第13話 アオバの記念配信 序章
「どうですか? アオバさん!」
とある平日の昼下がり、マネージャーに呼ばれて事務所に向かうと、MTGルームに案内された。
そこにあったのはアオバのイラストが描かれたグッズだった。
アクスタやクリアファイル、缶バッチなどVtuberお馴染みのものから少し変わり種として……
「小型のコントローラー?」
目についたのはアオバのカラーである青色を基調とした小さなコントローラーだった。
ゲームをよくする側からすればオリジナルのコントローラーができたのは嬉しい限りだけど……
「……随分とデザインが古くないですか?」
十字キーに4つのボタン、上部にはトリガーボタンが4つ。
ここまでは普通通りだとして、今では標準装備となっているアナログスティックが備えられてなかった。
レトロゲーム機ではそれが当たり前になっているが、この時代にこれはどうなんだろうか?
「それはアオバさんがよくレトロゲーム配信を行うからですね!」
マネージャーは俺の心の中を読んだのかと思えるぐらい、欲しい答えを告げていた。
「すごいんですよ! 無線でも行けますけど有線ができて、色々なレトロゲームに接続できちゃうんですよ!」
専用のケーブルを持ちながら嬉々として語り出すマネージャー。
テーブルには接続用のアタッチメントが置かれていた。
「……たしかにすごいけど」
アタッチメントを手に取りながら呟く。
たしかにすごいとは思うけど、コレジャナイ感も……
「そういえばアオバさん、1万人突破記念の企画は決まりましたか?」
「決まりましたよ、1週間毎日配信を行おうと思っています」
「そうなんですね! ちなみにどんな配信をするんですか? やっぱりアオバさんだからゲーム配信?」
アオバといったらゲーム配信なんだけど、それではいつもと変わらないので、工夫をすることにしていた。
「まずはレトロゲーム配信なんですけど、耐久で難しいと言われてるものをやろうと思ってます」
「レトロゲームあるあるですね! ちなみにどのゲームをやるんですか?」
「『ストランカー』ですね」
ストランカーというのはセイテンドーが開発した、ウイッチの元祖とも言える『ファリアコン』のゲームだ。
冒険家の主人公が謎の遺跡を進んでいくといったストーリーだが、この当時あるあるで操作性が悪かったり、ちょっとした段差でミス扱いにあるといった仕様からか、俗にいう『クソゲー』扱いを受けている不遇のゲームだ。
それでも隠れたファンはいるようで、スーパープレイ動画をアップしているのはたまに見かける。
「それならこのコントローラーでやるのはどうですか? プレイしながら宣伝もできると思いますし!」
マネージャーは目をキラキラと輝かせながらコントローラーをこちらに見せてきた。
レトロゲームをプレイする時は実機でやっており、それにあったアタッチメントがあるので問題はないが……
「……ぷ、プレイに影響でなきゃいいですけど」
断ろうとおもったが、おもちゃを目の前にした子供のような目をしているマネージャーを見たら言うことはできなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「みんなおっす! 夢は異世界転生先で勇者になること! 蒼海蒼葉です! 今日も一緒に遊ぼうぜ!」
そしてやってきた記念配信初日。
マネージャーに伝えた通り、今日は『ストランカー』のプレイ配信を行う。
:まってたぜアオバ!
:きゃー! アオバきゅん!!
:遅くなったけど1万人突破おめ!
:俺はアオバならできると思ってたぜ!(後方腕組み)
配信開始すると、すぐにコメントが画面内を横切っていく。
事前に記念配信ってことを告知していたおかげか、いつもよりもコメントが多く感じる。
「気がついたら登録者が1万人超えててびっくりしたよ! これもみんなのおかげ! 本当にありがとう!!!」
:うおおおおおおお!
:あれ、配信開始したと思ったけど終わろうとしている?
:今日の配信も楽しかったぜ、ノシ
:えー! もっとアオバきゅんの声がききたいー!
「こら! 勝手に配信を終わらせようとするな!」
コメントに対していつも通りのツッコミを入れると画面内に『www』や『草』といった文字が大量に流れていった。
「それで今日から1週間いろんなことをしていくので、みんなも楽しみにしてくれよな!」
:それは楽しみだぜ!
:今日は何をするんだ?
:ゲームよりもアオバきゅんの声をもっとききたーい!
「と、その前にまずは宣伝からだな!」
そう告げてから用意していたスライドを画面に映す。
:お、1周年記念グッズか!
:アオバのヌイがあるじゃん! リオたんのprprがKSKするんじゃないか?
:買います!
アクスタや缶バッチ、アオバのぬいぐるみなど事務所で見てきた商品を紹介していく。
そして最後に紹介するのはあのコントローラー。
「最後に俺らしく、コントローラー! しかもこれレトロゲームに対応するアタッチメント付!」
そう話しながらスライドをアタッチメントの画像に切り替える。
:おおおおおお! 力入れるところが斜め上すぎて草しか生えない!
:アオバの配信見てレトロゲーやろうとしてたけど、コントローラー壊れてて断念してたからちょうどいいかも!
:アwタwッwチwメwンwトw
画面には賛同するものや笑いのコメントが次々と流れ出していく。
「それで今日はこのコントローラーを使ってゲームをするんだけど、今日やるのはこれだ!」
最後のスライドに切り替えると『ストランカー』のカセット画像が表示された。
:ふぁ!?
:伝説のクソゲーじゃねーか!
:いやいやクソゲーじゃねーよ! やりこめば面白いんだぞこれ!
:教授! ストランカー教授じゃないか!
:これは長く苦しい配信になりそうじゃな
グッズの紹介よりも盛り上がってる気もするな……。
「ってことで、そろそろゲームを開始するぜ! クリアまで付き合ってくれよな!」
配信画面には少し古臭いゲーム画面が表示されていった。
——記念配信はまだ始まったばかり。




