに前だけをみろアオバ!」
「は、はい!」
毎度のごとく先輩の声の圧に負けて操作キャラを進めていく。
しばらく前に進んでいくと、ゴール地点へと到着した!
「おぉ! やりきったなアオバ!」
「先輩、俺嬉しいです!」
ゴールに着いた途端、操作キャラが万歳のポーズをしていたが俺も嬉しさのあまりコントローラーを置いて同じようなポーズをしていた。
:やったなアオバ!!
:エングの指導すげーな!
:俺、ゴールするところ見たの初めてかもしらん
:長く苦しい戦いだった……
コメントも俺のゴールを祝福するかのように称賛する内容が大量に流れていた。
嬉しさのあまり、目頭が熱くなっていた。
「よーっし! ゴールできたならオレの出番は終わりだ! さらばだアオバ!」
「え!? せっかくですし、もう少しいても——」
「ここの主役はアオバだからな、部外者は用事が済んだら消えるのみ! 立つ鳥跡を濁さずだ!」
そう告げると先輩は「とぉ!」と声に出すとそのまま去っていった。
「何だか嵐のような方だな……」
:まあエングだしな
:それより完走した感想を聞かせてくれ!
:この場にダジャレ警察はいませんか!?
:完走の感想って……ぶふぉ
:受けてる奴がいて草
クリアの余韻にまだ浸っていたかったので、画面を出しつつ、リスナーたちに促されるまま感想を述べていく。
「最初はどうなるかと思ったけど、みんなやエング先輩のおかげでクリアできたぜ! 長時間付き合ってくれたゲー友や先輩のリスナーさんありがとう!!」
コメントの拍手が大量に流れる中、配信を終了していった。
ちなみに感想も思うことがたくさんありすぎて1時間近く話していたこともあり、最終的に配信時間は4時間を超えていたことを後々気づいた。
——こうして初の記念配信は成功という形で幕を閉じたのだった。




