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18番人気の奇跡から始まった、俺と隆平の探偵事務所 ~ざまぁもチートもない、探偵事務所のリアルな日常と裏稼業~  作者: 風風風


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第8話 【 クローンの罠(わな)】

康介は、ペット捜索の依頼を受けながらも、

富裕層の顧客が飼う老犬や老猫の健康状態を

さりげなくカルテに記録し、密かに組織的な

DNAデータの蓄積を進めていた。

ペットが息を引き取ったという情報をキャッ

チすると、足繁く通い、喪失感に打ちひし

がれる飼い主の心に寄り添い続けた。

一方の隆平は、水面下で驚異的な行動力を

発揮していた。

【 法の隙間と、検疫の壁 】


東南アジアの秘密裏の施設で、依頼

されたペットと寸分違わぬクローン

の犬や猫たちが無事に誕生した。

だが、どれほど完璧な個体を作り上

げようとも、それを日本へ持ち帰る

ためには、極めて高くて厳しい

「検疫の壁」を突破しなければならない。

日本は狂犬病の指定地域外であり、

海外からの犬や猫の輸入には、マイ

クロチップの装着、狂犬病の抗体検査、

そして最大で180日間に及ぶ係留検

疫など、幾重もの厳格な法律と手続

きが義務付けられている。

もし、密輸のような真似をすれば、

日本の税関や動物検疫所で一発レッド

カードを食らい、すべてが水泡に帰す

どころか、逮捕者が出る。


事務所に戻った康介は、その現実的な

リスクを隆平につきつけた。

「おい、いくらそっくりなクローンが

用意できたって、日本にどうやって

持ち込むんだよ」

康介は腕を組み、冷や汗を拭いながら

問う。

「動物検疫のルールは厳格だぞ。海外

から生体を生きたまま持ち込むなら、

狂犬病の抗体検査や血清の保存、さら

に事前の届出と長い待機期間が必要だ。

そんなに時間をかけたら、依頼主の

ペットロスの熱も冷ちちまうし、そも

そも不法輸入を疑われる」

隆平は落ち着き払った様子で、手元の

ノートパソコンを叩きながら言った。

「当たり前だろ。正面突破で密輸する

わけがない」

「じゃあ、どうするんだよ」

「合法的な『輸入代行』のスキームを

踏むのさ」

隆平は冷徹な目を光らせ、計画の全貌

を語り始めた。


---


「まず、大前提として、飼い主には

『海外の最先端の遺伝子保存プロジェ

クト、あるいは高度な生殖医療機関で、

亡くなる前に採取した細胞から代理母

出産させた』というストーリーを信じ

させる。もちろん、海外の正式な獣医

発行の診断書や、血統証明に類する書

類も完璧に揃える」

「書類を偽造するのか?」

「偽造じゃない。現地の協力している

本物の獣医師名義で、適正な手続きを

経て生まれた個体としての『正規の

輸入書類』を取得するんだ。東南アジ

アの拠点は、表向きは『国際的なペッ

トの生殖研究施設』として法人登録

してある」

「そんな簡単にいえるのか?」

「金と、現地のルートを使えばな。

問題は、日本の空港の動物検疫所を

どうクリアするかだ」

隆平はペンを回しながら続ける。

「日本の検疫では、マイクロチップの

番号、狂犬病の予防接種履歴、そして

輸出国政府機関の発行する証明書が

絶対条件になる。だから、生まれた

クローンの子犬や子猫には、生後

早期からそれらの法規に適合する

医療処置と、国際規格のマイクロ

チップの埋め込みを完全に施す」

「待てよ、それじゃあ時間がかかる

だろ? 何ヶ月も待たせるのか?」

「そこは工夫が必要だ。生まれた

個体をそのまま急ぎで日本に入れる

のではなく、現地の検育施設において、

日本の輸入条件である『180日以上

の待機期間』や『抗体価の確認』を

逆算して完了させておく」

「つまり、生まれる前から、あるいは

誕生直後から、日本への輸出を前提と

した検疫スケジュールを現地で前倒し

でクリアさせておくってことか……」

「その通り。日本の税関や検疫所が

書類と個体をチェックした時、すべて

の数値とデータが完璧に基準値を

クリアしていれば、検疫官といえども

入国を拒む法律上の理由はない」


法律の隙間を縫い、合法的な手続き

という巨大なヴェールで悪事を包み

込む。それは単なる犯罪ではなく、

制度の網の目を計算し尽くした高度

な裏ビジネスだった。

「どうだ、これなら日本の検疫検査

も正式にパスできる」

隆平が不敵な笑みを浮かべる。

康介は自分の胸の内でざわめく罪悪感

を押し殺し、深く息を吐き出した。

「……分かった。書類の準備と、飼い

主へのアプローチは俺がやる」

法の網の目を潜り抜け、絶望の底に

いる富裕層の心を狂わせる、禁断の

ビジネスが静かに動き出す。


---


と、まぁ、こうなるだろうな。……。

「そこまでして、やるか?」

「顧客次第だな。……」

「特別スキーム、という訳だな?」

「そういうことだ。……」

「かなりの代償を貰わないと、……」

「うむ。……」

「国内に持ち込むかどうかは兎も角、

準備は進めておこう。……」

「かなりの出費になるぞ」

「……、考えておく」


©2026 [風風風]. All rights reserve.

樫野かしの里奈りな。……」

その名を聞いた瞬間、康介の足がピタリ

と止まった。

脳裏の奥底に封じ込めていたはずの

記憶が、にごった水底から浮き上がる

ようによみがえる。


明日も 20:00 に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

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