第14話 続・アオバの記念配信
「うそだああああ、今のはミスにならないだろぉぉぉぉ!」
ディスプレイには何度も見た無慈悲なゲームオーバーの画面が表示されていた。
:アオバの叫びで今日もメシがうまい
:アオバ、またもや撃沈!
:あきらめたらそこで試合終了ですよ
「まだまだ終われない! 俺はまだ舞える!」
リスナーのコメントに応えるように力強くコントローラーのスタートボタンを力強く押していく。
記念配信が開始してから1時間弱。
最初は簡単にクリアできるだろうと簡単に考えていたが、流石はゲーム初期の作品、難易度が半端なかった。
事前にノーミスでクリアをしている動画を見て予習はしていたが、実際にプレイしてみると自分が思うように操作できずにいた。
「うそぉ……今の喰らった判定になるのかよ!」
避けたつもりだったが、攻撃をうけた判定になり、大事な1機を失ってしまう。
すぐにその場から復活してゴールを目指して先へと進んでいく。
:おっすー! ストランカーやってると聞いてきたぜ!
:ストランカーやってると聞いて!
:ストランカー懐かしいな! ガキの頃は何周もできたけど、今は1周もできないだろうなあ
:わかる、下手したら途中でコントローラー投げてるかもしれないなw
「さすがにコントローラー投げるのはどうかと思うけどなあ」
プレイしながらも流れてくるコメントを拾っては答えていく。
ゲームをしているとはいえ、せっかくきてくれたリスナーのことを無視することはできない。
たとえ、そのせいで残機をなったとして……
「あぁぁぁぁ! コメント見てたらミスったぁぁぁ!」
:wwww
:コーラ吹きかけたじゃねーか!w
:俺らのせいにしてて草
ちなみにその直後、ジャンプのタイミングを間違ってすぐに残機を失い、またもや無慈悲で無機質なゲームオーバー画面が表示された。
「……教えてくれ、ゲー友、俺はあと何回、このゲームオーバー画面を見ればいい」
:どこかで聞いたことのあるセリフでてきたぞw
:さすがのゼェロォシステムも教えてはくれないだろうな
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ありのまま起こったことを話すぜ、ジャンプボタンを押したのに押されていなかった、俺も何を言ってるのか……」
:敵の特殊攻撃かもしれないな
:いや、やつらの仕業だ
:アオバは狙われている
「誰か助けてくれよ!」
あれからどれくらい経ったのだろうか……
進んだかと思えば、ゲームオーバーになって最初に戻され、それでも頑張ってはいるが終わりが見えない状況に苦しみを感じるようになっていた。
:そういやさこのゲーム、裏技で無敵コマンドなかった?
絶望の淵を彷徨っていたからなのか、突如流れてきたそのコメントが輝いて見えた。
「なん……だと……」
思わず声が出てしまう。
:そういやあったな、タイトル画面で長いコマンドを入力するとできるんだっけか?
:たしかそうだな
:えー……それを使ったら興醒しないか?
気がついたらリスナーたちのコメントがざわついていた。
:まさかとは思うけど、それはやらないよな?
:でもアオバきゅん頑張ったし、楽にしてあげてもいいんじゃないかな?
:何か意味が違ってきてないか?w
流れてくるコメントを気にしながらも、机にある卓上時計へと目を向けると、配信開始からかなりの時間が経っていた。
さすがにだらだらと俺のどうしようもないプレイを見せるのも申し訳なく感じてしまう。
「流石にこんな時間だし、いつ終わるかわからないプレイを見せてもだし」
:お、おいアオバ……まさかとは思うけど!?
:やめなさい、アオバきゅん! ヒトに戻れなくなる!
:だれかアオバをとめろ!
止めようとするコメントが流れてはいるが、俺はブラウザを開き件の裏技を検索していく。
「俺はヒトをやめるぞ、リスナーぁぁぁぁぁ!」
コマンドはすぐに見つかる、そしてタイトル画面で黙々とコマンドを入力し、最後にスタートボタンを勢いよく押してい——
「この馬鹿者がああああああああ!」
突如流れてきたそのコメントに驚いてコントローラーを落としてしまう。
落ちたのが膝の上だったのですぐに拾って画面へ向き直すと、コメントがざわついていた。
:コメントのはずなのに脳内で聞き覚えのある声が流れたんだけど!?
:俺もだ、もしかしてだけど……いるのか?
:レトロゲームあるところに奴は現れるっていうしな。
リスナー達がそう話していると、もう一度似たようなコメントが出てきた。
:(Enk.Go) レトロゲームに裏技など言語道断! そんなやつはこのオレがゆるさん!
文字を見ただけで部屋の温度が上がりそうな熱量のあるテキストだった。
「……まさかエンク先輩がいたなんて思いもしなかったですよ」
そう言いながら俺はこれまでにない大量の汗を流していた。
もしかしたら本当に部屋の温度が上がったのかもしれない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「久々にアオバの配信見にきたら懐かしいソフトやっててびっくりしたぜ」
アオバの横に燃えているのかと思えるほどの真っ赤な髪の男が立っている。
同じ事務所の大先輩である業赤炎紅だ。
見た目通り熱血という字を現したような人でリスナーからも部屋の温度を勝手に上げてくる暑苦しい男Vtuberとして活躍している。
デビューしたての頃にリアルで顔を合わせたことがあるが、中身も暑苦しい人だった。
ちなみにあの後、裏技を使おうとしたことに軽く説教を受けた後、レトロゲームの真骨頂を叩き込んでやるということになり、マネージャーの許可をもらってコラボの形で配信することになった。
「それじゃ再開と行こうぜ! 安心しろ! 俺が来たからには裏技など使わずにクリアさせてみせるぜ!」
エンク先輩の言葉にリスナー達のコメントが一気に流れ始めた。
——記念配信はまだまだ終わらない。




